醜美逆転、男女比1対45の世界で・・私は生きて行く
いつも、同じ夢を見る。女が私を覗きこんで、名を呼ぶ。
『秋、秋ちゃん』
私は『キャ!キャ!』と喜んでいる。
夢で優しい女の人の顔を見る。顔は黒くて見えない。それが何なのか分からない。
「おい!ブス!いつまで寝ている!起きろ!!外に行け!」
しかし、男の怒号で目が覚めた。今日は日曜日、いつもよりも遅くまで寝ていた。
休刊日、新聞配達のバイトは休みだ。
「はい・・・お父様」
また、お父様が男を連れ込む。
私は・・・丸山秋、今年中学三年生だ。
また、パン屋に行くか・・・
「おばさん。パンの耳余っている?」
「・・・はいよ」
無料でくれるよいおば様だ。
「秋ちゃん。辛いけど・・」
「分かっている。高等学校選抜適正試験、不合格だから、自衛軍か、工場、農場、就職組だよ」
「ならいいけど」
中学校に行けば、男親と別れる事が出来る。
学校に行くと、親が来ていた。
生徒指導室から出てきたところをばったりあった。
「お、秋、家にカップ麺があるから食って良いぞ」
「はい」
おかしい。上機嫌だ。
いつも威張っている学年主任も腰を90度にして、父を送る。
ここはそういう世界だ。女は男に頭が上がらない。
中学卒業後の進路は、就職組は60パーセントだ。
就職組は、それぞれ配置場所を発表される。
それに、私にとっては、スマホを授与される日だ。
「丸山秋君、旧式のスマホだ。これに口座も一体化しているから大事に扱うように。新しい物が欲しかったら給与で買えるよ」
「はい!やったー!」
これで一等市民になれる!現金を持ち歩かなくても良い。義務教育の女は市民見習いだ。
配置も決まった。
しかし、配置先は・・・希望では無かった。
「丸山秋!四ツ橋重工業土居中工場に配置!」
「・・え、は・・い」
地元だ。家から通える距離だ。私は寮に入り父と別れたかった。
土居中工場の社員と面談する。
「あの、寮は?寮に入れるのですよね」
「いいえ、貴方はお父様からの希望で、家から通うことになります」
「そ、そんな」
父は何を考えているのだろう。あの時、先生に希望を言ったのか・・・
工場に出社したら、驚きの数々だ。
「ここが食堂だ!料金は給与から天引きになる!」
「・・・白米?白いご飯だ」
「丸山さん。さすがに、それはないよ。いくら食料不足でも、白米は食べられるよ」
「シィ!丸山さんの親は男様だよ」
「え、そうなの。ごめんなさい」
私は、白米を食べられて、みるみる体が大きくなった。
でも、未だに小学生に見られる。
何故、親が私の配置先に口を挟んだが、分かったのは給料日だ。
「うわ。14万円も振り込まれている!」
「皆、遊びに行こう!映画館に行こうよ」
「いや、射撃場だよ!」
「じゃあ、映画見て、夜は射撃大会しようか?」
私はその日、同期の皆と遊んで、夜遅く帰った。
「今、帰りました・・・」
バチン!
殴られた。いつもの事だ。男娼に捨てられたか?
「ブス!給料日だな。スマホを貸せ!」
「え、なんで」
「何だ。もう、今日一日で1万円も使ったのか?無駄使いをするな!!振り込みっと」
「な、なんで!」
スマホを奪われ・・口座には、1万円しか残っていなかった。
「ほら、お小遣いだ。これからもずっと親孝行をするんだぞ!お前の面倒をみてきたのだからな!お前はこのために引き取ってやったのだ!」
え、また、この男にお金を渡すの。義務教育を卒業したら、給料を渡さなくて済むと勝手に思っていた。
「お前はブスだから、一生、男に好かれる事はない。精子バンクで買うのがせいぜいだ。そうだ、早く妊娠させて、子を作らせて・・・」
ブツン!
視界が真っ暗になった。
記憶がない。
・・・・・
気がついたら男親は床に這いつくばって
「ゲホン!」「グヘン!」と言っている。
ああ、そうか。頭を掴んで床に打ち付けたのか。
ピーポー!ピーポー!
「警察だ!通報があったから来たが、男性傷害罪容疑で逮捕する!」
「いや、もう、亡くなられている!男性殺害罪だ!」
それから、裁判を受けた。
この国で重罪の代名詞は男を殺害した罪だ。死刑しかない。
弁護士という者がついたが・・・
「ええ、丸山秋さんは幼少の頃、被害者が精子を提供した女性から強制的にさらった子どもで、違法状態にあったわけなのです。その事を考慮されたし」
え、私に母親がいたのか?
