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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第零章:騎士の目覚め
17/20

EPISODE16:Awakening of the knight

「いつっ・・・!」


10秒も経っていないついさっきの事だ。フードコートを被った謎の少女に自分の決意を語ると魔法によって一瞬で転移させられる。転移した瞬間身体が慣れてなかったためか、大胆に尻餅をついてしまう。


「ここは・・・」


大体察しはついている。


「アキハバラの裏通りか。」


あの少女はアクアはアキハバラにいると言っていたのを思い出す。


(アクア姫はアキハバラの中央通りにいるはずです。)


「中央通りか。ここからは、すぐそこだな。」


俺は立ち上がり周りの状況を確認する。


「うっ・・・」


一時、目眩がおこりふらっとよろけてしまう。何とか踏ん張りを利かし体勢を保つ。


(あの男・・・魔素が何とかって言ってたな。)


もしかして・・・という模索は今はやめておいた方がいいだろう。とにかく、今はアクアを助ける事に集中しないと・・・


俺はアクアがいるはずの中央通りに向かって走り出す。



中央通りの付近にやって来ると誰かの話し声が聞こえてきた。すると、目の前には斜め上に向き何か話いているアクアの姿があった。今すぐにでも、彼女の元へと向かいたいが、俺は一度立ち止まり近くに止めてあった軽トラックの後ろに隠れる。


(よく考えろ・・・今出たら、アクアに危険が及ぶかもしれない・・・)


今の状況も危険かもしれないが、あの冷静な男は、"俺"に対しては、かなりの敵対心があった。それに"無駄な犠牲は出したくはない"と言い出したのは、あっちの方だ。俺がでばらない限りアクアには危害は加えないはず・・・


(もし奴がアクアに攻撃してきたら・・・)


可能性はありえる・・・


俺には魔法は使えない。

だけど、そんなのは、関係なかった。


たとえ、魔法が使えなくても、身体を張ってでも、彼女を守りたい。


「その時は・・・覚悟しないとな・・・」


一度思考をまとめるのを止め彼等の話に耳を傾ける。


「ふざけるな!それでは、ただの支配ではないか!」


「受け止め方は、人自由だ。少なくとも、イザールの方はな。」


「アスティールも全員は納得してないだろう・・・」


「ああ・・・今や我がアスティール西側では抵抗軍が結成されたようだ。愚かな民衆もいたものだ。」


「愚かななのは、お前達の方だと思うが。」


「ふっ・・・イザール人は皆無駄な正義感というのがあるらしいな。」


男は、正義そのものをあざ笑うかのように語り出す。


「アクア嬢・・・お前の祖父母には我がアスティールを困らせたものらしい。独立戦争などと無駄な事を起こ我がアスティールの領土を奪い取り見事独立を果たした。ふっ・・・忌々しい。」


「領土?領土だと!?元はお前達アスティールが攻め入り勝手に支配しただけだ!」


「だからどうした?支配すれば、その時点で我が国の一部となる。今の戦争はその報復を果たしたにすぎない。」


男はアクアを挑発するかのように、あざ笑う。


「さて、本題に戻ろう。アクア嬢・・・降伏しろ。」


「・・・断る。」


「無理な意地はよくないな・・・」


「お祖父様とお祖母様が守って来た土地だ。お前達に屈服するくらいなら私は死を選ぶ。」


「・・・そうか。答えが聞きて良かったよ。ククク・・・」


いきなり男の様子が変わった。さっきの冷静な口調とは違い今は殺意に満ちた声だ。


「主には降伏を断った場合。"殺せ"との命令がある・・・」


「ッ・・・!?」


「身構えても無駄だ。お前はさっきの男に魔素処置の魔法を使っているはず・・・いくらここの魔素濃度が高くても防御系の魔法を使う気力はないはずだ。」


「くっ・・・」


アクアの様子をよく見ると、額から汗が滲み出ており、立ってるのがやっとという状態だ。


「残念だよ・・・アクア嬢。素直に降伏していれば、イザールの行先も見れていただろうに・・・」


男がアクア目掛けて指差す。


(まずい・・・!)


