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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第零章:騎士の目覚め
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EPISODE4:終盤の一日

「あははは!確かに、河崎。エリーさん苦手だもんね!」


「笑い事じゃないぞ・・・」


「むふふふー・・・さすが最近のギャルゲーはクオリティが一段と違いますなぁ。」


「えっとね〜・・・こうかな?」


「残念ですね。チェックメイトです。」


「ガーン・・・」


「・・・・・・」


しばらく時間が経ち里奈やなっちゃん、ミーちゃんといった部のメンバーが全員揃った。俺は何もする事がないので、自分の席に座りただ部屋を眺めボーッとしている。改めて思うのは、この部活は本当によく分からない・・・部長本人も活動方針とか特に指定してないわけだし。

今あるとしたら・・・


「ん〜・・・優希はピッチャー決定ね。」


野球で打倒AHO団くらいだ。

ただ、遊ぶだけの部活で大丈夫なのか?と思われがちだが、この部活は学校直々の部活ではなく実は、自立した部活だ。要するに、学校関係なく、活動している部活ということになる。実際ラクロス部の部員が二人ここにいるわけなので・・・


「暇そうね。優希。」


「暇そうねじゃなくて、暇なんです。」


「ギャルゲーはしないの?」


「興味が出るほどハマってませんから・・・」


卓人から数えきれないほど貸してもらっているが、自分にはよく分からない。面白くないと言ったら嘘になるけど。


「そうだエリーさん。依頼とかはきてないんですか?」


「そうね・・・」


この部活のもう一つの顔があったことを思い出す・・・それは依頼だ。依頼とはまあ、探偵の仕事と一緒のようなものだ・・・とはいっても、さすがに俺達は高校生なので、無茶な事は受けないが、困った人を手助けすることがこの部活のもう一つの顔になる。


「今のところは、無いわね。」


「そうですか・・・」


「それじゃあ、優希。私から提案があるけど。」


「何ですか?」


「下にいってメイドさん達の手伝いをしてきたらどう?」


「つまり、女装しろってことですよね?」


「ええ♪」


ええ♪って・・・なんて事を提案する人なんだ。


「しません。ていうか、やりたくありません!」


「う〜ん・・・いい提案だと思ったのにね・・・」


全くこの人は・・・


「う〜、優希くん。助けて〜・・・」


神谷が涙目になりながら、俺のほうに寄ってきた。


「どうした?神谷。」


「月美ちゃんに勝てないよ〜」


どうやら、原因は月美ちゃんとしていたチェスの敗北のようだ。


「ちなみに、勝敗は?」


「0勝20敗・・・」


「・・・」


ルール分かってないなこりゃ・・・多分、一回の勝負で5分もかかってないな。


「次は、先輩がきますか?」


月美ちゃんは自信ありげにそう言った。


「よし。受けてたとう。」


エリーさんのふざけに付き合うよりはマシだったので、俺は月美ちゃんとチェスで勝負をする事にした。



「それじゃあ、みんな今日はお疲れ様。」


チェスをしているといつの間にか、時間がかなり経ち夕方の6時を過ぎていた。

まだ5月になって少しだが、空は黒くなりつつあった。


「優希。メンバー集めよろしくね♪」


「冗談ですよね?」


「いえいえ。かなり本気よ?」


彼女の目を見ると、言葉のとおりマジだ。んー・・・AHO団の事になると熱くなるというか。個人の競り合いだな。


「優希?」


「期待はしないほうがいいですよ?」


「ふふ。その言葉に期待してるわ。」


エリーさんは少し悪意を込め微笑んで見せた。もしかしたら、自分で探すのが面倒くさいから俺に押し付けてるだけではないよな?


「さてと・・・もう閉めるから忘れ物はないようにね。」


エリーさんは自分のカバンを持つと壁にかけてあったカギを手に取り指でクルクル回している。


「それじゃあ、俺は先に帰るぞ?」


「うん。優希くんお疲れ〜」


「おう。」


カバンを手に取りドアの方に歩いていくと。



「あっ、待ってください!先輩。私も一緒に帰ります!」


月美ちゃんはあたふたしながら、自分のカバンを持ち俺の方に向かってくる。そういえば、住んでるところ一緒の所なので、帰り道は一緒だった。


「行きましょう先輩。」


「ああ。」


ドアノブを回し廊下へと出る。

一瞬エリーさんのジト目が見えた気がするが気のせいと思っておこう。


「せ、先輩はこのあと、何処か寄りますか?」


「そうだな・・・」


何か忘れてる気がしているので、記憶を探っていく。すると、朝の出来事を思い出す。


(姫様のこと・・・すっかり忘れてた・・・)