しかし、あっという間に判決が出た。
「主文、被告を死刑にする!理由、貴重な男性を殺害し、国家的な損失を与えた事・・・・」
☆☆☆
私は銃殺刑に処せられる事になった。
独房に入れられ、執行の日を待つ。
「0009番、出ろ!」
手錠をかけられ、一室につれて来られた。
そこには、自衛軍の制服を着た女性がいた。あの階級章は将校だ。在校軍人は曹長だ。テレビでしか見たこと無い。つまり、とても偉い人だ。
「やあ、かけたまえ。刑務官殿、彼女の手錠を外してくれないか?」
「いや、しかし・・」
「自衛軍の尉官が、囚人一人に不覚を取ると?」
「いえ、それでは、私が護衛します」
「いらない。終わったら呼ぶから席を外してくれ」
カチャ!
手錠を外された。
女は自己紹介を始めた。
「私は自衛軍参謀本部2部別班担当の香山利香だ。階級は中尉、29歳、家族構成は母親と、公務員の妹がいるよ。父は精子バンクだ」
「はい」
何故、家族構成を言うのだろう。
「君は中学の時の軍事教練でC判定・・・しかし、それは栄養失調で集中力が足りなかった。15歳、伸びしろがある。
刑務所の食事は?」
「はい、美味しいです」
「ハハハ、ここの食事はD級食だよ。よっぽどだね」
何故、談笑をするのだろうか?
「君、簡単に言うと、魂を売らないか?別班に入れ。死刑は執行された事になる」
「そんなこと可能ですか?」
「可能だよ。別班は死人部隊だ。何かあったら、容易に切り捨てる。
しかし、別の身分を用意するし住むところも用意するし、給料も払う。
どうかな?」
「嫌です。死刑になりたいです」
「・・・そう、独り言、君の男親は、君を誘拐したのだ。母親からね。君が成人したら働かせて、お金を取るために、今、実子誘拐が問題になっているのだ」
日本国は男性に保護費を支給している。これは分かるね。
結婚したら男は女の扶養にはいるよね。そして、精子を提供して子供が生まれたら、即離婚して、子供を引き取って、自分の子として育てているのが流行している。
「それは、誘拐じゃないか!?」
「そうだよ。親権を持っている女性が裁判所に強制執行判決をもらっても、実質、執行する事が出来ない。厳格な要件があるからだよ。
片親、男親がいるときに子供を連れ出さないといけないとか・・・ね。これは諸外国でも問題になっている。外国ならすぐに指名手配案件だ」
「もし、君が別班に入ったら、実のお母様と会えるかもしれない」
「わ、私・・・」
夢で見た女性だ。顔を近づけて微笑んでくれた女性だ。きっと母親に違いない。
「や、やります!」
「うん。いいね。じゃ、君はこれから家族になるよ。宜しく、名前は新しくなるよ。何がいい?」
そうか、生まれ変わるのか。
「○×(まるばつ)アキでお願いします」
「え~、まあ、いいか。戸籍官にねじ込むけど期待しないでね」
「はい、宜しくお願いします」
何故か、変な名字を思い付いた。男親の姓は名乗りたくないが、名は母親がつけたものかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・
東京で訓練を受けた。
自動小銃は中学で習ったから使える。
ここでは主に拳銃、暗号、格闘術。
「おお、アキは、素早いな!」
ナイフ術は優で合格した。
この任務、拳銃を使う。
銃撃は並だ。
「やっぱり、この子、暗殺に向いているよ」
「有難うございました」
驚いたのは、豪華な食事だ。
「一日1000カロリー計算だ」
「はい、これは肉?」
「そうだよ」
初めて生理も来た。
「血!血が!」
「あ~、そうか、そうか、そうだよね。ナプキンの使い方教えてあげるから、トイレ行こうか?」
香山中尉に教えてもらった。
・・・・・・・
初任務前に、髪型を変えるように言われた。
「う~ん。アキちゃんはツインテールにしようか?」
「ツインテール?」
「そう、君は可愛い。それに、幼く見える。まさか、小学生くらいの子が、義務教育を卒業したとは思わないもの。偽装だよ。ならったよね」
香山中尉に髪型を整えられた。
それは・・・
「う、うわーーー」
「可愛いよ」
さすがに、私は自分の事はブスと分かる。
「中尉、それは嫌みになります」
「うんにゃ、大災厄前は、君みたいな子がモテたのだよ。昔のラノベ、見せてあげようか?」
「良いです・・・」
大災厄、100年前に、細菌兵器が使われ、男が多く死に、残った男も同性愛傾向が強くなった戦争の事だ。
それ以来、日本国の男の人口は200万人を切ったと習った。
・・・・・・・・・
それから、私は先輩達と任務に励んだ。
☆都内某所
「真理恵―――――!」
「ママー!」
「えへへへ、親権なんて、しったこちゃねえ。子供養育費補助をもらうぜ」
私はこの体躯を生かして、男の前に飛び出る。
「うお!」
ドタン!
