EPISODE7:学校は面白い場所
「おはよー藍葉。」
「おう。おはよう。」
クラスメイトの男子の一人と挨拶を交わし自分の席へと座る。
先ほどの経緯を話そう。エリーさんの話で部活に興味を持ったアクアは今日からAKO部のメンバーとして活動する事になった。学園長室に着くと、エリーさんは機嫌良く別れる。すると、セキュリティーカードやらコードを入力する機械から
『え、えっと・・・アクアさんですか?ゆ、優希くんもいると思いますけど、優希くんは、自分のクラスに戻って大丈夫ですよー・・・』
という弱々しい少女のような声を聞く。これが学園長の声でさっきの言葉は"恥ずかしいので、優希くんは入らないでください"という意味も込めてある。言葉のとおり、学園長は男性が苦手なのだ。
そして、今現在、こうして教室に来たわけで。
「おはようございます!優希さん。」
自分の席に着くと、元気良く挨拶をしてきたのは、飛鳥ちゃんだ。
「おはよう飛鳥ちゃん。」
俺も元気良く飛鳥ちゃんに挨拶を返す。
「今日の優希さんはいつもより早いですねー。いつもでしたら、予鈴の五分前に教室に来るのですけど。」
「うん。今日は少し用事があったからね。」
「用事ですか?」
飛鳥ちゃんは知りたそうに興味を持った目でこっちに迫って来る。その時、周りから殺意をこもった視線を感じ男子生徒がいる方に耳をすますと。
「くっそ〜・・・みんなの飛鳥ちゃんと朝からイチャイチャしやがって〜・・・!」
「あのハーレム野郎・・・(=゜ω゜)ノ」
「くぅ〜っ!俺も飛鳥ちゃんとゆっくり話してみたい!」
「よし。今日の放課後作戦会議をするぞ!」
おい。作戦会議ってなんだ?・・・どうやら、このクラスには俺がまだ知らない秘密があるみたいだ。
「用事ってなんですか?もしかして、優希さんには裏の職業があったりとか・・・」
「いやいや。それはないからね?」
裏の職業って、俺は一体何者なんだよ。アニメやゲームの設定ではあるまいし・・・
「むむ、怪しすぎます。気になります。」
そんなに俺が早い時間に来るのが不思議なのか飛鳥ちゃんはグイッと一気に距離を縮めて来る・・・
って飛鳥ちゃんの顔が近い!
「あ、あの・・・飛鳥ちゃん?顔が近いんですけど・・・」
「教えてくれるまで離れませんからね!」
「あ、はは・・・」
「こう見えても私は隠れ頑固ですからね?スーパー頑固なんです!」
スーパー頑固って、言葉自体独特で初めて聞くな。
それよりもまた、周りが騒がしくなりはじめ男性陣の殺意のこもった言葉が聞こえてくる。
「おのれ〜・・・優希〜・・・!」
「アイツおちょくってんのか?(=゜ω゜)ノ」
いや、別におちょくってるわけではないけど。
「よし。今日の放課後の作戦会議は"優希暗殺計画"に変更しよう。」
おい、そこ!何物騒なことを計画してやがるんだ!
「おーおー、朝からいい光景ですな〜・・・」
すると、男性達の殺意をこもった視線をかき消すかのように、教室から入ってきたのは、なっちゃんだ。
「やっほー。アッキーも隅に置けないねぇ。」
ニヤニヤしながら、そう言ったのは、ミーちゃんだ。かけているメガネがキラッと光走る。
「藍葉くんは年中モテ期だからね〜。
「だ、誰がモテ期だ・・・!」
「こーれだから、鈍感くんは困るよねー」
「そうだねー・・・」
全く・・・この二人は楽しんでるな。
とにかく、いつまでも飛鳥ちゃんに詰め寄られていると気まずいので、とりあえず・・・
「飛鳥ちゃん。」
「はい?」
「今日のお昼。パフェで・・・」
「マ、マ、マジですか!?優希さん!」
「マジです。」
そう言うと、飛鳥ちゃんは相当嬉しかったのか目をキラキラと輝かせている。
「いやー、念願のスペシャルパフェを食べれる日が来るなんて思ってもいませんでしたよ♪」
「えっ・・・?あ、飛鳥ちゃん?誰もスペシャルパフェとは言って・・・」
まてまて! ス、スペシャルパフェってあの化け物か!?
