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姫と騎士 -プリンセスナイト-  作者: 中村 リョウ
第零章:騎士の目覚め
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プロローグ:出会いは突然に・・・

「ハァ・・・ハァ・・・」


薄暗く松明が何本も並べられその灯りを頼りに真っ直ぐ長い通路を走る。


「きゃっ!?」


床から突起した石のタイルに足を引っ掛け転んでしまう。


「大丈夫ですか!アクア様!」


「だ、大丈夫だ・・・」


一緒についていた護衛の兵士の手を借り何とか起きあがる。転けた衝撃で着ているドレスが汚れているのが分かる。


「お急ぎをっ!追っ手が近づいて来ます!」


もう一人隣にいる兵士とは違った格好をした男性は後ろの状況を把握しこちらに伝える。


「もう少しで移転の間だ。ここまでこれば・・・」


「行かせると思いましたか?」


「なっ!?」


横にいた兵士が声を出す間もなく血吹きを上げ倒れる。


「終わりです・・・アクア様・・・」


顔を隠し軽い鎧を装備した人物がこちらにナイフを振りかざす。


「やらせるかっ!!」


後ろにいたもう一人の護衛が素早くこちらに近づき抜いた剣で私をかばいかたい物が当たる鈍い音が通路に鳴り響く。


「アクア様!先に行ってください!」


「し、しかし・・・ルークはどうするのだ!?」


「私は後から追いかけますよ。」


「だが・・・・・」


「大丈夫ですよ・・・これでも生き延びる事に関しては得意ですから。」


苦笑いをしながら彼はそう答える。


「楽しくお喋りをしてる暇がありましたらこちらに集中したらどうです?」


顔を隠した人物は左腕につけている籠手から隠しナイフが飛び出しルークに突き刺そうとする。


「くっ!」


ルークは競り合っていた剣でナイフを振り払う。振り払われた事で、バランスが崩れたのか隠しナイフを引っ込め間合いをとる。


「さぁっ!早く行ってください!」


「・・・分かった。絶対に追いついて来いよ!」


「承知しています!」


私はそう言い残しどこまでも続きそうな廊下を走る。



「ハァ・・・ハァ・・・ここが移転の間・・・」


目の前には巨大な扉がある。扉に手を触れると地響きとともに、自動に開き出す。扉が完全に開くと地響きは鳴り止み部屋の中の床の中心から巨大な魔方陣が輝き出す。私は迷いもなく部屋に入り魔方陣の中心へと歩き出す。


「どうやれば起動するんだ?・・・私は魔法は少ししか使えないぞ・・・」


首からかけていたペンダントを手に取りそれを見る。五角形で青く透明な宝石でその中に紋章が輝いている。すると、宝石から閃光のように輝きだし思わず目をつぶってしまう。


「うわっ!な、何だ!?何が起きたんだ!?」


身体には浮遊感があり目をゆっくり開けると・・・


「な、な、何だこれ!?」


目を開け下を向くと私の身体が浮いていた。魔方陣の周りからは青い光が輝きだしていた。


「ちょっと待て!まだ転移先を言ってないぞ!?」


私の両腕を見ると、粒子のように輝きだし消えていく。



・・・・・・


・・・


「優希起きろッ!!」


「痛ッ!?」


頭に激痛が走り思わず声を上げてしまう。おかげで、周りにいた人達から笑われてしまう。


「お前・・・俺の授業舐めてんのか?いつも見るたびに、居眠りしやがって。」


「いや・・・英語は得意ですからいいかなぁ・・・と思いまして。」


「思いましてじゃねえんだよ!!まぶたに洗濯バサミで挟みながら起きる思いで授業をうけろ!!」


洗濯バサミでまぶたを挟んだら痛そうだな・・・て言うより痛いな。


「ちゃんと起きてますよ・・・」


「全く・・・」


流石に一度起きてしまうと眠気がなくなってしまい俺は仕方なく窓の外を見る。


(それにしてもさっきの夢は何だったんだろう・・・)


アニメに出て来そうな可愛い女の子が敵に追いかけられ違う世界に来てしまう・・・・・アニメではよくある設定だ。


(卓人から勧められたアニメの見過ぎかな・・・)


