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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第零章:騎士の目覚め
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EPISODE3:よく分からない部活

学校の正門で月美ちゃんと合流した俺たちは目的地のアキハバラに向かうため駅へと歩いていた。

それにしても・・・


「気持ち悪い・・・」


昼で食べたあのモンスターパフェ・・・結構胃の中のダメージが大きい。


「同感です・・・午後の授業なんか集中できませんでした・・・」


「あ〜・・・優希なんかずっと寝てたからな。」


「ダメですよ優希先輩・・・授業はちゃんと受けないと・・・」


「そんな事言われてもな・・・」


あんな糖分の塊をあれだけ食べたら満腹どころか、吐き気がして授業なんか集中できるはずがない。


「だらしないぞお前ら!少しは神谷を見習ったらどうだ?」


(パフェを食べてないお前が言うな・・・)


ツッコミをいれる気力もなかったので、黙って神谷の方を見ると、幸せそうにワッフルを食べている。あれだけ食べてまだ入るのか・・・


「すごいですね・・・神谷先輩。」


「うん。へっちゃらだよ〜。」


もしかしたら、アホパワーの源はこの甘いお菓子ではないのか?


「ちょーっと待つのですぞ!そこの君たち!!」


すると、突然後ろから聞き覚えのある声がし振り向く。まあ、あの口調だと里奈だな。


「おう、里奈。どうした?」


「どうしたじゃないですよ!何で誰も待ってくれないのですか!?」


「まあまあ。お茶でも飲んで落ち着け。」


俺はとりあえず、問い詰められるのが面倒なので、ボケでカバーする。ボケは確実ではないだろうが、里奈なら確実にのってくれるだろう。


「あっ、どうも。」


すると、里奈はお茶の器をとる素振りを見せると予想通りにボケにのってくれる。


「ズズー・・・今日もいい葉っぱを使ってますね・・・って今日が始めてですねん!」


「・・・相変わらず、ノリツッコミが下手くそだな・・・」


「せっかくのってあげたのにひどい!」


「うーん・・・何かが足りないんだよな・・・」


「ぜひ教えてください優くん先生!」


「いつから俺はツッコミの先生になったんだ?」


「いつもツッコんでるじゃないですかー」


言われてみれば、確かにそうだな。あれは単なる自然にしてしまうというか・・・


「まあ、ノリツッコミは担当してないんで。」


「そ、そんなぁ〜・・・」


この落ち込み様を見る限り、本気で気にしてたんだな。


「あはは・・・でも、いつか里奈先輩でも、上手に返せるようになりますよ。」


「でもってなに!?」


「す、すみません!何か失礼な言い方になってしまって・・・」


「悪気があるところも何気に痛いよ〜・・・」


じゃあ、どないしろって言うんだ?こいつは。

まっ、何より置いてかれたことについて、問い詰められるよりはマシか。


「そう言えば、どうして里奈ちゃんは、遅れて来たんだっけ〜?」


「ああっ!?そうでした!」


(くっ・・・さすが神谷。)


