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第壱話 「さあ!私と共に異世界を救うぞ!少年!」

初めましてゆずきと申します。小説家になろうに投稿するのは今回が初めてで、まだ分からないものも多いので温かい目で見ていただけると幸いです。誤字脱字、意味が分からない文などがあった場合指摘していただけると幸いです。

またつまらなかった場合や不適切な文があった場合、どこがつまらなかったか、◯◯が不適切!など指摘していただけると幸いです。

周囲には炎が広がっていた。自分の家だけではない。道路脇にある木や花、近くにあった公園さえも炎はそれを覆い尽くしていく。周囲に人の姿はなく、自分と焦りだけが残っている。それに家族も見当たらない。額から顎にかけて汗が滴り落ちる。


家族を探さないと。少年は駆け出した。息を切らせ、ただひたすらに家族の名を叫んだ。呼吸をするたびに喉が焼けるような痛みに襲われ、体も火に焼かれどこもかしこも痛みを訴えている。だが叫ばなくては。


? 「父さん!母さん!シホ!どこだ!?返事をしてくれ!」


だがどれだけ叫んでも虚空に響き渡るのみ。次第に喉も枯れ、立っていることすら叶わない。周りの炎に囲まれ、今炎に体が包まれようとしていたその時。黒い煙の中から巨大な漆黒のロボットが姿を現した。目元のバイザーがキラリと光り、こちらを覗き込んでいる。


? 「フッ...さぁ!私と共に異世界を救うぞ!少年!」


ここから始まった。俺と、この変なロボットの物語は。




とある高校の昼休み。黒髪の少年紅ユウキは黙々と弁当を食べていた。母親特製の焼き魚弁当だ。開けた瞬間の匂いはお世辞にもいい物ではなかったが口に入れてみると塩味の効いた魚が食欲を誘う。


? 「ユウキの弁当、魚って珍し!ちょっと貰うぜ〜」


そう言いユウキの友達、ヤマダは箸を弁当に伸ばした。直後、ヤマダは満面の笑みを見せた。


ヤマダ 「うっま!口の中に広がる塩味と魚の身の柔らかさが口の中でよさこいを踊ってやがるぜーッ!」


ヤマダは饒舌に食レポを完走した。その食レポを耳にした周囲の人々はユウキの弁当箱を覗き込み、次々と奪い取っていく。そして弁当箱に残ったのは魚の皮のみ。視線をヤマダに送ると笑顔でグッドサイン。正直、苛立ちが勝りかけたが胸の内にしまう。


ユウキ 「あのなぁ、俺の弁当、魚しか主食がないんだよ!米だけじゃ厳しいっつーの!」


ヤマダ 「ふっふーん。ならばこれを喰らええい!」


弁当箱の中に何かが入った。これは、ゼリー?まさかの主食ではなくゼリーを入れてくるとは。だが他の人々も次々と弁当箱の中に食材を入れていく。唐揚げやパスタ。中にはトマト一個だけ入れていく不届き者もいたが次第に弁当箱の中はいっぱいになった。


彩りだけは豊かだが、すべての食材の主張が激しい。それでも食べるのだが、意外にもイケた。


学校が終わり、帰宅中のユウキ。今日は午前授業でラッキー、と独り言を言いながら帰り道を歩くと見覚えのある女の子が目の前から歩いてきていた。そしてこちらに気がつくと鋭い眼差しでこちらを睨みつける。


