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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第零章:騎士の目覚め
9/20

EPISODE8:食堂にて

「ほえ〜・・・これがスペシャルパフェですか・・・」


「・・・・・・」


二日連続で見るが本当に迫力があるな・・・何せバケツ一個分の中にアイスやら生クリームや菓子類といった糖分の塊が入ってるんだからな。


「そ、それがユウキの昼食なのか?」


どうやら、アクアも驚きが隠せない様子だ。


「違う・・・違うけど、そうなんだよ・・・」


本当ならここ(食堂)で和風定食Bでも頼んで食べる予定だったのだけど。


「俺は始めて見るんだが、相当迫力あるな、これ。」


「藍葉くんもいい根性してるわね。」


全部強制的に食べさせられてるんだけどな。今日は飛鳥ちゃんにパフェを奢るみたいな事は言ったのは仕方ないけど。


「て、ていうか・・・今日はだいぶギャラリーが多いような・・・」


「それは・・・まぁ・・・」


何たって誰も食べようとしない物を二日連続で食べる奴なんていないだろうし。


「さてさて、それでは!いただきます!」


飛鳥ちゃんはスプーンで一番上のアイス部分をすくい食べ始める。


「ん〜・・・美味しいです・・・」


(美味しいんだけどなぁ・・・)


二日連続の昼の特大パフェはきつい。


「神谷はよく食べれるよな・・・」


「うん。へっちゃらだよ〜・・・」


リズムよく食べる神谷を見て正直、羨ましいと思った。

背もたれにもたれふと食券売り場の方に目が入ってしまう。


「ん?」


そこにいたのは、何か迷ってる様子で機械を触っているエリーさんだった。


「みんなちょっとごめん。」


俺は椅子から上がり席を離れる。


「えっと、お金は先に入れてボタンを押す・・・あれ?ボタンってどこ・・・」


どうやら、食券機の操作が分からず、手間取っているようだ。


「エリーさん。」


「え・・・?ゆ、優希?」


何か見られたくない物を見られてしまった様子でこちらを振り向く。


「もしかして、見てた?」


「ええ。何か手間取っているようでしたから・・・」


「そう。」


エリーさんは何故か不機嫌にプイと食券機の方に振り向く。


「ええっと・・・使い方分かります?」


「わ、分かるわよ!」


彼女は強気でそう言うと、食券機のモニターの隣にあるボタンを押す。


「あれ?」


お札の投入口から1000円札が出てきた。


「それ・・・取消ボタンですよ?」


「・・・・・・」


「・・・もしかして、食券機を使ったことがないんじゃ。」


「・・・」(コクッ)


