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第25話 小学生サトル君の片想い相手

俺、元兼満トオルは30年前の初恋相手である、滋味美緒に転生した。

…が、現在は魂が出戻った元の美緒と一つの身体に同居中だ。

しかも30年前の俺でもある16歳のトオル君との正式な交際もスタート。

このため、今の俺は非常に微妙な立場だ…


いろいろと波乱万丈な展開もあったが、なんとか北海道の旅行から帰って来た美緒の身体。

中身は俺と美緒の同居状態が続いている。

『意外に片付いていますね…』

『久しぶりに自分の部屋を見た第一声がそれか…』

美緒の両親から無事帰宅の感動の出迎えを受けた後、部屋に戻った俺は、

ひとまずベッドに倒れ込んだ。


『ちょっとおじさま!はしたないですよ』

『うるさい!俺は疲れているんだ!!』

さすがに夜行列車の2連泊、しかも座席車両はかなり堪えた…

正直、このまま眠ってしまいたい。

やはり家のベッドは最高だ!


『じゃあ、おじさまはそのまま寝ててください。あとは私が引き継ぎます…』

『うむ、では頼む…』

俺は、身体の主導権を美緒と交代するとそのまま落ちるように眠った…訳でなく、美緒が荷解きをしたり片付けている音を何となく聞いていた。

ああ、これで元の様に頑張ってJKのフリをしなくて済む時間が出来るんだ…そう考えるだけで俺は安心し、緊張が解け、いつしか眠りに落ちていた。


「美緒ぉ~!兼満君から電話よぉ~!!」

せっかく眠ったのに呆気なく美緒の母親からの声で叩きこされる。

うーん、二階から階段を降りるのも面倒くさいなぁ…と思っていると、身体が勝手に玄関前の電話に向かっている。

しかも猛ダッシュで…あれ身体が自動運転?してる??

と寝惚けながら思ったが、よく考えたら今は美緒の方が身体を動かしているんだった。

こういう時、ひとつの身体に二人いるって便利だよな…


「もしもし…」

慌てて、受話器をとった美緒がやや照れながら話し始める。

なんだよ、さっきまで一緒に居たのにもう美緒の声を聴きたくなったのか?トオル君は??

『実は美緒さんに、ちょっと相談に乗って欲しいことがあって…』

受話器を通して聞こえるトオル君の声は、やや元気がない…っているか気が乗らない声だ。

「どうしたの?」

『僕の弟が、その…美緒さんと話してみたいっていうんだけど…』

弟?なんでサトルが美緒と??

「え?今??…ちょ、ちょっと待って」

美緒も突然のことで慌てている。

『いや…今じゃない方がいいんだけど…家だと弟の方は親の目が厳しくて…』


まあ確かに、あの母はトオル君には無関心だけど、サトルには過剰に干渉してくるからな…

どうやらサトルは単に美緒と話したい、というよりも何か相談に乗って貰いたい雰囲気だった。

結局、次の日にトオル君兄弟といつもの図書館で待ち合わせることになったのだが…


「あー全く…小学生相手に何話せばいいのよー!」

部屋に戻るなり、ベッドに倒れ込みジタバタする美緒。

『ちょっと美緒さん、はしたないですよ…』

「あんたがいうな!…っていうか、おじさま、明日はどうしよう…」

『まあ小学生が年上の女性に聞きたいことなんて、想像がつくだろ?』

「やっぱり恋愛相談??とかなのかな?」

まあ、十中八九そうだろうけど、30年前、中学受験前のサトルに恋の悩みがあったなんて俺は知らなかったぞ。

…まあ、本来なら美緒に失恋して、ちょうど今頃は北海道旅行でエリの餌食になって身も心も弄ばれている最中だから、弟がどうなろうと正直気にしている状況ではなかったのだ。


