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7、緑の模様

緩んだネクタイ、露わになった首筋。と、戸惑う青年。



今回はそんな感じの第7話。




楽しんで読んでいただけると嬉しいです

「ホントに印付いてるんだねー!いやぁ…どおりでいつも真面目な格好してると思ったよ。」

柚季は俺の手が透けてるかのように、首筋を凝視してくる。

俺は諦めて手をどかした。

しかし…。

「何で見えるんだ?これは俺にしか見えないはず。っていうか何でネクタイが緩んでる?」

“これ”とは、俺の首筋にある淡い緑色の模様の事。

物心ついた時からそれは鏡を見るたびに俺を困惑させた。

いくら首に模様があるって言っても誰も信じてくれない。所詮子供の自由な想像だと言って。

小学校に上がるころには俺以外には見えないんだと気がついた。

鏡には写るのに、写真を撮ったら写らなかった。

思いつめてこの印をライターで焼こうとしたこともあった。

誰にも見えないなら、これは俺の空想なんじゃないかと。精神病の一種なんじゃないかと。

不安になって一時期塞ぎこんだこともあった。

でも、これには何か意味があるんだと自分に言い聞かせてきた。

それでもやっぱり不安は消えなくて、ネクタイをキッチリ締めないと落ちつかない。

この印の意味を、模様がある理由を、柚季は知ってるのか?

行動を見た限り、見えているらしいが。

「へっへっへ♪それはこっちの世界に来てるから見えるんだよベイベー。それと、ネクタイはたぶんドゲサメさんたちが緩めたんだよと思うよ?」

他に竹虎に会った人居ないと思うし。と、付け加える。

「ここは何処だ。」

自分でも声が冷たくなったのに気がついた。

さっきからこの質問がはぐらかされてる気がして少しイライラしているのかもしれない。

「っていうか、学校は?今日は俺たちの入学式のはずだろ?遅刻か?まさかここが学校?」

考えないうちに次々とことばが先に口から出てくる。

くそっ…。

なんだかここで目が覚めてから分からないことだらけで不安になる。

ただでさえ、首の模様が見られて落ちつかないっていうのに。

「あー。なんか竹虎が普通で安心するよ!こっちの人たちキャラ濃くってさ。あ、竹虎、名前は普通じゃないけどね。」

うっさいな。

竹虎って名前がおかしいってことくらい分かってる。

親に聞いた名前の由来には俺だってびっくりしたさ。

「え?んーとね、なんかラノベに出てくる主人公みたいな名前が良かったの♪」

心はいつまでも17歳のお袋が言っていた。

「俺の質問に答えてくれ。」

そんなつもりはないのに、口から出た言葉はさっきよりもっと厳しいものになっていた。

「え、ちょ、竹虎怒ってる!?待って待って!私が悪かったから!」

柚季はいきなり態度を翻した。

俺ってそんなに怖いのか…?

ちょっと傷ついた。

「でも、私は何も言えないんだよ。面目ない。許可されてるのはさっき教えたことだけ。」

しょぼんとうなだれて言う柚季。

心なしかおでこのたんこぶも小さくなった気がする。

こっちが申し訳なくなるじゃないか。

「そうなのか…。誰に許可を取らないといけないんだ?」

声が厳しくならないように気をつけながら優しく問う。

柚季はさっきよりもっと悲しそうにして答えた。

「それもダメなの。こっち、来て。私の使命は竹虎を連れていくことだから。」

いつもの柚季らしくない。

元気の塊みたいな柚季は人を楽しませる嘘をつくのは大好きだけど、今みたいに何かを隠すのが大嫌いなんだ。

ちっさい頃からずっと暮らしてきた俺が言うんだから間違いない。

そこまでして柚季が隠すことって何だ…?

とりあえず先に歩きだした柚季に俺はおとなしく付いていく。

こんなに広い別荘、柚季の言葉を借りるならお城。だから、迷わないか少し心配だけど、俺の前を歩く少し小さくて元気のない少女は道が一本しかないかの様に進んでいく。

迷う心配はなさそうだ。

もっとも、柚季が迷子になってなければ。の話だけど。

俺たちは何も言わずに歩いて行く。

足音さえ床に敷き詰められたふかふかの絨毯が吸い取ってしまう。

なんだか…自分がここに存在していることすら分からなくなってしまいそうだった。

途方もない不安が俺を包みこんでいく。

それはどんどん大きくなって、俺は押しつぶされそうになる。

首の模様の事もそうだ。何故柚季に見える?こっちの世界って何処だ。

やっぱりドッキリか?それにしては手が込んでる気がするけど。

ドゲサメさんたちは俺に何をした?喋れなくなったり、動けなくなったり、体が浮いたり。

魔法なんてそんなもの、俺は信じない。手品かなんかの一種だろう。

いくつかの自問自答をして気をまぎらわそうとしたけど、かえって自分自身の不安をあおるだけだった。

「ここ。」

いくつかの長い廊下と、いくつもの角を通ってやっとたどり着いたのは大きな扉の前。

横幅は、冷蔵庫二つ分くらい。縦は高い高い天井まで伸びてる両開きの扉だ。

細かい金色の装飾がキレイに施されている。

柚季は小さく二回コンコン、とノックをしてから

「失礼します、オランジュ入ります。」


読んでいただきありがとうございました。




次回、噂の女王様が登場しますっ


私の嫁です←


みなさんに好きになってもらえたら嬉しいです。




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