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4 探索

私が東京の地理知らなすぎるので、実在の地名と架空の地名を織り交ぜることになりました。矛盾があっても気にしないでください。

「......ん......もう朝、か?」




転生してから1週間が経った。あれ以来、眠るときは階ごと封鎖してしまうようにしている。そうしなくては、安全に眠ることができないと分かった。


それと、銃の練習も欠かしていない。あの狼の他にも、うろついていた魔物を狙撃してみたりしている。


「にしても、探索とかそういうのしてみたいしな...」


せっかく戦闘できる力を手に入れて、自由の身というかアウトローというかになったのだから、せめて放浪とかはしてみたい。日本の津々浦々を旅し、できることならば海外も行ってみたい。船が出ていない時点で渡航はほぼ不可能な気もするが。


まぁ簡単に言えばずっとここでサバイバルするのもつまらないよねっていう話なわけで。


転生する前だって2年間引きこもり状態だったから、もう一つの場所にとどまるのは飽きたのだ。







大通りを歩きながら考える。そういえば、ここはどこだろうか。看板も道路標識もすべて倒壊している。俺は東京在住と言えど、東京の地理に詳しいわけではなかったし、恐慌の前もどちらかというと引きこもり気味の人物だった。


「とりあえず、地下鉄にでも潜ってみるかな。」




東京にある地下鉄は、恐慌以降、ほとんど開拓が進んでいない。

理由はいくつかあるが、劣化による強度問題やレールなどの足場の悪さによる地下鉄内戦闘の危険性、駅が危険組織の根城になりやすいこと、地下鉄が通っていない地域にシェルターがあることも多いため、必要性が薄いことなどが挙げられる。そのため、皇居近郊の駅から2~3駅分までの安全確認というのが現状である。


ちなみに、東京・大手町駅はその複雑さや広さから、"魔境(ダンジョン)"などと呼ばれていたりする。



近くにあった地下鉄の入り口から、中に入ってみる。

二年も経ったので当然というべきか、エスカレーターは止まり、蛍光灯は消えている。

とりあえずランタンに火をつけ、階段を降りることにする。

「若干ホラゲー感あるな。それに幽霊は出なくても魔物は出るわけだし。」

ランタンと拳銃を持ちながら、階段を下りていく。




下につくと、かなり水を含んだ泥が薄く広がっていた。

「歩きにくいな...失敗したかも。」

しかしまぁ、著しく問題であるわけでもない。戦闘でも一応大丈夫だろう。そう考えて、先へ進んでいく。

ぺちゃり、ぺちゃりと、俺が歩く音だけが薄暗い通路に響いていく。暑くはないものの。湿度が高く重い空気が漂っている。

しかし、泥で歩きにくいものの、一利がなかったわけではないらしかった。


通路の角から這いずり回るような音が響く。

恐らく魔物だろう。こういうところでは、気づかないまま魔物に近づかれることはまずない。


拳銃を持つ手に力が入る。やはり会敵前の緊張感だけは一週間たっても変わらない。

5秒もしないうちに敵の姿を見ることになるだろう。いつ入ってこられても良いように、角に照準を合わせておく。


壁の端に何かが少しだけ見えた。

その瞬間、反射的に引き金を引く。

しかし、壁に当たってしまい、結局は当たらなかった。


「ヘビの魔物...これ絶対銃当てにくいよな...」

しかしこんなときの対処法など大抵決まっている。

「【創造(クリエイト)】」

当然物量で押し切るのである。



「終わったか...」

地面に横たわる魔物を見ながらそうつぶやく。今のはかなり危なかった。体に2、3発ほど当てても全く威力が衰えなかった。

「というか、ナイフ使えばよかったかもな。」

そんなことを考えながら先に進むことにする。


もう動く気配すらなくなった自動改札を若干の後ろめたさも感じながら通過しつつ、ホームに入る。




正直もう既に失敗した感じはあるのだが、実は地下鉄が一番移動しやすいのではないかと思ったのだ。

俺は狙撃銃を持っている。そこに直線的な地下鉄のトンネルが組み合わされば楽だと感じたのだ。


線路に降りて、ずっと後ろに背負っていたスナイパーライフルを設置し、数日前に作ったライトを点けて構える。






「見えた。」


数匹見えていた魔物のうちの一匹に向けて引き金を引く。そこまで遠くもないし風もないので、そこまでしっかり狙わなくても当たる。


音によって気づいた魔物が一斉に追いかけてくるが、さすがに距離がある。撃っては狙いを変える。それだけで、今までの戦闘がなんだったのかというくらい簡単に魔物が地に伏していく。その上奇襲の心配もない。最高の環境だ。