あの構えは俺に放って来た魔法と一緒のものだ。


「アクア!」


「ユ、ユウキ!?何故ここに・・・ッ!」


気がついたら俺はアクアの方に駆け寄っており、彼女を突き飛ばしていた。


「貴様・・・!」


刹那。俺の身体に何かが突き抜けるような感覚が全身に走る。


「がっ・・・」


そして、ジワジワと伝わってくる痛み・・・口の中には血がたまり吐血してしまう。左手を違和感がある右胸当たりに触れるとドロッとした感触がある。触った左手をゆっくり見てみると大量の血がこびりついた。


「ユウキ!!」


彼女の声が聞こえた途端俺は地面に膝をつきそのままうつ伏せに倒れる。


「うっ・・・ッ・・・!」


さっきの痛みが嘘のように感じず、ただ、呼吸をするのがやっとだ。だけど、その呼吸も思い通りにいかず、意識が朦朧としている。

額には何か生暖かいものが塗れる。すると、ぼやけている視界に映ったのは、赤い液体だ。


(血・・・)


ああ・・・出血している自分の血が流れて来たんだと実感する。


「ユウキ!!」


アクアが駆け寄って来たのか血を踏みつけたような音がすると、俺を仰向けに向け涙目になりながら、こちらを覗き込む。


「何故・・・何故私の元に来たんだ・・・」


何か言葉を返そうと思ったが、上手く口が動かない。


「ここに来なければ・・・お前は・・・」


「言うな・・・」


残された気力を振り絞りかすれながらも、何とか声を出す。


「ユウキ・・・」


「前にも言ったろ・・・アクアが・・・自分の世界に帰れるまで面倒みるって・・・ッ・・・」


「ユ、ユウキ!それ以上喋るな!血が・・・」


やばい・・・目の前が暗くなってきた・・・

周りの音やアクアの声も聞こえなくなる。優位つ聞こえるものは僅かに自分の呼吸音が聞こえるくらいだ。


(俺は・・・死ぬのか・・・)


こんなに血を流してるんだ・・・死ぬのも当たり前か。


「死なないでくれ・・・ユウキ・・・」


微かな視界の中。アクアの目からは涙が溢れ出し頬を伝いポタポタと俺の顔へと流れ落ちているのが見えた。


(何で泣いてるんだよ・・・)


アクアの泣く姿を見ないために俺は・・・


(・・・バカだな・・・俺は・・・)


普通に考えたら、分かっていた事だ。あの時も確かアクアが俺に言ってた。


"私をかばってもユウキが怪我をしたら、意味がないではないか!"


(・・・何カッコつけてるんだよ俺は・・・)


言ったことが違うくても意味は同じだ。自分を犠牲にして大切な人を守る・・・アクアは自分がいた世界で何度も見てきたはずだ。

なのに、俺は・・・それを繰り返してしまった。


「何故・・・皆私の為に死んで行くのだ・・・」


「愚かな奴だ・・・身をはって守ろうとするのは、バカがやる事だ。」


「貴様・・・」


「何、正論を言ったまで・・・戦場で他人を守ろうとするのは、無駄な正義を持った者だけだ。貴様の膝もとで血を流し無様に倒れてる者がいい例だ。」


男は、空間からレイピアの様な剣を召喚させアクアの目の前までやって来る。


「次はこの手でお前を葬ってやる。・・・安心しろ。イザールの行く末は我が主が望む形へと導いてくれるだろう。」


「くっ・・・」


剣をゆっくり振り上げアクアに振りかざす体勢に入る。


(アクア・・・!)


ダメだ。このままだとアクアが殺される!


(誰かが殺される可能性は絶対に見たくない!)


俺は・・・


"優希さん・・・諦めないでくださいね。"


諦めるな・・・


何故かこの言葉だけ脳裏に響いた。


「さらばだ・・・アクア嬢。」


迷いもない殺意だけがこもった男はアクア目掛けて剣を振るった。

アクアも死を覚悟したのか目をつむる。


「・・・!」


・・・どういう状況か最初は理解できなかったが俺は一瞬で思考がまわりだし、今自分がとった行動を知る。


「何故だ・・・」


目の前には男の青ざめ仰天とした様子で俺を見ている。そして、自分の左手には男が振った剣の手首当たりを掴んでおり、プルプルと震えている。どれだけの力で剣を振ろうとしたのかが身体全体を通して伝わってくるのが分かる。


「貴様・・・何故・・・何故立ち上がれる!それに・・・その眼は・・・!」


「言いたい事はいっぱいあるけど・・・な・・・」


「ユウキ・・・?」


右手に震えるくらい力を入れる。


「とりあえず、一発殴らせてくれ・・・このクソ野郎・・・」


渾身の力を込めた右手で男の横面を思いきり殴った。


「ガッ・・・!?」


予想以上に吹っ飛び自分自身で驚いてしまうがそれ以上に殴った力だけ傷にフィードバックしかなり痛い。


「うぐっ・・・」


傷から血が吹き出し思わず、膝をつく。踏ん張りが効かず、地面に倒れそうになるが。


「ユウキ・・・!」


駆け寄ってきたアクアに支えられ彼女を見つめる・・・


「はは・・・死んだ人が生き返ったみたいな目で・・・見るなよ・・・」


「それ以外・・・何があるというのだ・・・」


根本的にはまだ死んではいなかったけど・・・


「・・・ユウキ。その目。」


「目・・・?」


あの男も殴る前に言っていたが、目が何だ?


