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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第弌章:孤高のブレードマスター
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EPISODE18:嵐のような先輩

朝食を食べ終えアクアと共に、学校に行くための最寄りの駅へと歩いていた。


「せんぱーい!」


可愛らしく聞き覚えのある女の子の声が後ろから聞こえ俺はそちらの方に振り向く。すると、そこには、こちらに小走りで走ってくる月美ちゃんの姿があった。


「おはようございます。先輩。アクアさん。」


「おはよう月美ちゃん。」


「うむ。おはようツキミ。」


お互いいつも通りの挨拶を交わし合い歩き始める。


「そういえば、先輩・・・」


月美ちゃんが疑問気に口を開く。


「昨日、先輩達と一緒に帰ってましたよね?」


「えっ?」


・・・少しまずいな。空間を転移させられたなんて言ったら、月美ちゃん絶対に混乱するだろう。


「な、何を言っているのだツキミ!あの後ツキミは用事があるから、先に部屋に帰ると言って走って行ったではないか。」


あたふたと焦りながら、アクアは月美ちゃんにそう解釈した。


「そ、そうだったですか?」


「う、うむ!そうだったぞ。」


「ん〜・・・言われてみれば、そうだったような気もしますね・・・」


あれ?誤魔化した解釈をしているのに、疑うどころか、信じきってる・・・


(実はだなユウキ。あの後・・・)


-回想-


『せ、先輩にアクアさん!?い、いきなりいなくなりますから、何があったのか心配で・・・!って先輩ボロボロじゃないですか!』


『あ、あのだな・・・』


『も、もしかして、不良に絡まれたとかじゃあ・・・』


『えっと・・・』


『月美・・・』


『はい・・・?』


ローナは月美のおでこに指でツンと突つく。


『ふにゃ・・・』


そして、月美はいきなり床へとふらつきながら、倒れていきローナは彼女を受け止める。


『な、何をしたのだ?ローナ。』


『少し・・・眠らせた・・・』


『眠らせた?』


『うん・・・明日になったら、今日の事は夢だったと思ってる・・・はず。』


『は、はず・・・?』


『もし月美が今日の事を聞いてきたら、上手く誤魔化してね・・・』


『う、うむ。ありがとうローナ。』


『どういたしまして・・・』



(そんな事が・・・)


帰ったら、ローナにお礼を言わないとな。


「ん?」


駅前辺りに着くと、駅に取り付けてある大型モニターには小さな女の子が曲に合わせながら、歌い踊っている姿が映し出されている。


「そういえば、今日はMIK@ちゃんの新曲の発売日でしたね。」


「MIK@ちゃん・・・」


確か今アキハバラで人気爆発中のアイドルだったか。


「凄いですよね。私より小さいですのに、同い年でアイドルですよ?憧れますよね・・・」


「月美ちゃんはMIK@ちゃんのファンなんだな。」


「はい。CDは一応、全部集めてますけど・・・今日の特典付き限定版は諦めないといけませんね。」


「あー・・・浩二がなんか"限定特典付きだから、買いに行くぜ!"とか言ってたのは、それの事だったのか・・・」


「学校サボる気ですね・・・」


今アキハバラのアニメショップなどに行ったら、凄い行列が出来てるんだろうな・・・ん?


(よく見れば、あの顔・・・)


この前アクアと一緒に初登校した時にぶつかった女の子だ。


「ユウキ。あの人物・・・」


アクアも見覚えがあるようなので、間違いないかな?


「せ、先輩?もしかして、MIK@ちゃんと会ったことがあるのですか!?」


「い、いや・・・会ったというより、見たという方が近いかな?」


「う、羨ましいです・・・」


頬をプクッと膨らますかのように、不機嫌な表情をする月美ちゃん。


「と、とりあえず、学校に行こうか・・・遅れたらいけないしな。」


「誤魔化しましたね・・・」


俺・・・何か悪いこと言ったかな・・・



午前の授業を終え昼休みに突入した。


「いやー・・・まいったぜ。朝の6時からずーっと並んでたのにさぁ。全く列が進まないもんだから、びっくりしたな。」


「ああ。おかげで、補習週間くらっちまったな。」


「自業自得だろうが・・・」


てか、卓人もいたのかよ!