しばらくは、アニメを見るのは控えておくことにした。



昼休み俺は購買に行き焼きそばパンを買い屋上へと向かう。


「あれー?・・・藍葉くん?」


「ん?神谷か。」


二階に着くと見た目はおっとりとし髪は薄茶色でショートカットの女の子がいた。


「奇遇だねー藍葉くん。」


「奇遇って言っても、どうせ屋上で昼飯食べるんだから会うのは当たり前じゃないか?」


「ほえ!?そうなの?」


こいつは神谷 里美。幼馴染で幼稚園から高校までずっと一緒だ。見た目と話し方からで親しい人からはアホの子とも呼ばれている。そのあだ名で呼ばれると


「はは、そんな調子だとアホの子からは卒業できないぞ。」


「うう~・・・アホの子は言わないで〜・・・」


と頭を抱えそう言うのが彼女のセリフだ。


「早く屋上に行くか。」


「うん。そうだね。」


立ち直り早いな・・・



「グッドモーニングみなさん。」


「いや、グッドモーニングは時間的におかしいだろさっちゃん。」


「えっ!?そ、それじゃあ、グ、グッドナイト?」


「いや、まだ寝ないから。」


「ふえぇぇ~!?え、えっとそれじゃあ・・・」


「おい、卓人・・・あまり神谷をいじるな。神谷がさらにアホになるだろ?」


「はは!そうだな。」


「うう~・・・私、アホじゃないのに・・・」


シュンとなった神谷を見ると少しやり過ぎたと思い罪悪感が出てしまう。


「ごめん神谷・・・少しやりすぎた。。」


「ううん・・・大丈夫です。アホの子を卒業するためにも、努力するよ。」


微笑みながらガッツポーズをする神谷を見てると、こちらも何だか微笑んでしまう。これは神谷の能力かもしれないな。


「と言うわけで、甘い物を食べましょう♪」


「甘い物・・・努力とのつながりはあるのか?」


卓人。それは俺も同感だ。


河崎 卓人・・・高校入学後で、始めて友達となった奴だ。夏問わず年中ブレザーを着ている。見た目はイケメンなのだが、中身はヲタクだ。何か限定商品があれば授業抜け出しアキハバラに買いにいくといった予想外の男・・・いや、バカな男だ。


「おっと。5時間目から俺は授業を抜けるぜ。」


「またアキハバラか?」


「ああ。魔法少女マジカルナナイの限定フィギュアが今日発売なんだ。」


あまり細かい事は気にしない方だが・・・マジカルって二回言ってる事にならないか?


「藍葉。ナナイは見たのか?」


「ん?・・・ああ、おかげで変な夢を見たけどな。」


「変な夢?」


俺は焼きそばパンの袋を開封し中から本体を取り出しそれを口にへと運ぶ。


「ああ・・・異世界のお姫様がさ・・・誰かに追いかけられて違う世界に来てしまうというか・・・」


「それはお前がヲタクに目覚めてきたということになるな。」


「いや、それはないから。」


「ロマンがない奴だな・・・」


ヲタクに目覚める事にロマンなんかあるのか?


「まあ、あれだな。夢と現実を区別する事が重要だな。」


「いや、何を言っているんだお前は・・・」


「うわー・・・かっこいいね、卓人くん。」


「サンキューな。」


(かっこいいのか?・・・)


神谷と卓人が考える事はよく分からないな・・・



5時間目と6時間目もまともに授業を受け放課後。特にクラブに所属してるわけでもないので、今日はアキハバラに寄って帰る事にした。その理由は卓人のバカが一人一個までのフィギュアがセールス中らしい。


