閻魔警察その1
「お母さん、なんでお父さんはじごくに行ったの?」
「さあね、拓実も大人になったらわかるようになるわ」
見慣れた天井、旧型の蛍光灯にはホコリが積もっている。
「またこの夢かよ。」
母が亡くなってから、何度同じ夢を見ただろうか。
五歳の時のことで、何故こんなことを聞いたのかすら覚えていない。
「速報です。地獄から脱獄した、谷口秋男が指名手配されました。欠損した右腕からケーブルが見えているのが特徴的ですね。見覚えがある方はお電話ください。情報提供者には百万円、身柄を確保した者には三千万円が支払われます。」
「めんどい仕事が増えちまったな。」
少し頭が痛い。そういえば今日は、友人に月にある図書館に誘われてるんだったな。
最寄りの船停に向かう
「よう拓実、また二日酔いか?」
いかにも今時の格好をしているこの男は潤哉、俺の唯一の友人だ。
「ピンポーン、大当たり」
「どんなテンションだよ。てか、また脱獄だってな。図書館なんて行って大丈夫か?」
「ああ、情報屋のとこには明日行くよ。今日くらい大丈夫だ。」
「流石は犯罪スレスレ集団の閻魔警察様だ。」
閻魔警察とは地獄における脱獄犯を捕まえる、政府非公認の組織だ。
次の宇宙船は二時間後か。
「おい、拓実!あれもしかして谷口秋男じゃねーの」
「そんなわけないだろ、指名手配犯と同じ船停にいるなんてさ」
欠損した右腕から見えたケーブル、そこにいたのは紛れもなく谷口秋男だった。