「あんた達も反省しないもんかねー・・・」


「無理無理。浩二に関しては、もう手遅れだからね〜・・・」


「何で俺だけなんだよ!?」


なっちゃんとミーちゃんも呆れた様子で二人を指摘した。ミーちゃんに関しては、浩二限定になってしまっているが。


「さすが師匠!授業をサボるのを恐れず、戦場に行きますとは・・・」


「おう。手本にしろよ。」


「イエッサー!」


「「駄目だろっ!!」」


俺となっちゃんは同時にツッコミをいれてしまう。


「どうですか?アクアさん。」


「う、うむ。中々美味しいものだな・・・この"らめーん"というものは。」


「らーめんですよアクアさん。」


「う、うむ。」


こっちは、和ましい会話だ。


「あっ!優希くん?」


「ん?」


すると、唐突に誰かに名前を呼ばれる。俺を呼んだ声がした方向に向くとそこには、クラスメイトの女子生徒がいた。


「この前の依頼ありがとうね。お礼と言ったら、あれなんだけど・・・」


手渡されたのは、白く細長い紙皿の上に乗せられた8個入りのたこ焼きだ。


「優希くん。この食堂のたこ焼きが好きって聞いたんだけど・・・」


「おおっ!ありがとうな。!結構人が並んでたから丁度良かったよ!」


「うん。また、何かあったら、よろしくね!」


「おう。」


クラスメイトの女子からたこ焼きを受け取る。


「モテモテだね〜優希くん?」


「何がだよ・・・」


なっちゃんがからかい気味な笑みをしながら、ふざけた。


「どんな依頼だったのですか?」


「えっと・・・ほら、よく猫の捜索依頼くるだろ?」


「あー・・・えっ!?あの方が依頼人だったのですか!?」


そっか。月美ちゃんは知らなかったけな。


「ケイちゃん猫好きだからね。確か20匹飼ってるんだっけ?」


「に、20匹ですか!?」


俺も最初聞いた時は、驚いたな。


「っで?その猫は何処にいたの?」


「確か・・・野球練習してる川の"小島"だったか。」


「よくそんなところに行けたわね・・・」


「まあ・・・依頼だからな。」


ちなみに、"小島"とは川の真ん中にある砂利しかなく盛り上がった場所だ。


「あら?みんな珍しく揃ってるじゃない。」


トレーを持ち歩いてきたのは、エリーさんだ。


「丁度いいわ。みんなに重大発表があるわ。」


(重大発表?)



「「「「が、合宿!!??」」」」


「何でそんなに驚くのよ・・・」


驚かない方がおかしいですって・・・


「いきなりすぎっすよ!普通なら夏休みに入ってやるもんっすよ!?」


「そうなんだけど・・・3日後何があるか分かる?」


「3日後・・・あっ。」


「学園長の休暇祭・・・」


学園長の休暇祭とは俺も詳しくは分からないんだが、5月の末近くに毎年行う4日間の休みだ。その日学園長が外国に出張するための理由だとか・・・最初聞いた時は、この学園大丈夫なのか不安だったけど。


「その4日間を利用して合宿を行うのよ。」


「ちなみに、目的は?」


卓人がストレートに問いかけた。


「もちろん、野球よ!」


「俺たちは甲子園を目指す野球部じゃないんだがな・・・」


「別にいいじゃない。思い出作りの一環として。」


何か無茶苦茶だなぁ・・・


「別荘の手配は私がもう済ましてあるわ。海もあるし、グランドもあるし、いろいろあるわ!」


「さ、さすがエリーゼ先輩・・・」


「伊達じゃないね・・・」


「てか、まだ5月だし。海入れねーじゃん。」


浩二よ・・・余計な事を言うのは、抑えた方がいいと思うぞ。


「そういうと思った・・・実は、室内プールもあるのよね・・・」


「ぶっ!?」


浩二が吹いた。


「全くお父さんったら・・・あまり大きな場所じゃなくて、いいって言ったのに・・・」


「お父さんすげーな!」


確か何処かの大手企業の社長さんをやってるんだっけ・・・


「とにかく、合宿を行うのは、決定だから。」


「本当に無茶苦茶な部長だな・・・」


「でも、楽しそうじゃない。」


なっちゃんがニカっと笑いながら、そう言った。


「だけど、夏海。私達初日だけ部活あるじゃない。」


「あっ・・・」


完璧に忘れてたなこのエースは・・・


「も〜・・・何で休暇祭なのに、部活なんてあるのよ!」


「夏海・・・エースがそれを言ったら、ダメでしょ・・・」


ミーちゃんがやれやれと言わんばかりに呆れながら、そう言った。


「別に部活終わってから、来てもいいのよ?お父さんに頼んだら行きの電車の席は簡単にとってくれるわ。」


「あはは・・・」


「本当にエリーゼ先輩って・・・」


(おっかないな・・・)


改めてそう思った。


「とにかく、全員参加だから、覚えておいてね?特に卓人は。」


「何故俺だけなんだ?」


「何故って・・・あなたが一番サボりそうだからよ。」


「っ・・・」


反論できないということは当てはまってることだな。


「それじゃあ、私は教室に戻るわね。」


エリーさんはトレーを両手で持ち食器の返却口へと持ち運び食堂から去って行く。


「何だか嵐が通り過ぎたみたいな後だな・・・」


「全くだ・・・」


「はあ・・・3日後には休暇祭もあることだし、詳細はエリーさんからメールで来るだろうな。とりあえず、みんなは準備をしとくのを忘れずに。」


そうみんなに呼びかけ残り少ない昼休みを食堂で過ごすのだった。


EPISODE18:嵐のような先輩END

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