目の前の女の子───もといユウキの妹、紅シホ。最近、親との喧嘩で対立し、家の中でもめっきり姿を見かけなくなったが外では元気にしているようだ。


シホ 「あ、お兄ちゃん私の荷物家に持ち帰って。今から友達と遊んでくるから」


そう言いながらシホはユウキにバッグを投げつける。後退りしながらキャッチしたバッグはどこか重たい。


ユウキ 「ちょっと待てよ、シホ」


横切ろうとするシホにユウキは声をかける。振り返った視線は依然として鋭いままだが臆することは無い。


ユウキ 「どこに行くんだ。お前、学校はどうしたんだ?今日は午前授業じゃないはずだけど」


今の時間はまだ昼過ぎで中学生が帰る時間とは到底思えない。だがシホから帰ってきたら言葉は反発の意思だった。


シホ 「うるさいなぁ!別になんだっていいだろ!バカ兄貴!」


その言い方に少しカチンときたユウキだったがこの程度の罵倒は日常茶飯事だ。ユウキは兄として毅然とした態度でシホに言い返す。


ユウキ 「シホ、サボりを悪いとは言わない。だけど面倒臭いからという理由だけで行かずに、遊び呆けるのはどうかと思うぞ」


だが本人には気にも留めていない様子で鼻で笑い、その場から走り去っていった。何故ここまで話を聞いてくれないのか。ユウキは深くため息を吐いた。胸にモヤモヤが残りながら家へ向かって歩き出す。


家に着いたが中には誰もいない。両親共にまだまだ仕事だ。ユウキの両親は共働きで帰ってくる時間も極めて遅い。基本的に自分達が起きている時間には帰ってこない程だ。そのせいで妹はああなったのだが。


ユウキ 「はぁ...ちょっとばかし寝るかな。妙に体が重いし」


重い体を後ろに倒し、ソファに寝転がる。頭の後ろに腕を回す。家に帰ってきたシホに怒られそうだなと思いながら目を瞑ると、激しい眠気に襲われた。そのまま目を開けることなくユウキは眠った。


数時間経ち、寝息を立てているユウキ。だが何故か息が詰まるように感じる。それに異常な暑さも。目を擦りながら開けると目の前にはメラメラと燃え上がる炎が間近に迫っていた。


ユウキ 「うわぁ!?」


ユウキは思わず声を上げる。驚き、周囲を見ると家全体が燃えていた。それだけではない。外が異常に暗いのだ。外に見えるのは燃え上がる火の粉のみ。だがユウキは異常なほど落ち着いていた。自分でも驚くほどに。


口と鼻にハンカチを押し当て、階段を駆け上る。もしかしたら部屋の中にシホがいるかもしれない。燃え上がる炎を避けながら、階段を一段飛ばしで走り抜ける。


ユウキ 「シホ!父さん母さん!いるのか!?」


ユウキは叫ぶ。だが返事はない。念の為に部屋の中を確認したいが扉が燃えていてとてもじゃ無いが触れることはできない。少しだけ心が痛んだが扉を蹴破って部屋の中を確認する。部屋の中には煙が充満していて見づらいが人の気配はない。自分の安全のためにも一度外に出たユウキ。


だが外を見ると何かおかしい。あまりにも静かすぎる。自分の家だけじゃなく他の家も燃えているというのに逃げる人の影も形もない。どうしても違和感を拭い切れないが今はそんな事を考えている場合では無いと、ひたすら前へ前へと走り出した。


ユウキ 「母さん!父さん!シホ!どこだ!返事をしてくれ!」


だが虚しくもその言葉は闇に呑まれ返事が返ってくることはなかった。そして直に体は膝から崩れて、倒れそうになる。炎がユウキを包もうとしたその時、巨大な黒鉄のボディのバイザーが黄色に光る。


? 「フッ...さぁ!私と共に異世界を救うぞ!少年!」


ユウキ 「...は?」


直後、ユウキは巨大な手のひらに握りしめられる。全身を複雑骨折したかと思うほどの衝撃だったが痛みは不思議とない。握りしめられたまま、ユウキはその謎のロボットのコックピットに投げ入れられる。


中は思った通りメカメカしく光っているゲージや操縦桿、そして周囲の景色が映し出されている。


全天周モニターってやつか───そんな呑気な事を考えていると唐突に前へと加速する。そしてコックピット内に声が響く。


? 「さあ少年!準備はいいか!」


謎の声はユウキに問いかける。だがユウキが返事をすることを気にもせず際限なく加速していき、眩い光に包まれ目を開ける事ができなくなる。


戸惑いながらもユウキは目を瞑り、この謎のロボットに身を預ける事にする。そして随分と長い間目を瞑っていると、目の前の眩い光は少しずつ落ち着いて行き、今なら目を開けられそうだ。