まさか、ここまで粘って不意打ちをくらうとは・・・次から神谷に対しての対策をしとかないとな。


「さぁっ!覚悟するのですぞ優くん!」


「スキあり。」


「イタイ!?」


俺は素早く里奈の頭にチョップをし彼女を撃沈させる。


「ふ、不意打ちとはセコイですよ優くん!さあ、今もう一度リベンジを・・・」


「だが断わる!」


「ひでぶっ!?」


またも素早くチョップをくらわす。


「うぅ〜・・・リベンジ戦も負けるとは・・・私を倒しても第二の私が・・・」


「よーしみんな。目を合わせないようにな。」


「おう。」


「ふ、ふえ!?」


「わ、分かりました。(少し可哀想な気がしますけど・・・)」


「ゴメンナサイ・・・チョウシニノリスギマシタ・・・」


かたことの時点でまだ調子にのっているような気がするのだが・・・


「では、顔文字をつけてみます?(≧∇≦)」


「反省の色がなくない!?」


何となくだが不思議にそう見えた気がした。


「あっ、そういえば、今日は新しいゲームの発売日のでしたよ!」


「へー・・・」


「というわけで、今日は少〜しだけ遅れます!」


テンションが高い理由は、ゲームのせいだったんだな。



-アキハバラ 中央通り メイド喫茶LOVE☆LOVE-


「「おかえりなさいませ!ご主人様。」」


店内に入るなりメイドさん二人に出迎えられる。この光景はもう慣れたが・・・


「あっ、優希様達でいらっしゃいましたか。お久しぶりでございます。」


「うん。久しぶり。」


「先ほどエリー様が来ましたよ。もの凄く不機嫌な様子でしたけれど・・・」


「そうか・・・」


そういえば、テスト期間中はここに顔を出していなかったからな・・・恐らく、その事で不機嫌になっているのだろう。


「先輩・・・上から凄い殺気がきてるのですが・・・」


「心配するな。怒られるのは、卓人だから。」


「おい。何故俺だけなんだ。」


「副部長だからな。」


「ちょっと待て!副部長(俺)だけが怒られるなんて聞いてないぞ!?」


確かにそうだな。卓人だけがとばっちりをくらうとは限らない。少なくとも、女性陣にはこないと思う。


(と、なると・・・俺か。)


「はぁ・・・」


ため息をつき俺は"関係者以外立ち入り禁止"とコミカルに描かれた看板が貼られたドアのノブに手をかける。この先は階段になっている。


「とにかく、上がって理由(わけ)を話すしかないだろ?」


「ああ・・・そうだな。」


青ざめた顔をした卓人が震えながそう言った。さっきの元気はどこにいったのか・・・


「エリーちゃんと会うの久しぶりだね〜」


「のんきでいいよな・・・神谷。」


「えへへ〜」


一人だけプレッシャーを感じていない神谷を見ているとなんだか落ち着く。俺も神谷ほどではないが、上からきているプレッシャーをたいして感じとってはいない。だけど、こういう場面での神谷の天然さは場を和ませてくれるものだった。卓人以外は・・・


「くわばらくわばら・・・」


どんだけ苦手なんだよ・・・



階段を上がっていき三階に着くと、すぐドアがあった。ドアにはAKO部と描かれた看板がぶら下がっている。

ちなみに、AKO部の略は


A:アキハバラ


K:風間第一学園


O:応援



と、なっている。活動内容は、不思議にも自分でもよくわかっておらず、ただ、分かっているのは、とにかく、フリーダムな活動しかしないという事だ・・・

失礼承知だがこのネーミングセンスのない名前を考えたのは、このドアの向こう側にいる部長だ。


「こんにちわー」


ドアを開け俺が先に中へと入る。中は、会社のようにオフィスデスクが置かれてある。並べられたデスクの先にはいかにも社長さんが座りそうなデスクが置かれてありそこに金髪でロングヘアをした美少女が腕を組み座っていた。しかも、目をつぶり不機嫌な様子で。


「2週間も来ないなんていい度胸してるわね。」


「それは事前にテスト期間だからって言いましたよ?」


「そうだけど・・・一日は顔を出してもよかったじゃない。ね、河崎?」


「ソ、ソウデスネ・・・」


「優希もよ。」


「お、俺もですか?」


当たり前よと言わんばかりに彼女は頷く。


「当たり前じゃない。河崎はここのビル全体の社長の息子であって大黒柱。優希はこの部のホープなのよ?」


ホープ?俺ってそんな設定になってたのか?


「間違えたわ。エースなのよ?」


「エースって・・・運動系の部活じゃないんですから。」


て、エースだったら部長と同じ立場じゃないか。


「エリーさんはちゃんとテスト勉強してたんですか?」


「もちろんよ。ここで一人寂しい思いをしながらやってたんだから。」


こんな広い部屋の中一人で勉強って・・・


「はい。お茶いれました。」


「ありがとう。月美ちゃん。」


「いえいえ。」


ナイスだ月美ちゃん。これで少しは部長の機嫌がとれたかもしれない。


「と、とにかく、久しぶりに活動するんですから過ぎた事はおいときましょう。」


「・・・そうね。」


エリーさんはお茶の入った湯飲みを手に取るとゆっくりと飲む。


(よかったな。月美ちゃんに助けられたぞ。)


