EPISODE13:休日
土曜日の朝。アクアとローナでアキハバラに行く事になった。アクアにその事を知らせ最初は不機嫌な表情をしたが、ローナが友達になりたい事を言うと、少しだけだが、表情が和らいだ。まだ警戒は解けてないだろうが・・・不安が残る中ローナと苗宮荘の門前で合流しアキハバラへと向かう。トラブルは怒らないだろうかと心配したが、街へと着きゲームセンターに行くと、そんな心配は不要だったようだ。
「な、なんだ・・・この白と黒のクマは・・・可愛いすぎる・・・」
「アクア・・・こっちにも可愛いのがいる・・・」
「・・・カ、カピバラというのか・・・中々可愛いものだなローナ。」
「う、うん・・・」
ご覧の通り、もう仲がいい友達に見える。
「ユウキ。これはどうしたらいいのだ?」
アクアとローナが興味を示していたのは、UFOキャッチャーだ。
「えっと、ここに100円を入れて。」
せっかくなので、取れなくても、やり方を教えるためお金の投入口に100円玉を入れる。すると、機会から音がなり作動する。
「まずは、左のボタンで横移動させて・・・次に、右手のボタンで縦移動すると・・・」
ボタンを離すとクレーンは緩やかな表情をしたカピバラのぬいぐるみに向かって降りて行く。
「おっ・・・」
クレーンは見事カピバラのぬいぐるみをキャッチし持ち上がっていく。
「あれ?」
すると、ぬいぐるみのチェーンに何かが引っかかっている・・・クレーンが元の高さにまで戻り姿を表したのは・・・
「白い・・・カピバラ?」
狙ってたカピバラと同じく、緩やかな表情をした白いカピバラだった。すると、景品を落とす穴にすっぽり入り下に落ちてくる。
「こ、これは・・・?」
「おめでとうございますお客様!幻の白いカピバラ様をGETです!」
「幻の白いカピバラ様!?」
店員が指を指したポスターを見ると・・・
「幻の白いカピバラ様登場。取れる確率は1/1000です・・・」
「そう!幻の白いカピバラ様です!」
「「「「「おぉーー・・・!!」」」」
見ていたギャラリーが全員拍手をしている。
「ユ、ユウキ?これは、すごい事なのか?」
「らしいな。」
「さすがダーリン。」
UFOキャッチャーはあまりした事がなくこの状況は少し気まずいな。何たって自分が一番驚いてる。
「はい、チーズ!」
カシャッ!
って・・・いつの間にか、写真撮られてる!
「はい、どうぞ〜」
店員さんから撮ってもらった写真の一枚を渡される。
「す、凄いぞユウキ!私達が写ってる!」
「バリアフール大陸の隅々まで探してもここまで早く書ける人はいない・・・」
「カメラだからな・・・」
彼女達にとっては、珍しいんだろう・・・だけど、はっきり声で出して言われると周りのざわざわっとした声が恥ずかしくなる。
「ほ、ほら。景品も取れた事だし、次行くぞ、次。」
「そうだな。」
「他にもあるかもしれない・・・」
・・・今日は少しお金がかかるな。
※
お昼になりお腹も空いてきたということもありとあるフードコーナーへとやって来た。
「ユ、ユウキ・・・これは一体なんだ?」
「たこ焼きだよ。」
「こっちは・・・?」
「そっちはお好み焼き。」
「どっちも・・・」
「聞いた事がない名前・・・」
日本の食べ物だから聞いた事もないのも当たり前だろう・・・特に異世界からやって来た人にとっては、不思議なものなんだろうな。
「両方とも熱いから気をつけろよ。特にたこ焼きを食べる時は・・・」
「・・・」
アクアが涙目になりながら、プルプル震えている。どうやら、遅かったようだ。
「だ、大丈夫かアクア!?えっと・・・水は・・・」
「ウマイぞ!」
「そっちかい!」
熱くて辛い表情になってたと思ったけど、予想外に"熱い"の一言なしに"上手い"と言ってきた。
「な、何なのだ!?これは・・・料理の革命ではないか!」
「いや、流石に大げさだろ・・・」
「こっちも中々美味しい・・・」
ローナもお好み焼きの熱さ関係なしにリズム良く食べていく。もしかして、彼女たちの世界の人達は熱い食べ物に強いのか?
