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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第零章:騎士の目覚め
12/20

EPISODE11:刺客?

-風間第一学園 教室-


2時間目を迎えた一日。特に変わったこともなく、俺は普通に授業を受けていた。先生が話している時は、何かしら暇なので、辺りを見回してみる。先生から見えないようにゲームをしてる人や、ケータイをいじっている人がいる。卓人もその一人に入ってるのは、いつもの事なので、あまり気にしないでおこう。何せ世界史の教師はあまりこういうのは、気にしないタイプの人だからな。


「もう食えないよ〜・・・ミーナちゃん・・・」


前にいる浩二は寝言を言っている。表情は見えないけど、ニヤついているのは、何と無く想像できる。


「むう・・・このエジソンという人物は凄いのだな・・・」


隣でアクアは興味心身と世界史の教科書を見ていた。


「ユウキ!この・・・箱の固まりみたいなのは、何なのだ?」


アクアが指を指しながら、見せてきたのは、第二次世界大戦時の写真だ。その写真は、戦車しか写っていない。


「戦車だよ。」


「セ、センシャ?不思議な響きだな。」


ま、まあ、あまりこういう話はアクアにしない方がいいだろうが・・・


「センシャとは一体どんな物なのだ?」


「いや・・・まあ・・・」


「むぅ〜・・・勿体ぶらず、教えないか!」


「藍葉少しイチャイチャするのやめれ。」


先生から注意されてしまう。てか、別にイチャイチャしてない!


「・・・まあ、話を戻してアメリカ独立戦争時のイギリス軍は赤服ともいわれており・・・ん?」


すると、突然先生が話をやめてしまう。


「先生?どうしたんッスか?」


クラスメイトの一人が先生に問いかける。


「地震だ。」


「はい?」


俺は先生の目線につられ上を向く。すると、ぶら下がっている電灯が少し揺れていた。


「おーい。全員机の下に入れ。デカイのが来ると思うぞ。」


先生はそう言うなり教卓の下に潜る。


「マジかよ!」


一気に教室中が騒がしくなりほとんどの人は先生の指示通りに机の下に潜る。


「ど、どうしたのだ?」


「アクア!机の下に・・・!」


その時だった。揺れがいきなり大きくなりだし、目の前の風景が大きく揺れる。


「きゃっ!」


俺は何も考えず咄嗟にアクアをかばう。


「ユ・・・ユウキ・・・!」


「揺れが収まるまで待ってくれ・・・」


「・・・う、うん・・・」


アクアは顔を赤らめながら頷いた。多分、俺も赤くなっているだろうな。アクアを押し倒してしまう形と同時に、お互い息が触れ合うほど近い距離で見つめ合っているため、顔が熱い・・・