「今日は戦ですよ優希さん!」
ああ・・・もう食べる気満々だ。
「お、俺も手伝うのか?」
「当たり前じゃないですかー!友曰く、優希さんいなくて勝利は得られないんですよ!」
前回俺がいても、その勝利を味わった事がないんだけど・・・
「まっ、藍葉くんのダンナや。頑張ってくださいな。」
「私達は応援してるからー」
他人事のようになっちゃんとミーちゃんは言う事だけ言っては、逃げた。
「オイッス。朝から騒がしいな。」
「おはよ〜・・・あふ・・・」
元気良く入って挨拶をしたのは、卓人でその逆に眠たそうに挨拶をしたのは、 神谷だ。
「神谷!」
「ふ、ふぇ!?」
俺は神谷に詰め寄る。
「ち、近いよ・・・優希くん・・・」
神谷はいきなり詰め寄られた事が恥ずかしかったのかほんのりと頬が赤らめていた。
「わ、悪い・・・」
何やってるんだ俺は・・・いくら幼馴染でも、相手は、可愛い女の子なんだから、自重しないと変に意識してしまう。
「は、話を戻すけど、神谷・・・」
「う、うん・・・」
「今日もパフェOKか?」
「うん!余裕OKですよ!」
それにしても、昨日あれだけデカイパフェを食べ切ったというのに、即答で返してくるとは・・・恐ろしいやつだ。
「里美さんも一緒ですか!?これは勝ったも当然ですね!」
「うん。一緒に頑張ろうね?飛鳥ちゃん。」
「はい!」
今ここに甘党最強シスターズが誕生した。
「はーい。みんな席について。」
担任の先生が教室に入ってくるという事は、気がつかないうちに、チャイムがなってたのか。
「それでは優希さん。里美さん。また後で。」
「ああ。」
「うん。」
飛鳥ちゃんと神谷はそれぞれ自分の席へと戻って行く。
・・・仕方ない。今日もお昼はあのモンスターパフェを攻略するとしますか。
(アクアはどこのクラスになったのかな・・・)
そう考えていると
「ええっと・・・今日は皆さんに転校生を紹介したいと思いまーす。」
(ん・・・?)
不意を突かれ俺は密かにずっこける。
「何と女の子でイギリスから来たらしいですよー。」
「「「「なにぃ!!??」」」」
おお・・・卓人以外の男子全員が反応した。
「おい、優希ぃ!もしかして、アクアちゃんじゃあ・・・」
「た、多分な。」
「くはー!まさかアクアちゃんが俺達のクラスに来るとは・・・これはフラグ成立だな。」
浩二が言っているフラグはよく分からんが・・・
「アクアさん。入ってきてもいいわよー・・・」
『は、はい・・・』
-ガララッ-
前のドアがゆっくりと開き、そこに入ってきたのは、青い髪色をし長い髪を靡かせてゆっくりと教卓へと歩いて来る。
「アクアさん。自己紹介をお願いね?」
「は、はい。」
アクアは一度深呼吸をすると
「ア、アクア・F・イザールだ・・・よ、よろしくお願いします・・・」
顔を赤らめながら、自己紹介をした。
「か、かわいい・・・」
「天使だぁ〜・・・」
「こ、これは女子ランに対する革命か!?」
「イイデスネ〜・・・(=゜ω゜)ノ」
男子のほとんどが心を奪われている。
「昨日見て思ったんだけどさー。アクアちゃんって、お姫様みたいだよなぁ。」
浩二が言っている事には同感できる。何たって本当に姫様だからな。まあ、俺は珍しく浩二が羽目を外していないことに俺は驚いているが。
「大丈夫か?浩二。」
「俺が痛いやつみたいな気遣いしなくていいって!てか、昨日優希の家でここに通学するって話してたからそんなに驚いていないだけだって。」
「はは、悪い。」
「ったく・・・」
確かに、いつも女子の事に関してはうるさい奴だが、そこまで変人っていうわけじゃないからな。
「今失礼な事を思っただろ?」
「ベツニ・・・?」
「お前なぁ〜・・・」
なんて浩二と話していると
「んー・・・どうやら、アクアさんは藍葉くんの親戚みたいだから・・・・・・藍葉くんの隣でいいかな♪」
「えっ?」
「「「「なにっ!?」」」」
前にいる男性陣が俺を一斉に睨みつける。
「くそ〜・・・何で藍葉ばかり女性が寄ってくるんだ?」
「ギャルゲーでいう主人公的立場なんじゃないか?」
「マジか(=゜ω゜)ノ」
・・・何だ?この状況は。なんだかこのクラスのほとんどの、男子を敵にまわしてるような気がする。
「優希・・・俺はお前の席の近くで良かったぜ!」
本人は気付いていないようだが、アクアと席が近い浩二もブラックリストに載ったな。一時理不尽だと思ったが、彼の喜ぶ姿を見たら納得した。
(むむむっ?ラ、ライバルの出現ですか!)