光に目を慣らすようにゆっくりと目を開く。すると周囲に広がっていた景色は───声を出せないほど巨大な城と街。だがどこか見覚えがあるような、言いようのない懐かしさがある。だがまじまじと街を見ているほど余裕は無く、街の上を飛び去っていく。


そしてこの機体の全長を優に超える城の前に着き、ぴたりと停止した。


? 「少年。まずは状況の整理をしようでは無いか。私と!熱くな!」


そう言い、このロボットは目の前の大きな扉を指差した。この城の入り口のようだ。


ユウキ 「なん...なんだコイツ...!?」


この変なロボットの言う事に従いたくは無いが、さっき言った事が本当ならここは異世界。この場所から逃げてドラゴンやゴブリンに殺されるのも癪だ。今はひとまずこのロボットの言う事に従い、ユウキは目の前の扉を力一杯押した。


その扉は低い音を出しながらゆっくりと開く。中に入ると目の前には王様が...なんて事はなく何も無い部屋があった。


イメージと違う光景のユウキは戸惑う。するとさっきのロボットが扉越しに話しかける。


? 「その部屋の奥の扉を開けたら謁見の間だぞ少年。謁見の間の意味は分かるな?」


ユウキ 「要するに王様みたいなのがいるって事だろ。言われなくても分かるっての」


そんなことを言いながらも内心少し緊張しているユウキだが意を決して扉を開ける。すると案の定と言っていいのか、イメージ通りの風景がようやく広がった。異世界の城といえばこれだと言わんばかりの内装と目が痛くなるほど赤いカーペット。


思わず入ることを躊躇ってしまうほどの場所だ。とても自分がいていい場所では無いように感じる。


? 「勇者様。こちらです」


その場で立ち尽くしているとすぐそばにいた甲冑に身を包んだ人に手を引っ張られる。王様の目の前まで連れて行かれ、甲冑の人は礼をし、謁見の間から出ていった。すると王様は話を始めた。


王様 「よくぞ来てくれた。勇者よ。ここに来てもらったのは他でも無い、君の力を貸してほしいからだ」


勇者。そう呼ばれると嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い気持ちになる。本当に異世界に来たんだなと少しずつ胸が昂る。