「お前・・」
「ヒィ、グスン、男様ごめんなさい」
「ブスだな!」
倒れた隙に先輩達が子供を保護する。
しかし、良くもまあ、実子誘拐の日時が分かるものだ。
「フフフ、わる~い弁護士がいるの。男達に実子誘拐を指南しているのよ。その弁護士事務所を別の班が盗聴しているのよ。メールも筒抜けよ」
「先輩・・弁護士って、女?なのに、何故?」
「一枚岩じゃないってことよ」
私のバディになったのは漆原道子さん。この方も同じくブスだ。
ウエストがくびれ。胸が出ている。目は二重で顔は小さい。
何故、ここにいるのか?ここにいる要件は男に憎しみのある者だ。過去は聞かないのがお約束だ。
時に、男達は、集団で来る事もある。
その時に、漆原さんは、男達の前に出て、服を脱ぐ。
「「「「オエー!」」」
「キモいーーーーー!」
「フフフフ、あ~ら、男様たち。見て下さいませ」
男達の本能は女体を恐れるまでになった。
半年ほど、実子誘拐を阻止していたが・・・
「男児がいない・・」
「ええ、男は圧倒的に少ないですからね。男児を産めばセキュリティーの高いマンションに入れますから、狙うのは労働力になる女児なのでしょう」
しかし、ある日、赤ん坊の実子誘拐に遭遇した。
「オギャー!オギャー!」
「ですから、この子の親権は私にあります。それに、保良さんに乳幼児の世話ができるのですか?」
「フン、寄越しなさい!」
目の前で実子誘拐が行われた。インカムがなる。
‘‘ピピピピ~~~!任務中止!’‘
しかし、任務が中止になった。
何故?
「あ~ら、アキちゃん。あまり立て続けに、妨害すると・・・盗聴がバレるのよ」
「でも・・・」
あれは過去の私だ。
「アキちゃん!」
私は男の前に出た。
転ばせたら赤ちゃんが危ない。
なので、ナイフを取り出し横に構え・・・あばらの間を通す。
その時。
「あ~ら、暑い、暑いわ~!」
漆原さんが上半身を脱いだ。
「ウゲ!」
その隙に赤ちゃんを取り上げ。母親に渡す事が出来た・・・
「有難うございます」
「引っ越しをして下さい。しばらく、住民票を移さないで・・」
・・・・・・・
それから私は香山中尉に呼ばれた。
執務室で、両肘を机につき手を組み、その上に顎を乗せている。自衛軍では行儀の悪い仕草だ。
「う~ん。困ったね。これでバレたら、もう、実子誘拐が分かるルートがなくなっちゃうな~」
「処刑して下さい」
「そーだね。君はクビだ。農場にでも行きたまえ」
私はそれから、集団農場に行かされた。処刑はされなかった。
軍馬県の稲作農場だ。
「はい、今日から来た。無戸籍のアキだ。1から農業を教えてやれ」
「「「はい」」」
「何だ。女か・・まあ、仲良くやろう」
「じゃあ、今、農閑期だから、あそこで、雀を追っている丸山さんにお茶でもあげてよ。挨拶するんだよ」
「はい」
「少し、気がおかしくなっているからな。実子を誘拐されたのだ。それで気に病んで・・」
私はお茶を持って、丸山さんの所に行った。
椅子に座り。精米所に群がる雀を竹箒で追い払っていた。
やらなくても良い仕事だが、世の中、そうなっている。女には保護費は支給されない。
「初めまして、アキです・・・あっ」
「ああああっ、秋、秋よね。右肘を見せて、火傷の痕が・・ある。あるわ!」
顔がそっくりな女性がいた。
「ごめんね!ごめんね!ごめんね!」
「母さん!お母さん!」
パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!
「いや、似ていると思ったんだ」
「やっぱりそうか・・・」
「良かったな」
私はここで母親と過ごすことになった。
父親は、借金をするために、母の姓を名乗っていたようだ。
それから、すぐに、新聞に共同親権発令、執行法関係の法令も改正と出ていた。
つまり、もうすぐ、私の役目は必要なくなったのだ。
そう言えば、香山さん。私と会ったときに、私の身上を知っていた。
もしかして、母さんのいる農場も知っていたのか・・・
中止命令も私が無視したら農場に行かせるための方便?それはどうか分からない。
しばらく、お母さんと暮らして、香山さんに所に行き真意を聞こうと思う。
出来たら、この世界で虐げられる者のために働けたらと思う。
最後までお読み頂き有難うございました。