赤面し、目を閉じたまま頷いた。


「わ、悪い?毎日弁当を作って食べてたんだから、仕方ないのよ!」


「いえ、別に悪いとは思ってませんって!逆に自分で弁当を作って食べる方が立派だと思いますよ。」


「えっ?」


「何て言いますか・・・食券機を使ったことがない事が理解できると言いますか・・・」


うーん・・・言いたい事が思い浮かばない・・・


「バカにしないの?」


「へっ?どうしてですか?」


「・・・ううん。何でもないわ。」


エリーさんは微笑みながら、そう言った。


「エリーゼせんぱーい!」


自分が座っていた席の方に振り向くと飛鳥ちゃんが元気良く手を振っていた。


「・・・あんなデカイ物を食べるのね・・・あの娘。」


「いえ・・・単に甘いものに目がないだけだと思います。」


神谷と並ぶくらいの甘党みたいだし・・・


「エリーさんも一緒に食べます?」


「え、遠慮するわ・・・」


遠くからでも、大きさが分かるのか表情が引きつり、そう言った。


「でも・・・席は一緒させてもらうわね。」


「はい。」


エリーさんの笑顔を間近で見たのかさすが学園のアイドルと実感する。

この後エリーさんに食券の使い方を教え俺は自分の席へと戻る。



「まったく・・・」


会計から戻ってくると何故かエリーさんは不機嫌な様子だった。


「どうしたの?エリーちゃん。」


「さっき食券を渡すのに並んでて前の列で喧嘩が起きてたのよ。」


喧嘩?食堂で珍しい・・・


「喧嘩と言っても殴り合いじゃなかったから、心配しないで。軽い口論よ。」


ここから会計の方まで距離はあるし、口論だったら気づかないのは無理もないか。


「誰が口論してたんです?」


「体型がデカイし言葉の最後に"(=゜ω゜)ノ"ってつけてるような人よ。」


あっ・・・思いっきり自分のクラスメイトの人だ。


「相手は・・・何か昆虫やらバッタとか悪口言われてたわね。」


ひどい悪口だな・・・


「もう一人はその二人をなだめてたけど、"ツンデレ野郎"って言われた瞬間口論の仲間入りよ。」


・・・一体どんな口論してたのか気になる。


-回想(sideエリーゼ)-


優希に食券機の使い方を教えてもらい"和風定食A"と書かれた食券を手に取り会計で並んでいた。並んでから少し経ち前の方が騒がしい事に気づく。


「おめーおちょくってんのか!?(=゜ω゜)ノ」


「いやいや!冗談ですやん!」


「何の冗談だよ・・・」


どうやら、何かトラブルがあったらしく、口論をしているようだ。


「おい昆虫(=゜ω゜)ノ」


「誰が昆虫や!」


「落ち着けって・・・」


「俺に触れるなツンデレ野郎。」


「おほっ(=゜ω゜)ノ」


「誰がツンデレ野郎だ!バッタが!」


(・・・どんな口論をしてるのよ。)


口論になった理由は知らないが、とにかく止めないと前に進まない。


「ねぇ、あなた達・・・」


「俺に触れるな!」


話を聞くどころか、中二病発言をした彼にイラっとし


「天誅。」


「ギョエーッ!」


とりあえず、所持していた小さなパウダースプレーを彼の手の辺りを集中してかける。


「人の話を聞かないとどうなるか分かってる?」


「ご、ごめなさいすぅ・・・(=゜ω゜)ノ」


(お、おっかねー・・・)


スプレーをかけられた彼は床に倒れ痙攣している。


「食べ終わった後か知らないけど、並んでる所で口論されたら、迷惑だから他の場所でしてちょうだい!分かったら、返事。」


「は、はいですぅ・・・(=゜ω゜)ノ」


「はい・・・」


「よし。早く寝てる彼も連れて行きなさい。」


「う、ういッス・・・」



「みたいな感じ?」


・・・本当におっかないな。まさかパウダースプレーで撃退させるとは。多分、効くのは彼だけなのだろうけど。


「案外こういう使い方があるのね、これ。」


みんなはこの人のような使い方をしないようにしよう。


「てか、次やったら、生徒会が黙ってませんって・・・」


「見られたら、の話でしょ?」


「そうですけど・・・」


「案外心配性なのね。優希は・・・」


「こういうのは、"チキン"って言うらしいんですよ。」


「チ、チキ・・・」


心の奥で何かがぐさっと刺さる。


「そ、そうか・・・俺ってチキンなんだな・・・」


「あ、飛鳥ちゃん・・・」


「たまーにって言うか、前から思ってたんだが、飛鳥ちゃんって以外と言葉にトゲがあるよな・・・」


「ほえ?」


飛鳥ちゃんは俺の姿を見るなり


「あわわわ・・・ご、ごめなさい優希さん!意味がよく分かっていなかったので・・・本当にごめなさいです!」


「うん・・・飛鳥ちゃんには悪気がないのは、分かってるから。」


「はぅ〜・・・そう言われると余計に罪悪感が出てきますよー・・・」


彼女に悪気がないのは、分かっている。何せ悪気のない所が彼女の可愛いところなので、俺は言い返せないだけだ。何故か許せてしまう感じだ。少し言い方は誤解されがちだが、アクアを除いて俺以外に他のメンバーも言われた事があり俺と同様みんな言い返せていない。先ほど言ったとおり、みんなも"何故か許せてしまう"と答えている。まあ、神谷は気にしないと言うか、アホの子だから気にしないと言うか・・・