王様 「現在、我が国『イリュノラ国』は危機に瀕している。いや、我が国だけでは無い。他の国どころか今や世界に危機が迫っている。


王様の眉間に皺がよる。どうやら只事では無いようだ。


王様 「そこで君に協力してもらいたい。己の力を磨き、この世界に現れた謎の生命体を殲滅してもらいたい!頼めるか?」


ユウキ 「え〜っとですね...一旦話を色々聞きたいんですけど...いいですか?」


正直、今の話を理解できたかと言われるとYESとはいえない。世界の危機?それも謎の生命体?よく分かってないものに首を突っ込むほど馬鹿では無い。


王様 「うむ。分かった。君が分からないことを存分に聞きたまえ。私はそれに答えよう」


ユウキ 「まず謎の生命体ってなんですか?ゾンビとか?ドラゴンとか?はたまたウイルスとか?」


王様 「どれも違うが...その全てが合っているとも言える」


王様は曖昧にそう答える。なんとも思わせぶりな言い方である。


ユウキ 「と言うと?」


王様 「実のところ、それは毎度姿を変えているのだ。ドラゴンや人、前は武装人機に扮したこともあった」


また知らない単語だ。すかさずユウキはその言葉について問う。


ユウキ 「すみません。武装人機って...」


王様 「この世界にある人型のロボットだ。我が国では和風をモチーフにしているぞ。日本刀を持ったり、火縄銃を模したライフルだったり───」


ユウキ 「おっけーす!ありがとうございます。話を続けてください」


王様 「む?そうか。ならば話を続けよう」


すると王様はその謎の生命体の正体を憶測も交えつつ説明した。


王様 「恐らくだが奴らの正体はあらゆるものに寄生し操るアメーバのようなものだと考えられる。名はまだ無いが我々は仮の名前として『傀儡』と読んでいる」


ユウキ 「傀儡ですか...で、その傀儡って奴を倒せばいいんですか?」


王様 「うむ。君にはブジンカイザーとともに傀儡殲滅任務の隊長を受け持ってもらいたい」


ブジンカイザー?なんだそれは。そう思った次の瞬間、豪華な装飾がされた壁を破壊しながら例のロボットが現れた。そして胸を張りこう言った。


? 「ついに私の出番と言うことか少年!君の心からの呼び声に私は答えようではないか!」


ユウキ 「...もしかしてブジンカイザーって言うのは...」


? 「私だぞ!少年!」


ユウキ 「どうしてだよ!」


あんなにキモチワルイロボットが自分の乗るロボットなんて信じられない。


王様 「今日から彼が君の相棒だ。よろしく頼む勇者殿」


ユウキ 「そう言われたらやるしか無いけど...」


よろしく頼むと言われても断れる人間などいない。だが本当にこの変なロボットと戦わなければならないのか?そもそも家族はどうなったのか。流れるまま世界を救うことになったが、元の世界に帰れる保証もないのに何故引き受けてしまったのだろうか。


ユウキは思わずため息をついた。


ブジンカイザー 「さあ私に体を任せろ少年!今こそ乗り込む時だ!」


次の瞬間、ブジンカイザーのコックピットハッチが勢いよく開く。王様に目線を送るが向こうからは信頼の眼差しを送られている。どうやら乗り込むしか無いようだ。ユウキはコックピットハッチに足をかけ、シートに腰を落とす。


コックピットハッチが閉まり、ブジンカイザーは天高く飛び上がった。


ブジンカイザー 「フッ...さぁひとまずはトカゲ狩りと行くか!」


そして颯爽と空を駆け出した。


ブジンカイザーがどこへ行くのかは知らないが、もはやどうでもいい。この場所からは逃げられないということに気づいてしまったからだ。ユウキはここまで流れるまま来てしまったことを深く後悔した。


もしかしたら元いた日本で家族が苦しんでいるかもしれない。それなのに自分は変なロボット、ブジンカイザーとかいうものに乗り込んで意味があるか分からない手助けをしている。


ブジンカイザー 「少年。あれが今回のターゲットだ」


ふと顔を上げるとそこにはドラゴンが居た。所謂、ワイバーンと言う奴だろうか。腕そのものが翼になっていて短い足に長いしっぽ。だが何か様子が変だ。目が発光していて、暴れ回っている。それに体の端から緑色の液体のようなドロドロとしたものが流れ出ている。


