3、召使の詠唱とか。
カード、詠唱、キャラが濃い人。と、やられっぱなしの主人公。
今回はそんな感じの第3話
楽しんで読んでいただけると嬉しいです
「…ラ……ア…シャ…」
またぶつぶつと呟く声が聞こえる。かろうじて聞きとれる言葉を繋ぎ合わせても意味が分からないものだった。
「くっ…。」
その呪文のような呟きが続くにつれてなんだか体がギュッと締め付けられて苦し…。
「苦しい?苦しいでしょ??もっと苦しんだ顔が…」
「うっさいな。詠唱の邪魔になる。あ、くそっ何処まで読んでた?」
やっぱりキャラが濃いな。ドSがいるぞ。怒られてるが。
俺は苦しみで喘ぐことすらできない。体が見えない縄で縛られたようになっているのと同時に、見えないガムテープで縛られてるようなんだ。
っていうか詠唱って何だ?呪文を読むあれか?こいつらただ頭がおかしいだけかと思ったが、現に口は動かないし。どうなってるんだ…。
「もういいんじゃないかな!ほら!もう動けないっぽいよ?ってか、これ以上やったら女王様に怒られると思います!」
手を挙げて意見を言う生徒のように俺を助けてくれた元気っ子。
女王様って何だ?これは夢なんじゃないのか?目つぶって次開けたらベットの上だった的なあれじゃないのか?
俺は試しに目をつむって3秒待ってから開いてみた。
「ああ…あちゃあ。」
俺は思わず落胆した声を…そういえば声出せないんだった。
きっと周りに聞こえたのはもごもごとして、こもった音だろう。
「あ、可哀想でござる。何やらもごもご言ってるでござるよ。せめてガムテを…。」
うわ、今度は侍かよっっ
元気っ子といい侍といい悪い奴じゃないみたいだが。
「ダメ。ったくあんたはいつも拘束を解こうとするんだから…この表情を見て何も感じないわけ?」
ドSさんがフフフっと不敵な笑みを漏らしてる。
「それと!これはガムテじゃないんだぞーえっと、あれだ!一応風属性と力の何かだった!」
元気っ子が何か説明してるけど、とりあえず俺には関係ないし、拘束が解かれる予定はないらしい。
これはやっぱり頭のいかれた新手のかつアゲかなんかだろう。まさか誘拐?それはないか。俺の家貧乏だし。
俺は諦めて今まで隙があれば抵抗しようと少し入れていた体の力を抜く。
「んじゃ、とりあえず飛ばしていこーか。さっきの人、よろぴこ♪」
どうやら元気っ子は直接俺を拘束出来ないらしい。さっきから命令ばかりしてる。
「御意。」
この人は…そうだな。強いて言えば召使的な奴だな。どうでもいいけど。
勝手にあだ名を決めたところで召使が詠唱らしきものを始めた。さっきは縄とかガムテ的なものだったけど今度は…
「うわ!」
もちろんこの声も周りには聞こえない。
が、そんなこと分かっていても声を出してしまうくらい驚いたんだ。
だって…俺の体が浮いていたんだから。
苦しくて動けないから正確には分からないけど、一メートルは浮いてるんじゃないか?
「そ、それくらいで勘弁してあげるでござる。もし落ちた時が拙者心配でござる。」
ナイス侍。あ、忍者もいいな。いや、やっぱ侍で通そう。男に二言はないんだ。
「だからね、あなたには分からないの?このいつ落ちるか分からないはらはらした顔を見るのが醍醐味なのよ。ほら、もう三メートルくらいあげなさいよ。」
ドSさんの指示で召使がさらに暗唱を続ける。
「う…拙者に何も出来ないことを許してくれ。なんなら切腹を。」
何やらキラリと光るものを手に持って言う侍。またカードかと思ったら、スラっと細身の長い日本刀が光った。
「うわ、ちょ、おまえやめろ!誰か止めろっっ」
そんな声もむなしくこもった声に変わってしまい、誰にも届かない。
「そうか、早く死ねと申すか。では…」
シャッと刃の先を自分の懐へ向ける侍。
周りにいる誰もその動作に見向きをしない。
「さ、いっくよーレッツラゴー!」
元気っ子の掛け声を聞いて召使の詠唱が何やら雰囲気の違うものに変わる。同時に、俺も何やら浮かんだまま動き出した。
「はっ…すまない。人間よ。いや、そなたは人間ではないのか…いや、今の時点ではまだ…ぐほっ」
何やら詠唱とは違うものを呟きだした侍を後ろからドSさんが豪快にけり飛ばし無理やり前に進ませる。
「さぁ、行きましょうか。」
ドSさんの素敵な笑顔もただ怖いだけです。
何で俺はこんなに落ちついてるんだろうか。なんだかこの黒い人たちが悪い人のように思えないけどな。
「あーもう!なんか歩いてくのめんどくさくない?女王様は行きは私達を飛ばしてくれたのに帰りは徒歩なのかな!?」
「…ヌ…リャメ…カ…」
召使は相変わらず何やら詠唱している。やめたらダメなんだろうなきっと。
「拙者は歩くのもまた人間の町の眺めが見れていいと思うでござるよ。」
…こいつ侍をバカにしてないか?何でも語尾に「ござる」を付ければいいと思ったら大間違いだぞ。
っていうか、眺めって言っても今見えるのはただの騒がしい街並み…。
「嘘…だろ。」
俺は自分の声がこもるのも気にしないで呟いた。
読んでいただきありがとうございました
先にブログの方で載せたところ、登場人物の人数が把握しずらい。とコメントいただきました。
私の中ではこのシーン、不特定多数の人に囲まれている。という設定です。
しかし、伝わりにくかったかと思います。
ココで謝らせていただきます。 すみませんでしたっ
感想頂けると嬉しいです