アルバム
アルバムを買おう。
そう決めたのはつい最近。
君との別れが身に染みてきた、今日この頃。
別れはずっと前から決まっていたこと。
覚悟は出来ていた。
だから寂しくない。
って言ったら嘘になるかな。
寂しいって言いたくなかった。
いつも通り、いや、それ以上に明るくいたかった。
ずっと…笑ったままで。
離れるってことを、実感したくないんだ。
僕は強い人間じゃないから、きっとすぐ君に弱音を吐いてしまう。
離れるのはつらいって。
行ってほしくないって。
涙をぼろぼろ流しながら、君にすがりつくんだろう。
嫌なんだ、そうなるのが。
すぐ会えるって我慢する。
楽しかった思い出に浸って誤魔化す。
その繰り返し。
そうすれば……笑っていられるから。
会いたいも。
恋しいも。
好きだよも。
愛してるも。
僕は簡単に言わない。
毎日言ってたら特別じゃなくなる。
人間は強欲だから、すぐ他の特別を求めてしまう。
僕の言葉以外を求めないように…特別を守っておきたいんだ。
でも僕は不器用で加減が下手だから、すぐ君を傷つけて、泣かせてしまうんだろう。
寂しい思いもさせてしまう。
その度に思い出話を持ち出しては、寂しさを誤魔化して…。
そんな時、ふと思う。
僕と君の思い出は頭の中にだけ。
これといった写真はない。
形にした思い出は、1つもないんだって。
いくら大切な思い出だからって、ずっと覚えていられる人間はほとんどいない。
ましてや、君は忘れん坊だから尚更。
たまには形にしたっていいんじゃないか。
いくらかしわが増えた顔で、こんなこともあったねって笑えるように。
いつか増えるであろう家族に、こんなこともあったんだよって言えるように。
腰の曲がった君に、また行こうねって約束できるように。
写真を撮ろう。
写真を撮るのは大嫌い。
でも、君と撮る写真は別。
君が隣にいるから、写真も好きになれる。
僕と君がいた日々を。
君が僕を、僕が君を想っている証を。
1つ1つ、残していこう。
身近に、お互いを感じられる為に。
まだ空白のアルバム。
最初の写真は、あの場所で。
それまで少しの我慢。
泣かないで。
すぐ会えるから。
ずっと、傍にいるから。
会いに行くよ。
カメラと、アルバムを持って……。