ブジンカイザー 「緑色の液体が見えるか?あれが傀儡と呼ばれるアメーバ状のものだ。あれに操られている者を倒すのが私達の仕事ということだ」


ユウキ 「なんか...かわいそうだな」


直後、そのドラゴンは叫び声を上げ、ブジンカイザーに突撃する。ユウキは反応しきれず攻撃をモロに喰らいそうになったがブジンカイザーがひらりと回避した。


ブジンカイザー 「少年!ちゃんと操縦桿を握るのだ!」


ユウキ 「操作とか分かんねえよ!一体どうすれば───」


ブジンカイザー 「来るぞ!」


再びドラゴンは叫びながら体当たりを仕掛ける。ユウキは咄嗟に操縦桿を握る。そして右に操縦桿を動かしなんとか回避する。


ブジンカイザー 「いいぞッ!少年!」


だが逃げているだけでは戦いは終わらない。咄嗟にユウキはドラゴンの胸目掛けて蹴りを繰り出した。


すると見事に命中し、ドラゴンは悲鳴を上げる。


ユウキ 「他に武器は!?」


ブジンカイザー 「フッ...ならば私と共に言葉を叫んでもらおう!」


直後、ブジンカイザーはある言葉を叫んだ。


ブジンカイザー 「ブジーンッ!ソーーーーッド!!」


ユウキ 「ブ、ブジーン...なに?」


ブジンカイザー 「もう一度だッ!ブジーン!ブレィィィィド!」


ユウキ 「なんか変わってね!?」


ブジンカイザー 「気にするな!ブジーン!ブレェェェィィィィド!」


どうやらこの言葉を叫ばなければならないようだ。渋々ながらユウキも声を出す。


ユウキ 「ブジーンブレード!」


ブジンカイザー 「ちがぁぁぁぁう!ブジィィン!ブレイッッッッッドォォォォ!だ!」


毎回毎回言い方が違うことに腹が立つユウキだがもはや腹を括るしか無い。小学生の運動会ぶりに腹に力を入れ、声を出す。


ユウキ 「ブジィィィン!ブレェェェィィィィド!」


するとブジンカイザーはその言葉に呼応したかのようにポーズを取り、刀を背中から抜き出した。一体どこから出たのか分からないがもはや気にならない。


そして両手で巨大な刀を構え、ドラゴンに接近する。先の蹴りが効いたのかドラゴンは炎を口から吐き、後退している。だがこちらにダメージは微塵もない。


ブジンカイザー 「フッ...そうだ...!私はノンケな少年と戦うことを心の底から所望していたぁッ!」


ユウキ 「クソォ!やってやるぜチクショー!」


もはやあるがままにユウキはドラゴンを切り捨てる。そしてドラゴンは体を真っ二つに裂かれ地面へと落ちていった。そしてブジンカイザーは決めポーズを決めた。ユウキの事を気にすることもなく。


ユウキ 「ハァッ...ハァッ...」


ユウキは息を切らしていた。体は疲れていない。だが心が疲れた。全てはこの変なロボットのせいである。だがとりあえず傀儡とやらは倒した。それだけで良しとしようと思った。


だがブジンカイザーは先ほど倒した傀儡をじっと見つめている。ユウキも傀儡の方へ目をやる。すると真っ二つになったはずのドラゴンの上半身が少しずつ再生している。上半身は下半身を生やし、下半身は上半身を生やしている。


ユウキ 「な...なんだよあれ」


ブジンカイザー 「あれが傀儡の1番の長所だ。心臓を潰さなければプラナリアのように分裂し、再生する」


ブジンカイザーの言ったようにドラゴンは2匹に増えた。これが傀儡。まさにいいように操られ、死にたくても簡単には死ねない。ユウキはもはや悲哀すら覚えた。


ユウキは決心した。必ずあれの息の根を止めて見せる。止めてあげなければならないと。


ユウキ 「ブジンカイザー!だったか?あいつの心臓ってのはどこなんだ?」


ブジンカイザー 「基本的には操っている生物の心臓と同じ場所だ!」


ブジンカイザーは嬉しそうに答える。だが答えてくれたのであればそれを果たす。ユウキは操縦桿を前へと倒し、ドラゴンへ迫る。正直、ユウキはドラゴンの心臓の場所などわからない。直感で胸へ目掛けてブジンソードを突き刺す。すると胸を貫通せず硬いものに防がれたような手応えを感じる。


ブジンカイザー 「そうだ少年!そこが心臓だ!」


ユウキ 「にしては硬くないか!?」


ブジンカイザー 「心臓は硬い膜に覆われている!力で突破するしかない!」


ユウキ 「それを先に言えよ!」


だが胸に突き刺したのであれば後は貫くだけだ。ユウキは操縦桿に力を込め前へ倒す。メキメキと音を立て、膜を少しずつ突破していく。そして膜を貫き心臓を貫く。手応えありだ。


ブジンカイザー 「いいぞ少年!」


ユウキは突き刺したドラゴンを蹴り飛ばす。そしてもう1匹のドラゴンと対峙する。もう一度心臓を潰すため、武器を手に取ろうとするユウキ。だが肝心なことに気づいてしまった。