「結構な・・・腕前で・・・」
ローナは半分になったお好み焼きをスッと俺の方に差し出す。
「いやいや・・・俺が作ったんじゃないからな?」
「そうなの・・・?」
「そう。」
神谷と違った天然さに俺は驚かされる。
「ダーリンは・・・食べないの?」
「俺は今お腹空いてないからさ。後でいいよ。」
「では私の、この・・・タコヤキ?を食べるといい。」
アクアは爪楊枝で刺したたこ焼きを俺の口元へと運んでくる。
「いや、あの・・・」
「どうした?食べないのか?」
食べないというか、食べずらいというか・・・周りの目線が凄く気になるんですけど・・・それにそんな熱々な物を丸ごと食べたら火傷するぞ。
「ダーリン・・・私のも食べるといい・・・」
ローナも箸に慣れてるのか器用につまんだ一口サイズのお好み焼きをアクア同様俺の口元へと運んでくる。
「さあ、ユウキ・・・」
「早く食べる・・・」
まさか二人とも・・・たこ焼きとお好み焼きの熱さを理解して楽しんでるんじゃないだろうな?
※
-中央通り-
「うう・・・あひゅい・・・」
「そんなに熱かったのか?」
「ダーリンは熱がり・・・」
「熱いに決まってるだろ?逆にアクア達が平気なのが不思議だよ・・・」
「そうか?バリアフール大陸に住んでる物は皆平気だぞ?」
やっぱり?
「ダーリン・・・次は何処に行く?」
「そうだな・・・ローナのアルバイト探しをするか?」
「分かった・・・」
「いいのかよ。」
冗談で言ったつもりはなかったけど、即答でOKだったのが思ってなかった。
「アクアもそれでいいか?」
「ああ、構わないぞ。私は街を見てるだけでも、楽しいからな!」
笑顔でアクアはそう答える。その笑顔で男女関係なく、道行く人達がどれだけ見惚れたことだろう・・・さすがお姫様と言うか。
「ヒュー。お嬢ちゃん達可愛いねぇ。」
その時俺の後ろからチャラそうな声が聞こえたので、振り向く。
「おうおう、彼氏付きかよ・・・まあ、関係ねぇけどな。」
「そんなチンケな彼氏なんてほっといて俺達と遊ばね?」
「断る。」
「「「即答!?」」」
チャラけた男性3人組は少しショックを受けたようだ。
「ダーリン・・・これはナンパというもの?」
「やり方が古いけど・・・そうだな。」
「誰がやり方が古いじゃボケ!」
「クソ・・・俺達を舐めてんだろ?」
「別に舐めたつもりはないんですけどね・・・」
「じゃあ、とっととお家に帰ってな。俺らは、お嬢ちゃん達と楽しーく遊んでるからさぁ。」
「な、何をする!」
男性の一人がアクアの腕を強引に引っ張る。
「ちょっと待て・・・」
俺はアクアを強引に引っ張ている男性の一人の腕を掴む。
「ああん?」
すると、男は、アクアの腕を離しこちらに振り向く。
「なーにヒーローぶっちゃってんの?」
「ヒュー。カッコいいねー!」
「はいはい・・・あんまり公共の場で騒ぐなって。」
「チッ・・・マジで俺らを舐めてんな。」
「少し・・・痛い目を見ねーと・・・分からねーようだなぁ?」
アクアの腕を掴んでいた男性がファイティングポーズをとる。あの構え方は、ボクシングをやっているな。
「だから公共の場で騒ぐなって・・・」
「ぐちぐちうるせーんだよ!」
「ユウキ!」
男性は一気に詰め寄り俺の顔目掛けて殴りかかってくる。当たったら凄く痛そうだ。・・・なんて思ってる場合じゃないな。ボクシングは格闘で攻めてくるだろうし相手の攻撃は早い。だけど、何故か今は何故か冷静でいられてる。
「オラァッ!!」
男性はストレートで殴りかかってきた。
「ッ・・・」
「はっ?」
一瞬だった。男は、宙返りし地面に落下。
「ガッ!?」
そして、相手の腕を押さえ骨が曲がる逆向きの方向にホールドさせる。
「てめぇ・・・何をっ!?」
「護身術を使っただけだって・・・!」
「いてててて!折れる!折れる!」
「心配すんな・・・折れないように手加減はしてるからな。」
「このやろ・・・!?」
2人目の男性が俺に突撃しようとした時だった。
「させない・・・」
「がっ!?・・・首・・・首が折れる!」
ローナはいつの間にか、男性の背後に回り込み慣れた動きで首を絞める。
