8、ぷらぷら揺れる足
オランジュ、ふかふかの絨毯、異国の雰囲気。と、美少女。
今回はそんな感じの第8話
楽しんで読んでいただけると嬉しいです
…オランジュ?
何だそれ、聞きなれない外国語の様な響きだ。
「どうぞ。」
中からこれまた小さい声で返事が聞こえた。
気品を感じさせる凛とした音と、少し幼い感じの甘い音が混じった何とも言えない可愛い声。
柚季は大きな扉を両手で開けた。
見た目より軽いらしいその扉は女の子の力でも簡単に開くらしい。
「入って…。」
やっぱり悲しそうな柚季の声。
こちらの声だって、幼なじみのひいき目で見ても透き通るいい声をしてる。
でも、そんなに悲しそうに言われたらキレイな声も台無しだ。
言われたとおり中に足を踏み入れる。
廊下の倍はふかふかしてるんじゃないかってくらい部屋の中の絨毯はふかふかだった。
何センチあるんだろう…この絨毯。
なんて庶民的な考えが頭をよぎる。
後に続いて柚季が入ってきて、静かに扉を閉める。
「竹虎を連れてきました。」
深く礼をしてから言った。
柚季の視線の先には、
「あっ…。」
思わず声を出してしまうほど美しい少女が居た。
年は俺と同じくらい…か?
これまたふかふかしてそうな椅子をこれでもかと余らせて腰かけている。
長くキレイにウェーブしてる茶色の髪は腰まで届いて、椅子についてしまっている。
こっちを見ている瞳は淡いオレンジ。
肌の色は透き通るような白。本当に透けてしまうんじゃないだろうか。
優雅に組んでる足はすらっと床に伸びて…いなかった。
足が細いことは確かなんだが、残念なことに長さが足りなくて組んだままぷらぷらと不安定に揺れてる。
異国の雰囲気が漂っていて、何とも可愛い少女だ。
俺は一瞬で目を奪われてしまった。
一目惚れって本当にあるのだろうか。
あるとしたら、見ただけでドキドキして、目をそらせなくなるのはその類なのだろうか。
「…これがそのタケトラって人?何かしょっぼいわね。見た感じ魔法も使えないみたいだし。」
可愛い女の子の声で暴言を吐かれた。
“しょぼい”の部分が嫌に強調されてる。
誰だこんなこと言ったのは。俺はしょぼくないぞ。キングオブ普通だ。
発言者を探そうときょろきょろする…が、俺が今居る部屋には俺以外に、柚季と、可愛い少女と隣に立っているすらっと背が高い男しかいなかった。
まさか幼なじみの声を間違えるわけがない。ましてや男が今の様な可愛い声を出せるわけがない。
ということは…。
「何きょろきょろしてるわけ?しょぼいだけじゃなくてこいつバカなの?」
今度はしっかりと彼女の口が動くのを見た。見てしまった。
優雅に椅子に腰かけている彼女が言ったのだった。
「アリッサ様!何を言ってらっしゃるのですか。こちらはいくら見た目がしょぼく、行動がバカっぽく、発言がアホ犬の様でも王の座につくにふさわしい資格を持った方なのですよ?」
少女の隣に居た男が言う。いや、なんか悪口増えてるんですけど。
可憐な少女はアリッサというらしい。
とりあえず戸惑った俺は後ろにいる柚季に助けを求める。
「おい、柚…」
振り返った俺はびっくりして先を言えなかった。
さっきまであんなに落ちこんで元気がなかった柚季が今にも吹き出しそうな顔でこっちを見ていたから。
「ぷっははははははは!おっかしい!やっぱ竹虎最高だよー。一目惚れした女の子に暴言吐かれて驚いてる表情いただきました♪」
丁寧に両手の人差し指と親指で四角くカメラのフレームを作って言ってくる。
「みんなアリッサに惚れるんだよねー。最初は。可愛いもんねアリッサ。性格は最悪だけど。」
「ちょっと、オランジュ?客の前では様を付けなさいって何回言ったら分かるわけ!?」
すぐさまアリッサが柚季にくってかかる。
最初のイメージがズタボロだ。清楚で可憐で何処か儚いお嬢様のイメージが…。
「で?これが本当にそうなの?証拠を見せて。」
肘掛に置いてある細く白い腕で頬杖をつきながらだるそうに聞いてきた。
「ほーい♪」
いつの間にか元気を取り戻した柚季が軽い返事をして、俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
読んでいただきありがとうございました
私の大好きなアリッサ、登場です←
可愛くないですか?w
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