先ほどのドラゴンにブジンソードを差しっぱなしだと言うことを。


ユウキ 「やばい...」


ブジンカイザー 「どうした少年?」


ユウキ 「武器刺しっぱなしだ...」


ユウキは包み隠さずそのままブジンカイザーに伝えた。だがブジンカイザーはそんな事は関係ないように高らかに笑った。


ブジンカイザー 「そんな事、心配無用!私の刀は...2本ある!!」


ブジンカイザーは腰の備え付けられている鞘から日本刀を取り出す。そして再びドラゴンに向かって加速する。そのドラゴンは逃げ出そうとするがスピードはブジンカイザーの方が速い。


ブジンカイザー 「さぁ!少年!私と共に叫ぼうぞ!」


ユウキ 「何を!?」


ブジンカイザー 「武人神剣流奥義!」


またもや叫ばなければいけないのかとうんざりしたがやらなければいけないのだ。再びユウキは腹に力を入れ叫ぶ。


ユウキ 「武人神剣流奥義!」


ブジンカイザー 「ブジィィィン!スラアアアアアッシュ!」


ユウキ 「ブジィィィン!スラアアアアアッシュ!」


そしてドラゴンを背中から斜めに一刀両断。心臓をしっかりと真っ二つに切り捨てる。ブジンソードではあんなにも硬かった膜も日本刀であれば糸も容易く切れた。日本刀は角度が良ければ切れるというがここまでとは思わなかった。


ブジンカイザー 「フッ...これが私と少年の力だ!」


ユウキ 「いや...まあもういいや...疲れた...」


ユウキはため息を吐き、体の緊張をほぐした。するとどっと疲れが体から出てくる。ようやく終わったのだ。そしてブジンカイザーは身を翻しイリュノラ王国へ向かった。


イリュノラ王国に着いた頃には空はオレンジ色に染まり人々の影が大きく見える時間になっていた。ブジンカイザーは自分でぽっかりと空けた城の壁にコックピットを近づける。


ブジンカイザー 「今日はお疲れ様だ少年。勇者としての第一歩を見事に踏み出せたな!」


ブジンカイザーはユウキに労いの言葉をかける。だがユウキは無視して足早にコックピットから降りる。これ以上この声を聞いていると頭が狂ってしまいそうだ。


王様 「任務ご苦労であった。ささやかながら私からの感謝の印だ。受け取ってくれ」


王様は手のひらに握っていたものをユウキに渡す。それは鍵だった。戸惑っているユウキに王様はこう言った。


王様 「今日は疲れたであろう。自分の部屋で休むといい。それは君の部屋の鍵だ。自由に部屋を使ってくれたまえ」


ユウキ 「分かりました。ありがとうございます」


ユウキは深く礼をし、謁見の間を後にした。後ろからブジンカイザーの呼ぶ声がするが気にしない。自分の部屋へとユウキは直行した。自分の部屋に着いたユウキは一目散に寝室へ入り、ベッドに倒れた。自分の体が埋もれるほどふかふかで思わず眠りそうになる程だ。


今日は色々と災難な日だった。変なロボットに会ったり、世界を救わなければならなくなるし、散々な目にあった。いつか今日を笑い飛ばせるような日が来ればいいのだが。そんな事を思いながらベッドの上に寝転がる。


ユウキ 「...ちょっと仮眠取るか」


ユウキは目を瞑り、楽な姿勢をとる。明日だけでもいい日でありますように。祈るような思いで、ユウキは眠りについた。だが次の日も今日を上回る苛烈な日となる。


次回予告


ブジンカイザー 「次回!超武神人機ブジンカイザー!」


ユウキ 「ナニコレ?」


ブジンカイザー 「見ての通り次回予告だ!」


ユウキ 「ああそう...次回はなんか俺が特訓するらしい。誰と?」


ブジンカイザー 「私以外に誰がいる!?」


ユウキ 「最悪だ...」


ブジンカイザー 「次回!第弍話!これがJAPANで言うところのKENDOというものだ!」


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