「心配ない・・・殺さないように手加減はしてるつもり・・・」
「ってダメだろ!」
思わずツッコミをいれてしまった。
「テ、テメェら・・・」
「あれ?優希くん?」
「えっ・・・?」
何故か3人目の男性は華麗に宙を舞う。
「ガハッ!?」
「る、瑠美!?」
「珍しいね。優希くんが休日にアキハバラに来るなんて。」
瑠美は俺よりも、巧みに男性の腕をホールドさせ抵抗出来ないようにしていた。てか、動いたら、絶対に痛い。
「もしかして、メイド服着てくれる気に・・・」
「ならないから!」
こんな状況でよく言えるな。
「テ、テメェら・・・何をしたか分かってんだろうな!?俺らにこんな事してるとアニキに分かったからタダじゃ・・・!?」
「タダじゃなんだ?」
俺はホールドしてる腕をさらに骨が曲がる逆向きの方向に少し強めに傾ける。
「お、折れる!マジで折れる!」
「先にちょっかいを出してきたのは、そっちだろうが・・・」
「ひっ・・・」
「まあ、なんて言うか・・・多分、お前達のアニキは知ってる奴だから。」
「えっ?」
「お!お前ら・・・ここにいたか!」
ギャラリーを掻き分け出てきたのは。
「ア、アニキ!?」
「ん?お前ら・・・何してんの?」
髪はツンツンで薄オレンジ。服装もチャラケていて、薄いサングラスをかけた男性だ。
「聞いてくださいアニキ!こいつら・・・いでででで!」
「よう、鷹野。」
「お?おお!藍葉 優希じゃあねーか!久しぶりだな!」
「ああ。」
「それに・・・瑠美ちゃんも!」
「あれ?あ・・・こんにちはーご主人様♪」
おっ・・・瑠美のメイドさんモードだ。
「こんにちは、瑠美ちゃん。」
「今日はどうされましたか?」
「いや・・・瑠美ちゃんがどうしたの?」
「優希くんに迷惑かけてる人がいたから、成敗してるんですよ〜。」
「そっか〜・・・おいてめーら。」
「「「ひぃっ!?」」」
鷹野は狼が睨んだかのような目付きで男性3人を睨む。
「これはどう言う事だ?」
「えっと、あの・・・」
「ナンパしてまして・・・」
「喧嘩になりかけたと言うか・・・」
「てめーら・・・」
「鷹野。ここじゃ騒ぎになるからお仕置きなら目立たない所でやってくれ。」
これも充分騒ぎになってるんだけどな。
「そうだな。」
俺はホールドしていた男性の腕を離す。
「ローナ。もういいぞ。」
「分かった・・・」
ローナも首を締めていた男性を離した。
「ボクも離す?」
「当たり前だろ。てか、お前の技は特に痛いから早く離してやれ。」
普段はメイド服を着ておっとりしているように見えるが・・・ああ見えて護身術のスペシャリストでもある。俺の護身術も彼女から教わったものだ。無理矢理だった気がするけど。
「悪いなお嬢さん。こいつらが迷惑かけたみたいで。」
「い、いや、もう過ぎた事だから、構わない・・・」
「はは、そう言ってもらえると助かる・・・なあ?お前ら。」
「「「は、はい・・・」」」
顔色が青く、身体を震わせながら、3人の男性はそう言った。
「そっちのお嬢さんも迷惑かけたな。」
「気にしてない・・・」
「それと・・・優希も。」
「ああ。」
鷹野はにっこり笑う。
「えっと、お二人さんには自己紹介しといた方がいいかもな。俺は鷹野 智史だ。一応、AHO団っていう面倒い部活のリーダーをやってる。」
「面倒い部活じゃないっすよ!」
「面白い部活っすよ!」
「うるさい。黙れ。」
「「は、はい・・・」
そう。鷹野はエリーさんが敵対視しているAHO団の部長的存在だ。とは言っても別に仲が悪いわけじゃない。(エリーさん以外)
「改めて本当に悪いな。こいつら最近入ってきたばかりの生意気なアホ1年でな。」
「「「ウ、ウッス・・・」」」
「まあ、見ての通りヤンキーだし、アホだし、間抜けだし、本当にアホだし、短気だけど、許してくれねーか?中身はいい奴等なんだが・・・」
「ア、アニキ・・・」
「ボロクソすぎっすよ・・・」
「ああ?暴力振るっといて、てめー等に言い返せる権利が何処にあるんだよ?」
「あ、ありません・・・」
「すみませんでした・・・」
(なんで、先に暴力を振るってる事が分かったんだろう・・・)