「お、収まった・・・?」


普通の地震とは違い大きな揺れは約5秒程度で、ピタッと収まる。


「ご、ごめんアクア。何と言うか、その・・・」


揺れが収まると俺はすぐにアクアから離れ謝罪した。


「べ、別にいい・・・ユ、ユウキは下心というものはない事は分かっているからな・・・」


「本当にごめん。」


「でも、全くだ。私をかばってもユウキが怪我をしたら、意味がないではないか!」


・・・少し怒っているようだ。確かに、そこは、不注意だった。


「・・・ありがとう。」


「えっ?」


「な、何でもない!」


アクアは何故か慌ててそう言うと、プイと視線をそらす。


「デカかったな・・・」


教卓からゆっくり世界史の教師が出てくる。


「それにしても、変だよな・・・ケータイの地震速報がこなかったし・・・」


「あとすぐ収まったよな・・・」


騒がしくなる教室。この光景は全校舎も同じだろう。


「だ、大丈夫か優希!?アクアちゃんを庇ってたようだけど・・・てか、羨ましいぞ!」


羨ましいは余計だ。


「ああ・・・幸い何も落ちてこなかったからな。」


すると、騒がしさを掻き消すかのようにスピーカーから指示が入る。


『先ほど大きな地震が発生しました。余震の可能性もありますので、教師の指示に従って、グランドに避難してください。繰り返します・・・』


「ってことだ。落ち着いてグランドに出ろよ。」


「凄い落ち着き様だな・・・先生は。」


「まあ。昔は、陸上自衛隊なんか行ってたからな・・・慣れれば、落ち着けるもんさ。」


「陸上自衛隊って・・・」


「そう見えないかってか?んな事聞いてる余裕があったら、とっとと移動・・・ん?」


「あれ?」


「急に眠く・・・」


バタっと次々に倒れていくクラスメイト。


「お、おい!みんな・・・」


気がつけば、俺とアクア以外みんな床に倒れていた。


「浩二!」


「優希・・・」


「しっかりしろ・・・!」


「今日は・・・」


「あ、ああ・・・」


「ナナイちゃんのフィギュア・・・発売日・・・」


「今いらんわッ!そんな情報!」


「ゴフッ!!」


浩二の頭に思いっきりチョップをくらわす。


「浩二・・・」


「いや・・・今ユウキが気絶させたのだろう・・・」


アクアが呆れたようにそう言った。


「それより、一体何が起こってるんだ・・・?」


突然みんなは倒れ出し俺とアクアだけが起きている。倒れている人の脈をはかるとリズムよく神経に伝わってくるのが分かる。彼等が寝ているだけだと知ると安心し安堵のため息を吐く。立ち上がり窓から外の様子を見ると、視界が少しだけおかしく街の風景や空が黒っぽくなっている。


「シュラーツフィールドだ・・・」


「アクア・・・?」


「奴らがフィールドを張ったんだ。」


まてまて!奴らって・・・いきなりすぎて、頭の中が整理できない。


「私を・・・追いかけて来たな・・・」


アクアは少し身体が震えていた。


「アクア・・・」


「す、すまない・・・少し取り乱した・・・もう、大丈夫だ・・・」


そうは言うが、まだ身体が震えており、息も少し荒い。こんな時どうやって声をかけていいのだろうか・・・けど、その迷いは一瞬だ。


「・・・今は俺がついてる。」


「え・・・?」


自然に出してしまった言葉。少しセリフはクサイが不思議に恥ずかしいという感情はなかった。


「俺は魔法とか使えないけど、今の状況をどうするかとかはさ・・・一緒に考えれると思う。」


「ユ、ユウキ・・・」


・・・さっきは恥ずかしくないとか思ってたけど、後からくるな・・・これ。


「ありがとうユウキ・・・そう言ってもらえると助かる・・・」


でも、良かった・・・おかげでアクアは少し安心したようだ。


「ま、まあ。その・・・だな。」


アクアは言いにくそうに言葉を途切らす。もしかして、さっきの恥ずかしいセリフにツッコミをいれるのか・・・


「ユウキ・・・さっきの言葉は間違いだ。」


「間違い・・・?」


間違いって・・・


「ユウキは別に魔法が使えないわけではないぞ。」


「・・・えっ?」


予想外の言葉に俺は一度思考がフリーズしてしまう。


「・・・アクア。それって、どういう意味だ?」


「意味もなにもユウキがフィールド内で活動できている時点で、さっきの言葉は間違っていると言うのだ。」


「っと言いますと・・・」


「ユウキは魔法が使えると言う事だ。」


アクアは自信満々にそう断言した。


「マジで?」


「うむ。」


「冗談じゃあ・・・」


「私が嘘をつくものか!」


「デスヨネ〜・・・」


マジかよ!!?じゃあ、今寝ているみんなは魔法が使えないから寝ているのか?


「10年戦争でも使われ厄介なものだ。このフィールドの魔法式は元々、暗殺用に使われてたものだからな。」


なるほど・・・と言う事は護衛対象に魔法が使えず一般のエスコート役がついていたら、終わりって事か・・・効率がいい魔法だな。


「効率がいいと言う事は逆に欠点もあるんだよな?」


「もちろん、ある。このフィールドの魔法式は複雑で上級魔法使いでも、保っていられる時間は15分だ。」


15分・・・短いようで、長い時間だ。特にこういう状況は。


「とにかく、15分間逃げればいいんだろ?」


「そうだが・・・」


言葉では簡単に言えるが相手は、魔法使いだ。俺は魔法が使えるって話なだけで普通の人と変わらない。でも・・・


「とにかく、移動しよう。ここにいたら、寝ているみんなを巻き込んでしまうかもしれない。」


俺はそう言いアクアに手を伸ばす。


「う、うむ。そうだな。」


アクアが俺の手を掴もうとした瞬間だった。


「危ない!」


アクアは何かに気づいたのか俺の前に立つ。そして、アクアは両手を前に伸ばすとそこから魔法陣が表れ俺とアクアが入るくらいの大きさをした青色で透明な膜のようなものが包み込む。その瞬間窓から無数の光が見える。