「優希くん?私はアホの子ではないですからね?」


「お、おう。そうだな。」


珍しく神谷に心が読まれてしまい少し動揺してしまう。


「と言うより飛鳥ちゃんはそんな顔をしない。」


「わぷっ・・・」


飛鳥ちゃんの頬にクリームが付いていたので、ティッシュでゆっくりと拭く。


「・・・」


・・・余計なお世話だったかな?


「えへへ・・・ありがとうございますね優希さん。」


彼女は頬を赤らめながら、そう言った。


「優希ってそう言う所がずるいのよね・・・」


「何がですか?」


「そうやって自覚してないのが余計にたちが悪い。」


何故かエリーさんにダメだしをくらってしまう。


「確かによく考えたら、お前ってハーレム野郎だよな。くそ。羨ましすぎる。」


浩二は一体何を言ってるんだ?


「まあ、そこが優希の特徴だがな。」


「卓人、お前なぁ・・・」


「そうね・・・藍葉くんはもう少し乙女心ってものを考えないといけないよねー。」


「そうそう。」


なっちゃんとミーちゃんまで・・・


「・・・優希くん?」


「お、おう。」


「れんあいゲーム?のやり過ぎはよくないですよ?」


「やってないからな?」


何か神谷だけ言ってることが違う。話は聞いていたのだろうが、意味が分かっていないのだろう。・・・半分俺もそうだが。


「アクアちゃんもそう思うわない?」


「えっ?そ、そうだな・・・」


いきなり話をふられたのかアクアはぎこちなくそう言う。


「その様子だとアクアちゃん。話に参加できてないわね?」


「えっと・・・その・・・私の知らないことが多くて、何をどう言えばいいのか分からなくて・・・」


アクアは申し訳なさそうに下に俯きながらそう言った。確かによく考えたら、俺たちだけで話し過ぎたな。アクアにとっては、始めての外の世界と学校であり知らないことがあり過ぎて戸惑っているのだろう。


「確かアクアちゃんはイギリスから来たみたいだし、知らないことがあり過ぎるのは確かね・・・」


「何せ萌えが多いアキバの近くだからなぁ・・・」


浩二が言ったことに関係なくはないと言い切れないが、今は関係ないな。


「でしたら、分からないことがありましたら、どんどん聞いちゃってください!」


飛鳥ちゃんは拳を握り胸をポンっと軽く叩いた。


「私達は友達ですから。ベ、ベストフレンド?って言うのかな?」


「友達・・・」


「そうよ。アクアちゃんはAKO部のメンバーでもあり友達でもあるんだから。」


「おい待て・・・お前いつの間にメンバーに引き入れたんだ?コネとか・・・へぶしっ!?」


わお。卓人が軽くKOされたな。


「余計な横槍はいれない!」


「は、はい・・・」


(おっかねー・・・)


(それがエリーゼ先輩ですよ。)


(エリーちゃんは強いですからね。)


エリーさんと卓人のやり取りを見た俺たちは軽く笑いあった。


「ふふ・・・」


「アクア・・・?」


「ユウキ。こういう風景はいいものだな。」


アクアは微笑みながら、俺に小さく語った。


「まあ・・・な。」


俺もアクアが言ったことを共感し彼らの方に振り向く。


(いつまでも・・・みんなと一緒にいれたらいいのにね・・・?)


「えっ・・・」


俺の声ではない誰かの言葉が脳裏にふと横切る。


「ユウキ?」


「あ、ああ・・・何でもない。ちょっと誰かに呼ばれたような気がしたからさ。」


「そうか・・・」


EPISODE8:食堂にてEND

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