12話「外から来た人間」
外来人、幻想郷の外の世界からやってくる人間のこと。
幻想郷にはない文明、知識をもっている。
私が前に読んだ本で知ったこと。
イスで眠っていたヤマメは軽く伸びをした。
そうだ、昨日の子は大丈夫かな?
ベッドの方に目を向けると体を起こしたその子と目が合った。
数秒の間が空き、
「ど…どちら様ですか?」
最初に口を開いたのは少女の方だった。
ヤマメは彼女のそばに寄り、小さな声で話しかける。
「私は黒谷ヤマメ、あなたは?」
「入江千尋です」
「ヤマメさん、その、ここは一体何処なんですか?」
「信じられないと思うけど、今から話す事を落ち着いて聞いてね、」
ヤマメは彼女にできるだけ簡潔に、ここが幻想郷という世界だという事を伝えた。
「そんな…私はもう元の世界に戻れないんですか?」
「そんなことは無いと思うんだけど…」
「ヤマメー入るぞー!」
「お邪魔するよー」
二人の会話の間に威勢の良い声が割り込んできた。
「お、もう起きてるじゃないか」
千尋は突然の二人の介入にヤマメにすがりついている。
「ヤマメにすっかりなついているね」
「違うよ、キスメ」
「冗談なのに真に受けちゃって、ヤマメは素直すぎるよ」
「二人は私の友達の小さい方がキスメ、それと勇儀だよ」
「あんた見るからに外の世界から来た人だよね」
「ヤマメ、お前この子…えーと」
「千尋さんだよ」
「千尋をどうするんだい?」
「元の世界に戻してあげたい」
「ヤマメならそう言うと思ったよ」
「博麗神社に連れて行けば何とかしてくれると思うよ、
あそこは外の世界に詳しいからさ」
「ありがと、キスメ」
「まぁ、まずはその傷だらけの体を治してからだけど」
「そうだね、無理に動いたら傷が酷くなるし」
「不便だね、人間って。私達妖怪はケガなんてすぐ治るのに」
「妖怪!?」
千尋は目を見開き体を引いた。
「ヤマメ、言ってなかったの?」
「あまり言いたくなかったんだけど」
「いや、普通言うでしょ」
「私達は皆、妖怪。でも千尋を襲うつもりはないから安心してくれ」
勇儀は朗らかに笑いながら千尋の肩をぽんぽんと叩く。
「は、ひゃい…痛っ!」
「勇儀、まだケガが治ってないから優しく」
「あ、すまん」
「千尋は何でそんな傷だらけで倒れてたの、妖怪にでも襲われた?」
「その、記憶がないんです」
「記憶が無い?私は嘘が嫌いだよ」
勇儀のまゆがピクリと動き、千尋に詰め寄った。
「本当です!」
「何か、怪しいな」
「勇儀、千尋さんは本当の事を言ってるよ」
ヤマメが勇儀の疑いに指摘をする。
「何故そう言い切れる?」
「…何となく」
「はぁ?…ま、いいや。そんなことより宴会しよう」
「唐突だね…何の宴会?」
「千尋が無事だった祝いに!」
勇儀はこれからの楽しみに小躍りをしている。
「それじゃ、私はどっか適当に宴会の予約とってくる」
「いや、ここでやろうよ!」
「勇儀、ケガ人の前で宴会は流石にないでしょ」
「あの…」
千尋の声に3人が振り向き次の言葉を待つ。
「ヤマメさんとキスメさんっておいくつなんですか…?」
「あー…妖怪はね、いくつでも飲めるのよ」