「あれは・・・!?」


よく見ると複数あり、それは槍のようにも見えた。


「うわっ!」


ガラスが割れ床の所々にその槍のような棒が突き刺さる。攻撃が終わると、アクアは魔法を解き辺りを見回す。


「みんなは・・・!?」


教室中を見回す。


「・・・大丈夫だ。誰も巻き込まれてない・・・」


槍のような棒は上手く床に倒れているクラスメイト達の身体をギリギリ外していた。


「よかった・・・」


アクアはホッとし胸を撫で下ろした。


「落ち着いていられるのも・・・今の内。」


「・・・!?」


窓の方から女の子の声がし、俺は声がした方向へと身体を向ける。


「君は・・・」


割れた窓のすぐ前に立っていたのは小学生の女の子並みの高さで青色の長髪をした少女。


「アクア・F・イザール・・・やっと見つけた・・・」


「アサシン・・・」


ア、 アサシンと言う事は・・・暗殺者か!?


「魔法使いじゃないのか?」


「いや、アサシンでも魔法は少し使える。」


「少し?」


「少しじゃない・・・たくさん使える。」


その女の子は腰に装着していたナイフを取り出す。


「たくさん使える・・・」


え?


「何で二回言ったの?」


「・・・大事な事だから。」


俺は思わず、ずっこけそうになる。


「ユ、ユウキ!大丈夫か?何か奴にされたのか!?」


「い、いや・・・」


何と言うか・・・


「以外に馴染んでるなぁって・・・」


「馴染んでない・・・ここに来て始めて知った事。」


「そ、そうなんだ・・・ハハ・・・」


あれ?アサシンって聞いて冷酷そうに思ってたけど、なんか違う。


「ガッカリした・・・?」


「な、何がだよ・・・」


「気を付けろユウキ。あのジト目はああ見えてもアサシンはアサシンだからな!」


確かに、アクアの言う通りだ。もしかしたら、あの娘の戦法かもしれない。


「てか、アクア。ジト目っていつ覚えたんだ?」


「タクトに教えてもらっのだが・・・違ったか?」


「いや・・・」


合ってると思うけど、アクアが知ってた事に少し驚いただけだ。


「ジト目・・・?」


彼女は、ナイフは構えてるものの、首をかしげる。


「・・・今はいい。それより、アクア・F・イザール・・・すぐに投降して。」


「断る。」


ん?投降って・・・


「ちょっと待ってくれ。君は、アサシンなんだろ?」


「そうだけど・・・それがなに?」


「いや・・・アサシンって暗殺者だろ?殺したりとかは・・・」


「ん・・・?何故?」


何故って・・・逆に聞かれると困る。


「確かに、私はアサシンだけど・・・人は殺した事ない・・・」


「アサシンなのに・・・」


「人を殺した事ないだと・・・?」


アクアも驚きを隠せないようだ。


「私の・・・魔法攻撃がその証拠・・・」


確かに、寝ている人達には当てていない。


「納得・・・?」


「い、一応な・・・」


「じゃあ、覚悟。」


「待て待て。」


展開が早すぎるだろ。


「なに?」


「さっきの話だと、俺達だけ魔法攻撃を当てようとしてたのか?」


「ううん・・・違う。」


「・・・はい?」


「別に当てるつもりはなかった・・・」


も、もう、訳がわからなくなってきた・・・


「あれは・・・威嚇射撃・・・というもの。」


「嘘だろ!?」


もし、アクアが防いでなかったら、直撃していたぞ!


