君を運ぶのは、俺だけでいい
今回のクラス対抗イベント練習では、二人の気持ちが隠しきれなくなるような甘い展開をお届けします!
ぜひ最後まで楽しんでください!
あの帰り道のことを思い出すたび、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
「黒崎くんは私と帰るの!」なんて、大声で叫んでしまったことが信じられなくて、布団の中で何度もバカバカと枕を殴った。
(なんで、あんなこと……)
涼はあのあと一緒に帰ってくれたけど、気まずい空気のままほとんど会話もなくて、心臓が苦しすぎて頭も回らなかった。
別れ際に「おつかれ」と言い合っただけで、それ以上の言葉は出なかった。
それでも、涼の大きな背中を見送りながら「やっぱり好きだ」って痛いほど思い知らされた。
次の日。
今日から学年行事の「クラス対抗フェスティバル」の練習が始まる。
走るだけじゃなく、借り物競走やクイズリレー、玉入れなど種目は多岐にわたる。
得意不得意が混ざるから、クラス全員で力を合わせないと勝てない行事だ。
教室に入ると、涼は自分の席で窓の外をぼんやり見ていた。
私が近づくと、気配を察したように顔を向けてくる。
目が合った瞬間、お互い慌てて視線を逸らしてしまった。
(もう、何やってんの私……!)
机に突っ伏していると、斜め前に座っていた悠真がニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「なあ彩ちゃん、昨日の放課後の声、廊下まで丸聞こえだったけど?」
「はっ!?」
「『黒崎くんは私と帰るの!』って、クラス中に知れ渡ってるぞ〜?」
悠真は半分呆れながらも面白そうに笑っていた。
周りの友達も「えー!何それ!」と盛り上がり、教室は騒然とする。
「な、なんでもないってば!」
「彩、顔赤いぞ?」
「う、うるさい!悠真のばか!」
顔から火が出そうで、制服の襟を掴んで顔を隠す。
ちらっと涼の方を見れば、彼も耳まで赤くなって机をトントンと指で叩いている。
(涼も……意識してるの?)
心臓が跳ねた。嬉しいのか恥ずかしいのか、自分でも感情が整理できない。
学年行事「クラス対抗フェスティバル」の練習時間になると、クラスメイト全員が校庭や体育館に移動して、クラス対抗の種目ごとのペアや担当を決めることになった。
「ねーねー!黒崎くんと彩ちゃんペアでいいんじゃない?」
クラスの女子が無邪気に提案した瞬間、「おおー!」と一斉に盛り上がった。
男子も「それ一番面白い!」と声を上げ、あっという間に話が決まっていく。
「ちょ、ちょっと待って!」
「お前ら以外にペア候補いないだろ?」
「幼なじみだし、二人三脚でも借り物競走でも絶対強いって!」
悠真まで「これは見ものだわ〜」と楽しそうにからかってきて、断れる雰囲気はゼロ。
結局、彩と涼は「二人三脚」「借り物競走」のペアに強制的に決まった。
視線を合わせられないまま、二人して顔を真っ赤にして固まるしかなかった。
(なんでこうなるの……でも……嫌じゃない、むしろ……)
自分の心の中に嬉しさがじわっと広がる。
けれど、その気持ちを認めるのが恥ずかしくて胸の中でぐちゃぐちゃになった。
休み時間、校庭でのクラス対抗フェスティバル練習。
「借り物競走」のペアとして彩と涼が呼ばれた。
「次は黒崎・坂倉ペア!」
担任の掛け声で、二人はスタートラインに立った。
お題カードを引くと、そこに書かれていたのは《好きな人》。
「……っ!?」
文字を見た瞬間、お互い息を呑んで固まった。
周囲から「えー!やば!」「誰に借りるの!?」と盛り上がる声が飛ぶ。
悠真まで「これは見ものだな〜」とニヤニヤしている。
「ど、どうする……?」
「……お前……」
涼が小さく笑った次の瞬間、しゃがんで私の体を抱き上げた。
制服のスカートがふわりと揺れて、私は涼の腕の中――お姫様抱っこされていた。
「俺が彩を連れてゴールする。……お前の“好きな人”としてな。」
「~~っ!!?」
耳元に低くて優しい声が響く。
涼の胸に抱かれたまま走り出した瞬間、心臓は爆発しそうに高鳴った。
「やばすぎ!!」「お姫様抱っこだって!!」「黒崎くんイケメンすぎ!」
クラス中が悲鳴混じりの歓声で湧き上がる。
涼の力強い腕、頬が触れそうな距離、耳元にかかる彼の息――
全部が熱くて、目を逸らせない。
「お、降ろして……!」
「嫌だ。彩は俺が運ぶ。お前が好きだから。」
涼の腕にしっかり抱かれて、胸に顔を埋めるしかなかった。
心臓の音はうるさすぎて、自分の気持ちを隠せない。
(黒崎くん……私も……)
ゴールラインが近づく。
ゴールした瞬間、どっと歓声が上がった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
今回は思い切ってお姫様抱っこシーンを入れてみました
書いていて自分でもドキドキしましたが、皆さんも楽しんでいただけたら嬉しいです!
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次回も甘い展開を予定しているので、お楽しみに!