「ま、まあまあ・・・このアホトリオも反省してるようだし、そのくらいにな。」
「「「アホトリオ・・・」」」
「何か文句ある?」
「「「あ、ありません・・・(恐ぇ・・・アニキ並に恐ぇーよ・・・)」」」
「ユウキも凄いものだな・・・」
「優希くん怒ってたら、雰囲気だけで圧倒できるほどだからね・・・」
「さすがダーリン・・・」
「別に怒ってはいないから。」
「はい。ツンデレいただきました〜。」
「ツンもしてないし、デレてもいなからな?」
彼らの絡み方に少しイラってきたのは、否定出来ないが。
「まあ、なんだ。野球試合楽しみにしてるからな。」
「ああ。」
「こっちも負ける気はないからって、部長さんに言っとけ。」
鷹野は二カッと笑いそう言った。
「おい行くぞアホトリオ。」
「「「へ、へい・・・!」」」
「ったく・・・前にも上級生に華麗にやられたばっかだろうが・・・」
鷹野がそう喝をいれ反対の方向へ歩き出す。アホトリオもビクビクしながらも、鷹野の後を追って行った。
「はぁ〜・・・疲れた・・・」
「悪い人達じゃなさそうだから、あまり気にする事はないんじゃない?」
「違う違う。久しぶりに護身術を使ったら疲れるなって・・・」
「あはは。あまり使う事ないからね♪」
「教えた本人がそれを言うか?」
「あは☆」
くっ・・・こいつのメイドさん笑顔フラッシュをされると不思議に何も言い返せないんだよな。
「ねえねえ。それよりさぁ・・・ボクのお店来る?」
「う〜ん・・・そうだな。」
ローナのアルバイトを探さないといけないからな。
「サービスするからさぁ〜・・・」
「悪い勧誘の仕方だな・・・」
「むう〜。別に悪い事はしてないもん。」
「分かってるって。」
「サービスとはなんだ・・・?」
「サービスはね、美味しい物がたくさん食べれたり、メイドさんのとムフフな事が出来るの。」
「お、美味しいもの・・・」
アクアがくいついた!
「それはいい・・・」
「ローナ・・・アルバイト探しをするじゃないのか?」
「それはそれ・・・美味しいものは美味しいもの・・・また、別次元・・・」
「そ、そうか・・・」
よ、よく分からんが、きっとなに言っても、無駄なんだろうな・・・
「分かった。久しぶりにお・客・と・し・て行くよ。」
「うぅ・・・そんなに強調しなくても〜」
図星だな。
※
-メイド喫茶LOVE☆LOVE-
「お帰りなさいませご主人・・・って、優希さん!」
店内に入ると、メイド服姿の朱鳥ちゃんが出迎えてくれる。
「優希さんが休日に来るなんて珍しいですね!しかも、お一人で!」
「ま、まあ・・・一人じゃないんだけどね・・・」
「ほえ?」
朱鳥ちゃんはキョトンとしながら、俺の後ろを覗く。
「アクアさんだ!」
朱鳥ちゃんはピューっと俺の後ろにいるアクアの方に駆け寄る。
「え、えっと・・・ア、アスカ?」
「うわー、覚えててくれたんですか?あまり学園では話せませんでしたから、てっきり・・・」
「う、うむ・・・アスカは友達だからな。」
「嬉しいです、アクアさん!」
アクアは顔を赤らめ照れくさそうだった。
「ところで、キミ!メイド服には興味ある?」
「ある・・・」
・・・何かあっちはあっちでスカウトしてるし・・・まあ、ローナにとっては、ちょうどいいかもな。
「それじゃあ!早速、面接開始!」
「おー・・・」
明らかに面接の雰囲気じゃないな。
「そういえば、店長も一緒だっんですね?もう一人いたようですけど・・・」
「うん。途中ヤンキーにアクアが絡まれてな・・・俺が止めたあとに瑠美も参戦してきたんだ。」
「店長お強いですからね〜・・・」
あのホールドは痛そうだった。
「でも、私は優希さんが助けるところ見たかったですよー・・・」
「何故俺なの?」
「だって、かっこいいじゃないですか。」
「うっ・・・」
そうストレートに言われると恥ずかしいというか・・・
「ユウキ。美味しい物とはどれだ?」
「あっ・・・では当店のオススメをお持ちいたしますね♪」
「おお・・・オススメか・・・」
「はい。オススメです!」
さすが朱鳥ちゃん。このメイド喫茶のNo.1は伊達じゃないな。
「優希様も大変ですね。」