「嘘じゃない・・・私の魔法攻撃がその証拠・・・」


あー・・・もう、なんて言うか・・・


「神谷とまた違ったアホだな・・・」


「アホじゃない・・・天然と言って欲しい。」


「どっちも同じだから!」


「そう?」


「ああ。」


何だか調子狂うな・・・


「では・・・覚悟。」


ジャキッと構えられるナイフ。


「アクア・F・イザールが投降しないなら、戦ってもらう・・・」


噛み合わなかった話の後結局、こういう展開になるのか・・・


「アサシン・・・張り切ってるところ悪いがもう、15分だぞ。」


「しまった・・・」


彼女は、ハッとした様子でナイフを戻す。


「敵の話に乗りすぎた・・・」


「いや、逆に乗せられたんだよ。」


「そうなの?」


「自覚ないのかよ!」


「えっへん。」


「威張るの!?」


「威張ってみた・・・」


「・・・」


も、もう、疲れた・・・


「という事で・・・また、会おう・・・」


すると、彼女は、割れた窓から飛び降りた。


「・・・ア、アクア?」


「何だ?」


「アサシンってみんなああいう感じなのか?」


「いや・・・彼女だけだと・・・思う。」


結局、アサシンの少女は襲撃してきたが、戦闘はなくフィールドも、時間が経ったら、消えていった。この後の事はと言うと、起きたみんなに割れた窓に何があったのかを説明するのが大変だったのだ。



「くそ〜・・・ナナイちゃんのフィギュアが発売延期って・・・」


「仕方がないですよ。地震のせいで、お店が営業出来ない状態でしたから。」


「あーあー・・・楽しみにしてたのに・・・」


学校はあの後昼まで授業を再開した。昼食を食べず浩二と月美ちゃんと一緒にアキバへ行き浩二が予約していたフィギュアが売っている店へと向かったが、地震の影響で一時休業。まあ、よく考えれば、当たり前だ。アキバにいても、仕方がないので、とりあえず苗宮荘へと帰宅するのだった。


「そういえば、野球の練習はどうなんだ?」


「今日は中止だってよ。てか、さっきメール届いてただろ。」


「全く宮河先輩は・・・」


「ゴ、ゴメンナサイ・・・」


シュンとなった浩二は俯きながら、そう言った。そうダベっているうちに、苗宮荘へと帰宅。


「あれ?ミカエルさん?」


苗宮荘の門を抜けると出入り口にミカエルさんが俺達を待っていたのか待ち構えている。


「よく帰った少年少女よ。」


「は、はあ・・・」


「ど、どうしたのですか?ミカエルさん・・・」


「喜べ。この苗宮荘に新しい住人が増えたぞ。」


「マジかよ!それは女の子なんですか!?」


「勿論だ。」


「イャッホー!」


女の子が来ると分かったのか浩二はテンションが上がる。


「宮河先輩・・・」


月美ちゃんがジトっとした目で浩二を見つめる。まるで可哀想な人を見るような目だ。


「何故かは分からんが、ツキミの気持ちは私にもよく分かるぞ・・・」


アクアもジト目で浩二を見つめる。


「スミマセン・・・」


自重したのか浩二は俯きながら、沈黙した。


「よし。紹介しよう・・・出てきてもいいぞ。」


「はい・・・」


苗宮荘の出入り口のドアから出てきたのは・・・


「なっ・・・!?」


「な、何故お前がここにいるのだ!?」


それは今日出会ったアサシンの少女だ。


「フッフッフッ(棒読み)・・・また会おうって言いましたよね?」


「いや・・・言ってたけど・・・」


ほ、本当に展開が早すぎるだろ・・・いや、行動が早いって言った方がいいのか?


「なんだ。少年とアクアはすでに顔見知りだったか。」


「ま、まあ、今日会ったばかりですけど・・・」


「唐突だったがな・・・」


「ふむ・・・まあ、理由は後に聞くとして・・・自己紹介頼むぞ。」


「はい・・・」


すると、彼女は一歩前に出る。


「ローナ・フォルツベルン・・・不束者(ふつつかもの)ですが、よろしくお願いします・・・」


アサシンの少女、ローナは行儀よく深いお辞儀をテンポよくした。


「・・・」


お辞儀を終えると何故かローナは俺の方を見つめる。


「な、なんだ?」


すると、ローナは俺の近くにより、こう言った。


「よろしくお願いします・・・マイダーリン・・・」


「ぶっ!?」


「マ、マイダーリン!?」


「そ、そそそそんな先輩!いつの間に・・・!」


「うう・・・何で優希ばっかり・・・」


「これはこれは・・・いい事を聞いたな。」


「ロ、ローナ・・・?」


「はい・・・」


「マイダーリンって・・・」


「ここ(地球)では狙った獲物の事をそう呼ぶと・・・聞いた・・・」


「また、違う意味でだよ!」


今日苗宮荘に不思議な人が引っ越してきた。・・・少し先が大変そうな予感がしたような気がしたのは、気のせいだろうか?



EPISODE11:刺客?END

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