「ヲタクは金がかかって大変なんだな。」


「卓人くんは熱心だからね。」


いや、熱心と言うよりも計画性が無いだけだと思う。


「っでお前も卓人に頼まれたのか?」


「うん。卓人くんに『お前たちだけが頼りなんだ・・・』って言ってたから断る訳にはいきませんよ。」


あいつ・・・他に友達はいないのかよ。


「とりあえず、持って帰る教科書やらをカバンにまとめて駅に行くぞ。」


「うん。そうだね。」


神谷はそう言うと、自分の席の方へと戻る。


「やっはー、優くん!」


教室のドアの方から元気良く入ってきたのはサイドテールで髪は長く色は赤色の美少女。


「何の用だ?」


「えっ?さっちー氏と優くんと一緒に帰ろうかなーと思っていたのですよ!」


「ああ、そうか。」


「ちょっ!?リアクションがうすいですよ!もう少し何か刺激みたいなのが欲しいです!」


「俺にそういう事を期待されても困る。」


この元気な美少女は隣の3組の足立 里奈。おそらく、学園一のムードメーカーと言われるだろうという存在だ。高校に入学し卓人の次に知り合った。


「あれー?里奈ちゃん。」


「おお!さっちー氏、聞いてよ!優くんがいじわるしてくるよー・・・」


「よしよし・・・優希くんは少しツッコミずらいと思いますよ。」


おお・・・珍しく神谷が言った事が合ってるな。


「里奈、悪いが今日はアキバに寄って帰るぞ。」


「ほえ!?アキバにいくのですか!?」


目をキラキラさせながら里奈はこちらに近寄る。


「ああ。卓人の買い物に付き合わなきゃいけないからな。」


「私も卓人くんに頼まれましたよ。」


「おお・・・師匠の買い物とは・・・・・それは戦争ですね!?」


「そこまではいかないと思う。」


「ふえ!?私せ、せ、戦争にいくの!?」


「神谷は真に受けるな。」


こう話している間にも時間は過ぎて行く。


「とりあえず、里奈も来るか?」


「もちろんですとも!是非お供させていただきます!」


聞いていたら分かるが里奈もアキバ系だ。卓人とは師匠関係にあるらしく、休日ではアキハバラを一人で回っているらしい。


「それでは、レッツゴーですよ!」


「オ、オー!」


(元気いいな・・・)


俺は机の上に置いてあったカバンを手に持ち彼女達と歩き出す。


アキハバラ 駅前


アキハバラに着き駅から出ると、平日に問わず多くの人で賑わっていた。


「おお!相変わらずすごい賑わいですなあ!」


「本当だねー。」


「これが普通だろ?」


「いやいや優希くん。休日で限定商品が発売されればこんな物じゃあ済まされないよ。」


それが休日だったら今日は卓人の奴早朝からでも店頭に並んでそうだな。


「ところで、師匠はどの辺りに?」


「確か中央通り辺りの店だと思うんだけどな。」


「中央通りかぁ・・・人が賑わってて楽しいよね。」


「確かにそうですなぁ・・・人の波を見るのもたまには悪くないね。」


「お前・・・ただの変態だぞ。」


「っと言う冗談を言ってみました。」


「ああ、そうだよな。」


・・・冗談でよかったよ。もし動揺しながら話していたら引いていたな。


「何を本気にそう思っていたんですか!?冗談に決まってるじゃないですか!」


「はいはい。中央通りに行って卓人を探すぞ。」


人目があるので、とりあえず里奈を大人しくさせ俺は中央通りの方へと歩き出す。



中央通りに出ると平日だというのにすごい人だかりがあった。卓人が言っていた限定フィギュアの影響なのか?


「うーむ・・・こうも人が多いですと卓人氏がいるアニメショップまで行くのに時間がかかりそうですなぁ・・・」


「え?卓人くんのいる場所分かるの?」


「ふっふっふっ、私を舐めてもらっては困りすねぇ・・・卓人氏とどれだけアニメショップに回ったと思っているのですか?@メイトにたぬきのあな、ソイツに・・・」


「前置きはいいから早く教えてくれ。」


「も~・・・優くんはせっかちなんですから・・・」


いや、せっかちは関係ないだろ。


「えっと、今日は魔法少女マジカルナナイの限定フィギュアの発売日にフィギュアのセール・・・・・と言いますと、ソイツですね。」


ソイツと言えば、@メイトの近くだ。というと、ここからはそう遠くはない。


(早く卓人の頼みごとを終わらせて帰ろう・・・)


俺はそう思いながら歩き出すと・・・


(何だ?あれ・・・)


空から青い閃光を放ちながら落ちてくる光の玉が見えた。


(隕石か?)


隕石にしては落ちてくる速さがゆっくりすぎて不自然すぎる。謎の閃光をはなっている球体の事も不思議だったのだが、それ以上に不思議だったのは


(周りの人が・・・誰も見てない?)