「"蒼聖の眼"・・・」


そ、蒼聖の眼・・・?


「そうか・・・ユウキが・・・」


「アクア・・・さっきから・・・痛っ!?」


すると、アクアは支えになっていた腕を崩しペンダントをとるかのように、首回りにかけていたチェーンを外す。


「これは・・・」


アクアが胸元から取り出したのは、青い輝きを放ち五角形で一握りのサイズをした宝石の様なものだ。以前アクアと始めて出会った頃に一度見せてもらっている。


「これは私の家系から代々つながる物だ。名前は聞かされていないが、魔力の塊と思ってもらった方が分かりやすいな。」


「魔力の塊・・・」


「私がこの世界に来て使っていた魔法はこれから全部供給していた・・・」


「それって・・・ッ・・・!」


声を出した瞬間吐き気が伝わり思わず、吐血してしまう。


「と、とにかく、これを受け取ってくれ!」


「ッ・・・だ、大事な物なんじゃ・・・」


「ユウキが助かるならそれでいい!」


「お、おい・・・!」


アクアは両手でその宝石を押し込むかのように渡してくる。

いきなり渡されても、どうすればいいんだ・・・


(・・・元々はお祖母様が言い伝えとして預かったものだ。それが今やっと・・・)


「・・・!?」


瞬時、宝石から青い閃光が走る。


(これ・・・アクアが魔法を使った時と・・・)


光のせいで、細めになってしまうがよく見ると、アクアから渡された宝石は青い炎に包まれ散りじりと消えていくのが見える。


(どうなって・・・!)


すると、放っていた青い光が消え手で持っていた宝石の感触は完全になくなっていた。


「ん・・・?」


すると、胸辺りに何か違和感を感じ目で追いやると・・・


「うわっ!燃えてる!?」


私服越しから青くロウソクのようにゆったりとした炎が付着し燃えているのが見える。しかも、以外に熱い。


「お、落ち着け、ユウキ!」


そんな事言われましても自分の身体が燃えてる姿を見ると、落ち着けるわけがない。


(あれ・・・?)


よく考えると、炎が燃えてる場所は、さっき男から撃たれた場所だ。熱さは伝わってくるが痛みは伝わってこない。


「これは・・・」


「だから落ち着けと言ったのだ。」


「わ、悪い・・・」


アクアにそう一括され少し落ち着きを取り戻す。


「ユウキ。事情は後で話す。今は・・・」


「事情は後で・・・だと?」


「・・・!?」


男を殴り飛ばした方を見ると、フラフラと立ち上がっており、口から流れ出ていた血を服の袖で拭き取る。


「ふざけるなクソガキ共が・・・お前らに後もない。今ここで葬ってやる!」


「ッ・・・」


なんて殺気だ・・・

離れていても、空間から振動が伝ってくるように身体全体で感じ取る。


「ユウキ。今のお前なら"剣"を出せるはずだ!」


「"剣"?」


「以前私が銃を出した時と同じやり方だ!お前の利き手に"剣"をイメージさせ具現化させて出すんだ。」


「させるか!!」


男は、レイピアを下向きに構えホバー移動するかのように、こちらに急接近してくる。どうやら、もう戸惑ってる暇はなさそうだ。


("剣"を利き手に持ってるイメージを想像し具現化・・・)


・・・具現化ってどうやんるだ?


