11話「人間の私」
ヤマメは嗚咽を漏らしながら事情を話した。
「自分が自分じゃなくなって、妹を殺す夢ねぇ…でも、所詮夢だよ?」
「そうだよね…夢、だよね」
「ねぇキスメ、私自分が分からないの」
「どういうことだい?」
「何て言うか、妖怪なのに心は人間で…こんなのおかしいよね?」
「まだ、受け入れ辛いの?妖怪としての自分は」
「うん…情けないよね、ずるずる引きずって」
「ヤマメ、あんたは自分を大切にして、自分らしく生きたらいいの」
「ここは地底、ルールさえ守れば何してもいいからさ」
「キスメ…」
「自分を見失わないで。それと、妖怪である自分を許してあげなよ」
「はいはい、暗い話はそこまで!飲もう飲もう!」
「もがっ!?」
ヤマメは突然勇儀に酒瓶を押し込まれ、勢いで1本丸々飲み干してしまった。
「けほっ、勇儀ぃ!」
「はは、この程度で潰れちゃ困るねぇ」
「大将、裏鬼殺しよろしく」
キスメは二人を傍観しながら注文を始めていた。
数刻後。
「ヤマメ、顔色悪いよ」
「うぷっ…夜風に当たってくる」
よろよろとヤマメは立ち上がり、若干千鳥足で外に出た。
「妖怪なのに酒に弱いとはこれ如何に」
「勇儀は度が過ぎてるのよ」
抑揚のない声で鋭くキスメは突っ込むのであった。
【地底湖】
夏の面影はもう無く、秋の涼しい風が地底の湖に吹き込んでいる。
ヤマメはやっとの思いで湖に辿りついた。
「あれ、誰かいる?」
定まらない焦点を合わせると酔いは一瞬でさめた。
湖のへりにあちこちが裂けたパーカーとスカートで
傷だらけの少女が力無く横たわっている。
ヤマメは急いで彼女を背負い、自分の家のベッドに寝かせた。
「まず傷を治療しないと…」
傷口を刺激しないように丁寧に処置をする。
多少失敗はしているが特に問題はなさそうだ。
「こんなものでいいかな」
少女はすやすやと寝息を立てて手遅れにはならなかったようだ。
そろそろ戻らないと、二人が心配しそうだし。
「大人しくしててね」
ヤマメは彼女を家に残し、居酒屋に戻った。
「おう、ヤマメ、戻ってきたか」
「ねぇ、この後時間ある?」
「「二次会?」」
1人は目を輝かせ、1人は面倒そうにしている。
「いや、違うけど」
「違うのか、まぁいいけどさ」
「私もいいよ、ヤマメの頼みだからね」
ヤマメは二人を家に連れて湖で見つけた
少女の事を話し、助けたことも話した。
「この子、人間だよね」
「もしかしたら、外から来たのかな、って思って」
「とりあえず、今日はもう遅いからさ、また明日くるよ」
「それまではその子の事、お願い」