「え?」
横から一人のメイドさんが話しかけてきた。
「大変って?」
「優希様の周りはお嬢様ばかりですから。」
「と言いますと・・・」
「一人に絞るのは大変かと・・・」
「えっと・・・」
・・・返答に困る。恐らく、茶化せれてるなこれ。
「さあ。優希様もお掛けになってください。」
「あ、ああ・・・そうするよ。」
ニッコリ微笑むメイドさんにそう言われ俺は従う。
「優希様も、当店のオススメでよろしいですか?」
「うん。お願いします。」
「かしこまりました。」
メイドさんはぺこりと頭を下げると厨房の方へと入って行く。
「ここには私みたいに姫という立場の人がいるのか?」
「ん?どうしてだ?」
「だって、メイドがいるのだろ?私がいた世界ではそうだったぞ。」
「あー・・・そうか・・・」
アクアはお姫様だから、向こうの世界でも、居ておかしくないもんな。
「少し勘違いしていると思うけど、ここにはお姫様はいないぞ。」
「ではどうしてメイドがこんなにいるのだ?」
「ん〜・・・」
困ったな・・・こういう時に卓人か浩二がいたら、良かったんだけど・・・
「なんて言うか・・・お客を盛り上がらせてくれる専用のメイドさんかな?」
何を言ってるんだ?俺は。
「なるほど・・・この世界にはいろんな種類のメイドがいるのだな。少し勉強になった。」
何故か納得してる!それになんだ・・・この罪悪感。
「ダーリン。」
「んっ。面接は終わったよう・・・ぶっ!?」
後ろからローナの呼ぶ声がし振り返ると、そこには、猫耳や猫の尻尾を付けたローナのメイド服姿があった。
「ニャン。」
「に、にゃん・・・?」
無表情のまま猫の手招きポーズをとるローナ。何と言うか、似合いすぎて、可愛い・・・
「どう・・・?」
「に、似合ってるぞ・・・」
「そう・・・よかった・・・」
表情こそ、変えないが、本当に安心しているようだ。
「ふふん!やっぱり僕の目に狂いはなかったね。」
「さすが店長!」
「えっへん。」
スタッフルームから出てきた瑠美が誇らしげに胸をはっていた。
「さてさて、次は、優希くんの・・・」
「絶対に断る!てか、どんだけ着させたいんだよ!?お前は!」
「だって、可愛くて仕方ないんだもん!写真だって、こんなに・・・」
「頼むからやめてくれ!」
店にいる客は何の話か分かってない様子だ。もし俺があの幻の三位なんてばれたら、明後日から学校いけなくなる!
「じょ、冗談だよ・・・涙目になる事ないじゃない・・・」
「お前には男のプライドが分からないんだよ・・・」
あの時どれだけ鬱になった事か・・・
「ま、まあ、優希さん。機会があればでいいですから、ね?」
朱鳥ちゃん・・・慰めてないよね?むしろ、着てくださいって頼んでるよ。
「それよりダーリン・・・」
ローナが服の端をチョイチョイと引っ張ってくる。
「私、ここでアルバイトする・・・」
「マジか・・・」
「ローナちゃん本気!?」
「本気・・・」
「合格!」
今、合格発表かよ・・・
「ローナちゃんなら朱鳥ちゃんを追い越すかもね?」
「むむ?負けませんよ!」
「頑張る・・・」
今・・・ここでメイド達の熱いバトルが始まった。
「ユウキ!ユウキ!」
アクアが興奮気味に呼びかけるので、振り向くと。
「すごいぞ。このオムライス?と言う食べ物に"お嬢様"と書いてくれるぞ!」
「・・・」
どうやら、オススメというのは、オムライスにケチャップで名前を書いてくれることらしい。
「はい、優希様も・・・」
先ほど話しかけてくれたメイドさんが持ってきたオムライスを自分が座っている席へと置くとケチャップで器用に俺の名前を書いてくれる。
「ど、どうも・・・」
「いえいえ。他にご注文がありましたら、遠慮なくお申し付けください。」
メイドさんはぺこりと頭を下げ他人のオーダーを取りに行った。
「ユウキのは、何て読むのだ?」
「漢字で"優希"って読むんだ。」
「カ、カンジ?難しいのだな・・・」
「教えられる範囲だったら、いつでも、教えるよ。」
「うん。頼む。」
お互い微笑みながら、スプーンですくったオムライスを口に運ぶのだった。
EPISODE13:休日END