「死ね・・・」


「ああ、もう!どうやるかしらないけど、とにかく、出ろ!」


どうなるかは分からなかったが、俺は剣を持ってるイメージを持ちながら、右手を翳した。


-カキンッ!!-


耳には金属がぶつかったような甲高い音が鳴り響き翳した手から身体全体に強い衝撃が伝わってくる。


「これは・・・」


驚く事に俺の右手には刀のような細長い刃の中子(※剣を持つ部位)を握りしめ男の斬撃を受け止めていた。


「聖剣だと!?」


男は、度肝を抜かれたかのように驚いていた。

だが、動揺はしているも競り合いの力は抜かず、一瞬でも力を抜いたら、俺めがけて振りかざされるだろう。


「ッ・・・!」


俺も負けずに押し返す。


「貴様・・・いつから"騎士"に目覚めていた・・・」


「知るかよ・・・」


「何故貴様の様な貧弱な人間が"騎士"になれる!」


「だから・・・知らねーって・・・言ってるだろうが!!」


「!?」


俺は持っている限りの力を振り絞り剣を振るった。すると、剣はオーラのようなものが発し斬撃音と同時に衝撃が伝わってき振るった俺まで後ろへと吹き飛ばされる。


「ととっ!」


何とか踏ん張りを気かし地面に倒れるのを防ぐ。

前を見ると、男は、殴った時よりさらに後ろへと飛ばされていた。


「ガハッ!?」


男が持っていたレイピアのような剣は真っ二つに折れ胸元には切り傷が刻まれ血が出ている。


「はぁ・・・はぁ・・・うっ・・・!」


(何だ?一瞬視界が暗くなったぞ・・・)


さっきの瀕死状態といいよく分からない魔法と剣・・・まさか、体力が消耗してるのと力の使いすぎか?


「・・・この俺が・・・覚醒したばかりのクソ騎士に・・・傷を負わされただと!?」


「・・・!」


俺は咄嗟に剣を構えた。

何か・・・嫌な予感がしたからだ。


「殺してやる・・・見る影もなく・・・!」


男は、腕を伸ばし魔法陣を展開させた。


「次こそ、死ねぇぇぇ!!」


魔法陣から光が放った瞬間だった。


-パリンッ!!-


「なっ!?」


すると、魔法陣は鏡が割れたかのように粉々に砕ける。


「ふっ・・・!」


「ちぃっ!」


すると、男の目の前に黒いフードコートを被った小柄な身体をした人物が表れる。その人物は表れるなり男に持っていたナイフのようなもので攻撃をした。


「あの人・・・」


一瞬あの謎のフードの女の子かと思ったが、よく見て見ると、さっきと雰囲気と衣装のデザインが違うのに、気づく。


「貴様・・・アサシンか!!」


アサシン?まさか・・・!


「ローナ!?」


「呼んだ・・・?」


「ぐはっ!」


ローナと思われしき人物は男をドロップキックで蹴り飛ばすと空中で一回転し見事両足で着地。


「おお・・・」


「ダーリン・・・遅れてごめんなさい。」


その人はフードを取ると見覚えがある顔を表す。


「ローナ・・・」


「ん・・・」


「助かったよ・・・」


「・・・うん。」


相変わらず無表情だが、少し照れてるようにも見えた。


「魔素濃度を低下させるのに、時間がかかった・・・」


「なるほど・・・」


「納得・・・?」


「あ、ああ・・・一応な。」


続かない会話だったが、俺にとっては、安心できるものだ。


「ダーリン。アクアをお願い・・・こいつは私がやる。」


ローナは蹴り飛ばした男の方に振り向き腰に装備しているもう一つのナイフを取り出し持ち構える。


「・・・やってみろ。アサシン風情が・・・!」


「・・・」


(うっ・・・)


ローナの雰囲気が一気に変わる。何だかそばにいるだけで凄く寒い・・・


(ローナの殺気・・・)