飛鳥ちゃんの方を見ると、何故か闘志を燃やしているように見える。
(はぁ・・・何だか大変な事になってきたな・・・)
※
-一時間目-
しばらく時間が経ち一時間目の世界史が始まる。確か今日の範囲は・・・なんだっけ?
「えーっと、今日はアメリカの歴史についてやろうと思ったが・・・あいにく資料を忘れてきてしまってな。自習でいいぞ。」
(おい。)
世界史担当の教師は面倒くさいのか授業を放り投げてしまった。
「せんせーい。まともに授業やってくださいよ。」
珍しくなっちゃんが指摘した。多分、8割ふざけだと思うが。
「そうだぞー。今日留学生が転入してきたんだから、ちゃんと教えろよ。」
「んならお前が一日講師をやってみるか?」
教師はからかい気に笑いながらそう言った。
「え、遠慮しときます・・・」
「・・・まっ。俺はこう見えても一応、教師だ。別に誰も勉強はしねぇとは言ってねーからな。」
すると、教師が取り出したのは、プリントの束だ。恐らく、自習ではお馴染みのプリントでこの時間を過ごせというものだ。
(優希・・・彼は、教える側の立場ではないのか?)
(そうだけど、ああいう性格だからなぁ・・・だけど、あの先生が作ったプリントは分かりやすいから心配しなくてもいいと思うぞ。)
(ううむ・・・この世界の講師は興味深いものだな。)
それは一部の人だけだと思うけど・・・例えば、前の席でずっとポータブルゲームをやっている奴とか。
「おい(=゜ω゜)ノ」
すると、彼はいきなり俺の方に振り向き睨みつけてくる。何故睨まれたのか疑問に思うだろうが、実は彼、意外と感がいいので、バカにするような事を思ったり口にしたりすると、天誅をくらってしまう。今は授業中だから、助かったものの・・・
(あの・・・デカイ体型をした奴は何をやっているのだ?)
アクアが興味を持ったのは、彼が持っているゲーム機だ。
(ゲームの事か?)
(ゲ、ゲーム・・・?)
(う〜ん・・・今は授業中だから、後で教えるよ。)
(そ、そうか・・・)
とは言いつつもアクアは彼が持っているゲーム機が気になって仕方がないようだ。
「おほっ(=゜ω゜)ノ」
・・・悶えているということはギャルゲーをやっているのか?まあ、それはおいといて、配られたプリントに集中しますか。
※
-昼休み(Lunch break)-
「はぁ・・・やっと昼か・・・」
俺は教室に帰って来るなり自分の席に着いては、机にへばりつくように倒れこむ。
「ユウキはどうしたのだ?」
「ああ、それがな・・・四時間目は男子全員体育だったろ?」
「う、うむ。」
浩二はさっきまでの出来事を説明し始める。
「先生が用事で自習って事になったんだ。そしたら、ドッチボールになってさ・・・」
「ああ・・・俺ら以外のあいつらは、殺気も何も・・・」
「優希しか狙ってなかったんだよな〜・・・」
「それは・・・」
「アッキーも大変だったね・・・」
表情は見えないが、なっちゃんとミーちゃんが同情してくれるのは何となく感じる。
「それでどうなったのだ・・・?」
「うん・・・それはだな・・・・・・優希が全員返り討ちにしたんだっけ?」
「か、返り討ちだと・・・?」
「優希くんは強いですからね〜・・・」
「一度優希さんが活躍してるところ見てみたいですね。」
「やめとけ飛鳥ちゃん。活躍してる優希を見たら、後ろに鬼みたいな化身が見えるぞ・・・」
「ほえー・・・ますます見てきたくなりました・・・」
(けしん・・・?この世界には召喚獣みたいなものがいるのか?)