「もう隣駅についたのか...」

思っていた以上に簡単だった。たまに後ろに意識を向けておけば、もはや無双状態。それに、そもそもトンネルだからか数が少なく、30分もあれば隣駅につくことができた。


といっても空気はよどんでいるし、ずっと暗いトンネルを進むというのも案外気が滅入った。

「もうそろそろ、地上に上がろうかな。」



そういえば、ここはある程度大きな駅だったはずだ。いくつも乗り換えがあって、駅内に店もいくつかあった。頼りにならないかすれた案内しかないこの駅で地上に行けるかと言われたら不安があった。

とりあえず改札を通り、道なりに進んでいく。


その途中で変なものを見つけた。

「これは...苔?」

心なしか、角の方が明るいようにも見える。

「もうそろそろ出口かもな。」

そんな独り言を言いながら進んでいく。


通路の奥から、溢れんばかりの光が押し寄せてくる。ランタンがあったとはいえ、ずっと暗いトンネルにいた身としては少々刺激が強かったけれど、少しずつ目を慣らしていく。




「...これは?」

元は駅と駅ビルなどとのハブの役目をしていたのだろうか。色々な道がつながっている広場があった。

天井がガラス張りだったらしく、天井から陽光が差し込んでいる。

本当ならばここからエスカレーターを使って、向こうにある出口らしきところまで行くのだろうが、ひとつ問題があった。



水没しているのである。

恐らく高さ的に3~4mくらいは水没しているかもしれない。一階にあるであろう店が全く見えなくなっていた。

水草や蔦、苔などが複雑に絡み合って繁茂しており、廃墟と化した壁やガラス窓と合わさって非常に幻想的な風景を生み出しているのだが、渡れなければ意味がない。

半分途方に暮れながら、この美しい景色に見入っていた。



私の名前は情報部個人3課、去月 紅葉(さりつき くれは)

いつもは東京シェルターの奥深くで社畜したり、先輩とわちゃわちゃしたり、時たま真面目に仕事したりしている。


そのいつもの中でも、今日は真面目に仕事をする日。


後輩のくるみちゃんと一緒に、シェルターから少し遠いところにある、麦宮駅の地下シェルター近くのビルで、1課が目を付けていた、お薬系の会に関連していると思われる人物の調査をすることになってる。


ちなみに、たいていこういうときの移動は地下鉄(徒歩)だ。配信者からしてもうま味がないし、何より暗くて危険。誰もいないことが多いので、私たち情報部が良く使う通路だ。


「で、くるみちゃんは気になってる子とかいないの?」

「もーほんとにこれだから先輩方は!そもそも職業柄出会いすらないんですからいるわけないじゃないですか!」

「いや~、先輩も私も老人だからね!かわいい後輩の恋愛事情には野次馬したくなっちゃうんだよね!」

「未成年がなにいってるんですか...出会いがないことはそっちだってわかっているでしょうに...」

くだらない会話をしながらトンネルを通っていく。音で地形がわかる(能力ではなく技術です。訓練すれば多分できます。)私たちにとってみれば、暗さなんてどうでもいい。ときたま魔物を撃ちながら、のんびり進んでいく。

「おっと、そろそろ駅だね。上がろうか。」

「了解です!」

そう言いながらホームにジャンプして登り、階段を上っていく。


そして階段を上りきったとき。



「......くるみちゃん。」

「えぇ、今日、この一帯の地点での行動申請はないはずです。」

私たちは、気配を拾った。個人行動(ソロ)の気配。

「...配信者を装って近づこう。」

「わかりました!じゃあ、私が先行くので、先輩は後ろで構えててくださいね!」

「りょーかい。」

といってもここから気配まで50mは離れているので、折り畳み式の汎用ドローンとくるみちゃんの配信(演技)を見ながら進んでいく。



「うーん、噂の絶景スポットがここらへんのはずなんだけど...迷っちゃったかも...?」

「確かにそうなんだけどね...階段がどこにあるか分からないっていうか、ね?」

「え?あ、ほんとだ!あれかも!?」


ほんとにくるみちゃんはこういうのが得意らしい。コメントなんてあるわけないにも関わらず、完璧に配信者を演じきっている。演技が得意っていいよね。


もうそろそろ正体不明のソロに声が聞こえる位置だろう。

さて、ソロはどう動くだろう?