多分、相当不機嫌になっているに違いない。


「スーパーに寄ってもいいかな?ちょうど卵をきらしてるから。」


「はい。私もちょうど卵がなくなりましたので、寄りたかったです。」


「それじゃあ、急ごうか。この時間帯の電車は地獄だから・・・」


「うっ・・・そうですね・・・」



「つ、月美ちゃん。大丈夫?」


「は、はい・・・」


顔を赤くした月美ちゃんは視線を逸らしながらそう答えた。それもそのはずだ・・・多分、俺も顔が赤くなってるだろう。

原因は電車の中だ。自分達が乗る電車の車内はもう人がたくさん乗っており、いわゆる帰宅ラッシュというやつだ。ドア付近だから良かったのは良かったのだが、無理矢理入った俺と月美ちゃんは密着状態になりお互い気まずい時間が目的の駅につくまで流れた。毎日ではないが、このような経験は何回かあるのだが・・・


「先輩・・・早く行きましょう。」


「う、うん・・・」


心臓がまだバクバクしてる・・・


(いかんいかん・・・平常心にならないと。)


少しだけ先に歩いた月美ちゃんを追いかけ隣に並び一緒に歩く。


「そ、その・・・先輩?」


「ん?」


「・・・当たってましたか?」


恥ずかしかったのか最初の言葉が聞こえなかった。


「当たってたって何が?」


「はぅっ!?・・・や、やっぱりいいです!!」


顔を真っ赤にした月美ちゃんは慌てて走り出す。


「どうしたんだろう・・・」


当然追いつけるわけもなく、俺はただ、月美ちゃんが走った方を見ていた。多分、このままスーパーに行くだろうと思ったのもあるが・・・


「あ、優希さん!」


すると、どこからか可愛げな女の子の声が聞こえる。


「こっちですよ。」


右に振り向くと・・・


「ぶっ!?」


何とメイド服を着た小柄で茶髪でサイドテールをした女の子が笑顔でこちらを見ていた。


「は、派手な格好だね。朱鳥ちゃん・・・」


「そうですか?これがバイトの制服なんですが・・・」


キョトンとした表情で彼女はこちらを見つめる。

この子は、遠藤 朱鳥。俺とは一つ年下だが、飛び級で俺と同じクラスだ。明るくて元気な人でクラスだけではなく、学校全体に人気がある。だけど、体が弱く体調を崩しやすいらしく、見てて放ってはおけない人だ。

何故彼女は堂々とメイド服を着ている理由はというと、先ほど自分がいたビルの一階にあるメイド喫茶でバイトをしているからだ。


「ふふ♪どうですか?優希さん。似合っていますか?」


軽くクルリと回転する朱鳥ちゃん。フリフリなスカートが浮く。俺はその様子を見つめる。


「うん。さすが朱鳥ちゃんだ。」


「えへへ・・・そう言われると照れちゃいますね。」


頬を赤くした朱鳥ちゃんはモジモジしながらそう言った。


「そういえば、朱鳥ちゃん。今日は学校に来てなかったけど・・・」


「え、えっと・・・少し用事がありまして、来れなかったといいますか・・・」


「そうなんだ・・・また、体調を崩したんじゃないかって心配してたんだ。」


「す、すみません・・・て、それだったら、優希さんに連絡してますよー!」


「あはは。そうだな。」


よく考えればそうだと思った俺は軽く笑った。それを見た朱鳥ちゃんもつられたのか微笑む。


「そういえば、先ほど月美さんが走って行きましたけど、追いかけなくていいんですか?」


「あっ・・・」


そうだった。月美ちゃんを追いかけないといけないんだったな。


「ごめん朱鳥ちゃん!話はまた、明日で。」


「あっ!待ってください優希さん。」


スーパーの方に歩こうとするが朱鳥ちゃんに呼び止められる。


「えいっ!」


「・・・!?」


振り向いた瞬間朱鳥ちゃんは俺の体に抱きついていた。


「ちょっ、朱鳥ちゃん!?」


「えへへ。優希さんエネルギー補充です。」


な、なんだ?優希さんエネルギーって・・・そうじゃなくて!そうガッチリと抱きつかれると朱鳥ちゃんの柔らかい感触と温かさが伝わってくるのだが・・・


「はい。優希さんエネルギー補充完了!これでバイトでは本気100%出せます!」


「う、うん・・・頑張ってね。」


「はい!」


笑顔で朱鳥ちゃんはそう答える。


「それでは、優希さん!行ってまいります!」


元気良く彼女はそう言うと、手を振り駅の中へと入って行く。


「・・・・・と、とにかく、急ごう。」


朱鳥ちゃんの行動はよくわからなかったけど、男としては、いい思い出になった・・・のか?

まあ、今の出来事を学校全体の男子にバレると冷戦状態になるな。


(そんなスキャンダルはごめんだ・・・)


俺は体を震わせながら、スーパーへと早歩きで向かうのだった。



「・・・・・・」


ビルの屋上。一人の人影が囁く。


「この世界にいる・・・」


EPISODE4:終盤の一日END

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