化身って・・・体育やってる時の俺ってそんな風に見えてるのか?
「そうでした!」
飛鳥ちゃんが何かを思い出したのか声を上げる。
「優希さん!早く食堂に行きますよ!」
「ちょっ・・・待ってくれ。少し休ましてからに・・・」
「いいですか、優希さん!スペシャルパフェは一日一個しか作ってくれない限定メニューなんですから、一秒でも遅れたら、手遅れなんですよ?」
「そ、そうなんだ。」
多分、心配しなくてもあのパフェは神谷しか完食できる人がいないから、急がなくてもいいと思うけど。
「ス、スペシャルパフェ・・・?限定メニュー・・・?」
どうやら、アクアは話についていけてないのか目を丸くしながら、俯いていた。
「アクアさんも一緒に食堂行きましょうよ !」
「しょくどう・・・」
「まだ私達の自己紹介もしていないから、ついでに・・・ね?」
なっちゃんは何かを期待する目で俺の方を見つめる。
「悪いけど、スペシャルパフェしか奢れねーぞ?」
「ケチ。」
「おい。」
「ふふ、冗談よ。」
「全く・・・」
イタズラ気に笑うなっちゃんを見て俺は少しだけ理不尽さを感じた。
「アクアさんのは、私が奢るわ。」
「い、いや・・・奢るという意味はよく分からないが、悪い気がするぞ・・・」
「遠慮しない。ラクロス部の後輩からクーポンを貰ったから結構安くつくわよ?」
「カツアゲしたんじゃないだろうな?」
「するわけないじゃない!」
「なっちゃんさんは、以外に我儘ですからねー。」
「飛鳥ちゃん?聞こえてますからねー・・・?」
「はわわ・・・なっちゃんさんの目が微妙に怖いです!」
微妙って事はそんなに怖くないってことだよな?
「んなら俺も食堂に行こうかなー・・・」
「何でよ。」
「なんでって・・・みんなで飯食うのに、理由なんているか?」
「あんたはいやらしい感じしかしないからさ〜・・・」
「ひっでぇ・・・」
「浩二さんは卑猥ですからー。」
「ちょっ!?飛鳥ちゃんまで・・・」
ひどい言われようだな・・・
「ていうか、あんた『金がなーい!』とか言ってたじゃない。」
「心配するな。今日はなんと弁当だ!」
「へー・・・浩二が弁当ね・・・」
「へー・・・じゃねーよ。何で俺が『弁当作ってもどうせマズイいんじゃない?』みたいな言い方をするんだよ!」
「言葉の通りよ。」
「失敬な!いつ、俺が弁当を作れないと決めたんだ!?こっち(苗宮荘)には藍葉 優希という料理の帝王がいるんだからな!この弁当だって、昨日優希から分けてもらった藍葉カレーだぞ!」
その言葉の意味だと結局自分で作ってない事になるぞ。
まあ、それはおいといて、とりあえず、彼らのコントをやめさせないと昼休みがなくなってしまいそうだ。
「コントやってないで早く行こうぜ。せっかくの昼休みが短くなるぞ。」
「おお・・・そうだな。」
「浩二のせいね。」
「おい・・・」
本当に相性がいいコンビというか・・・
「ぶっちゃけて言いますと、仲良しですね。」
「そうだな。」
飛鳥ちゃんの言葉に一人で納得する。
「この世界の学校は面白い場所だな。」
アクアはなっちゃんと浩二のコントを見てふと思ったのか微笑みながら、そう言った。少し印象がずれたような気もするけど彼女にとっては、いい雰囲気と捉えたから気にしないでおこう。
EPISODE7:学校は面白い場所END