...結果は、かなり驚いて隠れた。素人だね。でも、地下鉄の構内深くまで入れるってことはある程度武器を持っているっていうことでもある。

まぁ引き続き、距離をつめようか。



声が聞こえた。

咄嗟に振り替える。

気のせいだったわけではないらしい。陽気な声と足音が聞こえてくる。配信者だろうか?とりあえず急いで隠れてやり過ごすことにする。

「あ、あれじゃない?あの噂の絶景スポットって!絶対あれだよ!」

正直、かなりてんぱっている。転生してから一週間、人とも会っていないし人と会うつもりもなかった。案外対人恐怖症的な状態になっていたのかもしれない。いざというときは申し訳ないけど、脅して立ち去ろう。俺は一人で行動したいのだ。

「うわ...想像以上じゃん...!ありがとね、噂くれたリスナー君...」

聞いている感じ、俺に気づいた様子は全くないらしい。やりすごせるといいが、銃は持っておく。

「でも、かなりの移動だったから疲れたね。ここでちょっと休憩にしようか!いい感じに景色が見れる場所...そこの瓦礫にしよっか。」

その配信者が指をさした場所は、ちょうど俺がいるところのすぐ近くだった。そこで休まれれば、必ず見つかるだろう。最悪だ。


先手を取るしかない。

「手を挙げ「って、美少女じゃないですか!」......え?」

いつのまにか配信者の彼女は私の後ろに回っており、手を拘束されていた。

「いや、すみませんね。ちょっとこちらにも事情がありまして。実は私、東京中央治安組織(TCSO)の巡査なんです。私もこんな美少女に傷をつけたくないのですけど仕事なので...ね?」

「...どういうこと?」

「このあたりの行動申請は一件もなくてですね。事情聴取をしないといけないんですよ。そのうえで、特別な事情がなければ一緒にシェルターに戻ることになります。」

...やばい。俺は一人で行動したいのだ。またシェルターに戻るのは嫌だ。

「...で、なんでこんなところにいたんですか?」

これはうまく嘘をつくしかない。

「...ちょっと遭難しちゃってね。うまく移動してたんだけど、ちょっと迷っちゃって。」

「......へぇ?......まぁ一旦そういうことにしておきましょう。」

やばい。全く信じられていない。事情聴取でうそをついたらかなりやばめの尋問をされるというのは有名な話だ。



警察の少女が、ポケットからボールペンと手帳を出し、おもしろいことに片手だけで手帳を持ちながら書いていく。もちろんもう片方の手は私を拘束している。

少女の力はかなり強い。でも、片手だけなら同じく少女の俺でもどうにかなるかもしれない。

一瞬のすきを見て、勢いよく手を振りほどく。

「え、あ、ちょっと!」

実は今に至るまで、なんだかんだで一回も使っていなかった鉤爪移動(ワイヤームーヴ)を使ってみることにする。

エスカレーターのあった位置まで走って移動し、飛び降りる風を装って前方に大きくジャンプしながら、手を伸ばす。

「【鉤爪移動(ワイヤームーヴ)】」

手のひらから、縄のついた鉤爪が出てくる。そして鉤爪はそのまま向こう岸の天井のパイプに引っ掛かり、俺の身体は勢いよく引っ張られた。

「...案外これ楽しいかも。」

そう言いながら、何かを言っているあの少女を一瞥し、走っていった。



「逃げられちゃいましたよ先輩...どうしましょう...」

「まぁまぁ、くるみちゃんは美少女に目がないからね。私が見ても一瞬ドキッとするレベルの美少女だったし。」

くるみちゃんがちょっと涙目になりながら言ってくる。くるみちゃんはまだまだ新人だし、こういうことはたまにある。

「まぁでも今はもとの任務に集中しよっか。一段落したら、あの美少女の件についてとりかかろう。」

「はい...」

そう言って、私たちはまた歩き出した。


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