閃光は違う方向を見てても目に入ってしまう様な光だ。それを見ないというのはおかしい。


「なあ、神谷、里奈、あれは・・・?」


神谷と里奈がいる方向に振り向き謎の球体の事を知らせようとすると二人はいなくなっていた。


(二人とも何処に行ったんだ?)


この人混みだ。はぐれてもおかしくはないが・・・・・

そう思いながら球体の方に振り向き直すとあの閃光を放った球体はいつの間にか消えていた。


(幻覚か?・・・)


幻覚を見るという事は俺は相当疲れているらしい。


(とりあえず、神谷に連絡するか・・・)


俺はケータイを取り出すとある不自然な事に気づく。)


(ん?時計が狂ってる?)


ケータイの時計が19時と表示されていた。ケータイが間違えてるのかと思い左腕につけてある腕時計を見ると、不思議な事に腕時計も19時と表示されている。


(一体どうなってるんだ?・・・!?)


それは一瞬の事だった。辺りはいきなり暗くなり中央通りの人混みはなくなっていた。


「マジ・・・かよ・・・」


一瞬で時間が進む事ってあるのか?いや・・・あり得ない。多分、俺が疲れているだけかもしれない。


「か、帰るか・・・」


俺は先ほどの不思議な出来事をなかった事にし駅の方へと向かう。


思うとこの出来事が平穏だった生活から波乱になるとは思ってもいなかった。



先ほどの出来事をなかった事にしてもさすがに記憶というものは簡単には忘れてはくれない。おかげで、身寄りの駅に降り目的地に着くまで先ほどの体験の事を引きずりながら歩いていた。それにしても、面妖な事だ。


(あの光が落ちた方向・・・俺の家の方角だったような・・・)


いやいやいや・・・方向はたまたまで別に自分の家に何かある訳じゃないよな。


(考えすぎたよな・・・うん。)


「おお、少年か。今日は遅かったな。」


「ミカエルさん・・・」


二階建てのアパートの門の前に立ち掃除をしていたのか右手にほうきを持って出迎えてくれた一人の女性はロングヘアで髪の色は茶色でアホ毛があり優しい表情をしていた。この人は、後ろにあるアパート"苗宮荘"の管理人、いわゆる大家さんで名前は山田 ミカエルさん。


「どうした?幽霊でも見たような顔をしているぞ?」


「い、いえ・・・途中ゴミ置き場から出てきた猫に驚いただけですから。」


先ほどのオカルト的な出来事を話しても信じてくれなさそうだったので、適当に作り話を話す。


「ほほう・・・少年もかわいいところがあるな。」


「うっ・・・」


あのピンときた目は、作り話だと見通したようだ。


「何があったかは知らないが、とりあえず自分の部屋で休むといいそ。」


「は、はい。そうします。」


俺はミカエルさんの横を通り門を超えると


「部屋といえば、少年・・・」


言い忘れた事を思い出したのかミカエルさんら俺を呼び止める。


「少年の部屋から青い光が発していたが・・・テレビを消し忘れたのではないのか?」


「あ、青い光・・・・・」


「気をつけたほうがいいぞ少年。最近では電気代が高いらしいからな・・・」


「す、すみませんミカエルさん。これからは気をつけておきます!」


俺はそう言うと、自分の部屋がある二階へと急ぐ。


「・・・・・少年は相変わらず元気が良いな。」



階段を急いで駆け上がり二階へ着くと自分の部屋がある真ん中の203と書かれたドアへとたどり着く。


(青い光がおれの部屋から出ていた?まさか・・・)


学校に行く前にテレビの電源はきったはずだ・・・なのにどうして誰もいない部屋から光が発するんだ?


(・・・開けるか。)


俺は唾を飲み込みカギをカギ穴に差し込みゆっくり回す。カチャッと音がなるとノブを握る。自分の部屋を開けるだけでこんなに緊張した事はない。

俺はゆっくりとノブを回しドアを引くと・・・


「・・・えっ?」


俺は驚きのあまりに思わず固まってしまう。何故なら・・・


「・・・問うがお前はここの住人か?」


誰もいるはずない自分の部屋に綺麗なドレスを着た美少女がいたからだ。


「それより・・・お前は誰だ?」


(いや、あなたが誰なんですか?・・・)


彼女の問いにそう言い返したかった。


プロローグ:出会いは突然に・・・END


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