「うーーーん、困ったなぁ…私、人の相談に乗れるほど、経験豊富って訳じゃないんだけど…」

『別にいいんじゃないのか?だいたい恋の相談って別に答えを求めて来るものじゃないからな』

「そうなの?」

『ああ、単に話を聞いてやるだけで十分、本人の気持ちの整理ができるものなんだ。正直、トオル君だけでも済むような気もするぞ…』

「じゃあ、なんで…」

『たぶん…だけど説得力??』

「なに、それ?」

『つまりだ、実際にカノジョができた兄としては、そのカノジョを同席した上で、恋の悩みを聞く方が、何かアドバイスをする時には説得力あるだろ?』

「なるほど…」


「ちょっとー、美緒ぉーー、何一人でぶつぶつ話しているのぉー?」

1階から美緒の母親が不審そうに声を掛けた。

『おい、俺と話すときは念話を徹底しろ!』

『あ、ゴメン…まだ戻って来たばかりで慣れなくて…でも、もし何かアドバイスを求められたらどうしよう?』

『それは、当たり障りのない、相手が都合よく受け取れる曖昧なことを話せばいいだけだ!』

『そんなの私にはムリ!…あ、でもその時はおじさまに代わればいいのか…』

『おい、俺を便利屋のように使うな!!』

とはいうものの、サトルも30年前の俺の弟なんだよな…

昔の俺はサトルに対して、兄らしいことをほとんどした記憶がなかったので、まあせっかくの機会なので、少しくらいは力になってやるか…

『やっぱり、おじさまは頼りになるよね…』


翌日、図書館でトオル君兄弟と顔を合わせた俺たち…目の前には30年前の小学校6年生である弟のサトルがいた。

「はじめまして、滋味美緒です」

「兼満…サトルです」

美緒が挨拶をすると、やや頬を赤らめて挨拶を返すサトル。

「今日は時間を作ってくれてありがとう、美緒さん」

トオル君も恐縮気味に頭を下げる。


「あの…あなたが、トオル兄さんのカノジョさん…ですか?」

早速サトルが美緒に向かって聞いてきた。

いきなり面と向かって言うとは大胆だな、サトル…


「はい…まだお付き合いを始めたばかりだけど…」

思わず、顔を赤らめ俯く美緒。

「兄さん、スゴイ!!」

思わず立ち上がって叫ぶと美緒をマジマジと見つめるサトル。

他の人たちから冷たい視線が刺さりまくるのを感じる俺。

「おいおい、声が大きいぞ、サトル…」

「ゴメン」

反省しうな垂れて席に付くサトル。

「それで、サトル君…私に何か聞きたいことがあるってトオル君から聞いたんだけど?」

「はい…」


サトルがポツリポツリと、自分の初恋相手についての話を始めた。

お相手は塾で同じクラス…まあ平たく言えば、同じ偏差値で集められた能力別のクラスで、偶然、前の席に座った女の子。

授業中に消しゴムを落したサトルに優しく笑顔で拾ってくれた、その女の子に一目惚れ、してしまったそうだ。


「それってよくある事なんでしょうか?」

照れながら聞くサトルに、

「うんうん、よくあるよ!私も電車で傘をドアに挟んだところをトオル君に助けて貰って、そこから一目惚れ…だったよ!」

同じく照れながら答える美緒。

おいおい単なる、おのろけ話の披露会か??

少なくとも高校2年くらいなら、あってもいいが、小学6年生でしかも受験生だぞ!

俺が小学校の時は異性を気にするよりも、受験を突破して第一志望校に合格することが何より優先されていたからなぁ…

一方のサトルは、こんな状態だっかたから、第一志望の開明中に落ちて、第二志望校に入ったんだろうか?


『おじさま…そろそろ私では荷が重くなって来たんですが…』

『ん??今、どうなっているんだ?』

俺がそんなサトルのことを美緒の中であれこれ考え込んでいると、美緒から交代のお願いが…

『だから、好きになった女の子と同じ学校に行きたいから、第一志望校をどうやったら変えられるか…だってさ』

『なんだって!?』


「何言っているんだ、サトル…僕と同じ開明に行くって決めていたじゃないか?」

「…だって僕はトオル兄さんよりも頭悪いから、今の時点では合格圏内からほど遠いし…」


まあ確かに開明は男子校だし、合格できた第二志望の修学院中等科…ここも男子校だ。

「じゃあサトル君、一体どこに変更したいの?」

美緒と交代した俺がサトルに話しかける。

「表参道学院中等部…」

「ああ…オモガクか…」

どうやら、サトルの片想い相手は渋谷にある私立ミッション系の共学校、表参道学院が第一志望らしい。

どちらかというと野暮ったい男子校の開明や修学院と違い、ミッション系のオモガクは華やかだ。

だが、そんな華やかな陽キャラ校風では、クソ真面目な兼満家の面々には相当ウケが悪いと思うぞ。

特にあの母には…


あ、そういえば俺の30年前の記憶の片隅に、サトルの志望校を巡って一時期、両親とサトルで毎日のように言い争っていた時期があったっけ…当時の俺はダブル失恋で再起不能になって興味なかったし、両親からも俺は相手にもされず完全に蚊帳の外だったな。