暗殺者・・・アサシンなのも納得できる。


-パァンッ!パァンッ!-


「!?」


睨み合っていた両者の間に何かが弾けるかのように、地面には何かがめり込んだかのような後ができている。


「はーい・・・そこまでですわ。」


女性の声だ。それも上からしたような・・・


「ダーリン、アクア、下がって・・・増援・・・」


「あら?私は増援に来たのではありませんわよ?」


上の何処からかは分からないが、すたっと男の前に誰かが着地しこちらを見ている。


「くっ・・・邪魔するなリュドミラ!」


「邪魔も何も。あなた様のそのダメージではあの娘には勝てませんわよ?何せ殺しのプロみたいですし・・・」


「うるさい・・・!」


「冷静に見えましてもカッとなるのがあなた様の悪い癖ですわよ?」


「ちっ・・・!」


「それに・・・私は興味深いものも見れましたし・・・」


「お前・・・ずっと見てたな!?」


「さあ?どうでしょう・・・ふふ。」


女性はクスクスと男をバカにするかのように、笑う。


「お前・・・フレイムマスター・・・リュドミラ!」


「あら?イザールフォルティッド領の姫様が私の名前を覚えてくださっているなんて光栄ですわ。」


女性は一歩前に出て頭を浅く下げた。


「改めまして、リュドミラと申します。"フレイムマスター"とも呼ばれていますので、どうぞお見知り置きをお願いしますわ・・・"ナイト"様?」


「なっ・・・」


「ふふ・・・何かお間違いでも?」


「いや・・・」


何だ・・・一瞬だが、冷たい手で心臓を掴まれた様な寒気が襲った。


「行きますわよ。」


「・・・ああ。」


リュドミラと名乗った女性にそう言われると男は、気のらなさそうに返事を返し立ち上がる。


「この傷の礼はいずれ返してやろう・・・」


「俺の傷の礼はさっきかえしたけどな。」


「貴様・・・」


男は、少しイラっときたのか俺を睨みつけた。


「では・・・また会う日まで腕をあげてくださいまし、"ナイト"様。」


(出来れば、もう会いたくないんだけどな・・・)


闇の中に消えていく彼等を見ながら、心の底から思ったのであった。



先の戦闘から数十分。フィールドの効果が切れる前に俺とアクアとローナはアキハバラから苗宮荘まで徒歩で移動する事になった。徒歩の理由は、特定の人物しかこのフィールド内で活動できないらしいので、俺たち以外誰も居なく優位つの交通手段である電車が動いていないからだ。


「頭がクラクラする・・・」


「大丈夫?ダーリン・・・」


「大丈夫・・・と言いたいけど、早く帰らないとまずいな・・・」


眩暈も酷くなってきてるような気もするし・・・


「ユウキ・・・」


「・・・その前に、アクアには説教をしないとな。」


「・・・」


俺は隣にいたアクアのおでこめがけて・・・


-パチンッ-


「ひゃうっ!?」


デコピンをかました(軽く)


「な、何をするのだ・・・!?」


でこをさすり、うるっとした目でこちらを見ながら、アクアはそう言った。


「心配かけた罰だ。」


「なっ・・・」


アクアの顔はみるみる火照っていき。


「ユ、ユウキも死にかけだったくせに、人の事が言えるのか!?」


「うっ・・・」


ごもっともなことを言われ俺は何も言えなくなってしまう。


「私も・・・凄く心配したんだ・・・」


「・・・」


「・・・」


少し微妙な空気が流れしばらく沈黙の時間が続いた。風は流れているが、生暖かくとても落ち着けるものでもなかった。空や街の雰囲気が不気味なせいでもあるが。ローナはローナで場を掌握してるのか黙って俺たちの方を見て様子を伺っており、それも何だかプレッシャーがかかり気まずい。


「すまないユウキ・・・」


そんな空気の中最初に言葉にしたのは、アクアの謝罪の言葉だった。


「お前を私達の問題で巻き込んでしまった・・・こんな・・・つもりではなかったのに・・・」


罪悪感を感じているのかアクアの声は震えており、弱々しいものだった。


「やはり・・・私は・・・疫病神だな。私がいる所誰かが必ず傷付く・・・今までも・・・これからも・・・」


「何が言いたいんだ?」


「私は・・・お前の・・・いや、みんなのそばにいない方がいい・・・だから私は・・・!?」


-パチンッ!-


さっきより力を強くしアクアのおでこにデコピンをかました。


「〜〜ッ・・・」


アクアはその場に膝を曲げデコピンをされたおでこに手で抑える。


「アホなこと言うな。」


「ユウキ・・・!?」


「だから前にも言っただろ。アクアが自分の世界に帰れるまで面倒見るって。」


「・・・!」


「だからもう自分がいない方がいいだなんて言うな。今のお前の居場所はあるんだからさ。」


「・・・ダーリンの言うとおり。」


「・・・ああ。」


アクアはホロリと涙を流す。


「うっ・・・」


「ユ、ユウキ!」


ふらついた身体をアクアに支えられる。本当ならドキッと動揺してしまうかもしれないが、疲労がピークに達しているせいか、何も言えない。


「早く魔素区域から出よう。このままだとユウキが危ない。」


「分かった。」


ローラにまで身体を支えられ流石に気まずいがここから出るにも彼女達の行動の方が効率がよく俺は場に身を任せる事にする。


(早く帰ろう・・・)


その先の言葉を考えつく前に俺は視界が闇に包まれ浅い眠りにつくのだった・・・


EPISODE16:Awakening of the knight ... END・・・


第零章:騎士の目覚めfin...


-continued to the next chapter...-

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