(ああ。後で好きな同人誌を提供しないとな・・・)


卓人。"お礼=同人誌"はなっちゃんくらいしか効かないと思うぞ


とりあえず彼女は、浅倉 エリーゼ。歳は俺の一つ上で同じ学校に通っており、一応、このAKO部の創立者であり部長を務めている。みんなからは、エリー先輩やエリーさんと呼ばれており本人はタメ口とかはあまり気にしない人だ。神谷だけがエリーちゃんと呼んでいる。


「お久しぶりだね〜エリーちゃん。」


「うん、久しぶり。里美ちゃんは元気にしてた?」


「うん。私はいつでも元気だよー」


「ふふ♪」


という感じだ。


「なに?優希。」


「いえ・・・なにも。」


「ふーん・・・」


エリーさんはジトっとした目つきで俺の方を見つめてくる。


「はい、先輩。お茶です。」


「ん。ありがとう。」


月美ちゃんから湯飲みを手渡され受けとる。中には、もちろん、あたたかいお茶が入れられていた。


「とりあえず、みんな。聞いて欲しい事があるの。」


唐突なのかこの部屋にいる全員が部長に静かに視線を送る。


「コホン・・・みんな。1ヶ月ごにAHO団と野球勝負する事になったわ!」


「ぶっ!」


「はあ!?」


「や、野球・・・」


「ふえ?」


野球って・・・本当にいきなりだな。


「みんな何"突然すぎる"みたいな顔をしてるの?」


「当たり前ですよ・・・」


「野球ですか・・・」


目をキラキラさせてる人が一人だけいるけど。


「月美ちゃん?」


「いいですね。野球。」


「月美ちゃんもそう思うわよね?」


「はい。」


「ちょっと待ってください!」


「なにか?優希くん。」


「別にやる事には構わないんですけど何故そうなったか理由を教えてください。」


「理由?もちろん、AHO団に勝つためよ。」


勝つためって・・・理由になってるのか?ちなみに、AHO団の略とは


A:アキハバラ


H:星見王高等学校


O:応援



になる。まあ、こちらとあまり変わらないネーミングセンスの悪さだな。


「優希・・・今失礼な事を思ってなかったかしら?」


「いえ全く。」


またジト目で睨まれ俺は彼女の視線をそらすように違う方向を見てごまかした。


「というわけで、メンバーを集めないとね。」


俺に卓人、神谷、里奈、月美ちゃん、エリーさん。そして、ラクロス部のなっちゃんとミーちゃんの8人になるな・・・


「8人か・・・あと一人足りないな。」


「野球は最低でも9人は必要ですから・・・」


「あとできるだけ控えはいた方がいいだろうな。」


確かに卓人のいう通りになる。こちらは不思議に男性が少なくほとんど女性ばかりで体力的には厳しいかもしれない。多分、ラクロス部の二人は大丈夫だろうけど・・・


「向こうは男子しかいないから、女性ばかりのこっちは不利になるわね・・・優希。誰か頼れる人はいないかしら?」


「う〜ん・・・あまり期待しない方がいいと思いますよ?」


「そうね。」


「・・・おい。」


予想はしてたけど、一言で流されるとは・・・けっこうひどい。


「まっ、遊び程度の草野球だから、そんなにムキにならなくてもいいんじゃないか?」


「誰が遊び程度ですって・・・?」


「えっ?」


ギギキッと音が鳴るかのように卓人の方に首を回す。


「あの〜・・・エリー先輩?」


「卓人。あなただけ猛特訓が必要みたいね。」


「・・・スミマセンデシタ。」


ガタガタと体を震わせながら、謝罪する卓人。おそらく、卓人には鬼が見えてるんだろうな。


「ほら、卓人。今のうちに、上に行って新作とってきたらどうだ?」


「そ、そうだな・・・そうするか。」


早歩きでドアの方に向かうとエリーさんから逃げるかのように、ドアの向こうへと消えていった。


「河崎先輩、大変ですね・・・」


「そうだな。」


「卓人くんは、一生懸命ですから〜」


(一生懸命・・・なのか?)


EPISODE3:よく分からない部活END

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