そうか、つまりは、そういうことだったんだ。

サトルは初恋相手と同じ志望校、オモガクを目指したくて両親から猛反対を喰らい、落ち込んだまま第一志望の開明は落ちて、第二志望の修学院に進学…結果的には地味に男子校で6年間を送った後に大学もそのまま修学院大学の理学部、そして大手メーカーに就職して職場結婚、一男一女に恵まれ30年後に至る…


波乱万丈過ぎた前世の俺とは違い、実に地味で堅実な人生を歩んでいた。

ある意味、両親にとっての自慢の息子はサトルの方だったのかもしれないな。


あの両親が親戚やら友人たちに子供の話をする際に、最高学府を出たものの女好きの最低カリスマ起業家の兄よりも地道な二流私大卒で、聞いたことのある会社に就職して、適齢期でそこそこの相手と結婚、孫にも恵まれている弟の方が余程、自慢になるに違いなかったからだ。


考えようによってはサトルが堅実な人生を送ってくれたお陰で、俺がどんなに好き勝手やっても、最初から存在しないものとそて扱われ、自由にさせて貰えたのだ。

なので、サトルにはこのまま、初恋相手を諦めて貰って、本来の地味で堅実な人生のレールの上を走って貰った方が親孝行にもなる…


「あの…美緒さんはどう思いますか?表参道学院なんて…」

トオル君が俺も当然、反対すると思って同意を求めてきた。

「そう、オモガクはね…偏差値的には開明よりは低いから合格する可能性は増えるんだけど、どうなんだろう?…サトル君、本当に好きな子ができたというだけで、自分の将来を決めちゃっていいのかな?」

ここはまずは、トオル君の求める模範解答をサトルに言って様子見だ。


「え?いけないことなんですか??好きな子と同じ学校を目指すのって、僕にとっては人生の目標にしても良いかなって思うんですけど!?」

うーーん、俺としては、子どもらしい、そういう青臭い考え方も大好きなんだけどな…

が、しかしながらだ…


「でもね、よーーく考えてみて…若い頃の恋愛って必ずしも幸せな結末になるとは限らないよ…もしサトル君が仮に同じ中学に行けた後に、その子に失恋してしまったら、あとの学校生活、かなーりきついものになると思うんだけど…そこまで考えてる?」

「う…まさか、そんなことまで…」

一気にサトルの熱気がトーンダウンするのが目で見てわかった。


『ちょっと、おじさま!小学生になに残酷なこと言ってるの!』

『小学生だろうと、高校生だろうと一時の甘い気持ちで恋愛とか、ましてや将来の選択まで軽々しく、しちゃダメなんだよ…』

美緒の怒りもごもっともだが、美緒自身、恋愛に関する精神構造はサトルと大差ないのかもしれないが…


「ゴメンね、ちょっと言い過ぎたのかもしれないなら謝るね…でもね、恋愛をする時って、どうしても気分が高揚しちゃって、物事を落ち着いて見られなくなりがちなんだよね…そもそもさ、サトル君に確認したいんだけど、いいかな?」

「な、なんでしょうか?」

「その子とは、お付き合いはしているの?」

「ま、まさか…付き合いたいけど、どうしていいかわからなくて…それも含めて今日、美緒さんのアドバイスが欲しかったんです…」

なんだ、片想いか…


「まさか、単なる片想いで、その子に対して何の相談も無く同じ学校に行こうと思ったわけ??それって女の子からいちばん嫌われるタイプだよ?」

そう、21世紀に入るともれなく、相手への一方的な好意を持っての付きまといは、ストーカーとして規制される行為だ…まあ小学生まで適用されるとは思わないが…


「ち、違うよ、ちゃんとその子と相談して、同じ中学に行けたらいいな、っていう話はしているんだよ…」

「え?そうなの??つまりはその子とは、友だち以上、恋人未満な関係ってこと??」

「うん、トオル兄さんと美緒さんたちも最初はそうだったって聞いたから僕も早く、お付き合いできる関係にしたいと思って…」

おいおい、サトル、まだ小学生だろ、マセ過ぎじゃないのか?


「でも、どうなのかなぁ…私の小学校の頃って、そこまで相手のこと考えたことないんだけど」

「カノジョは、いろいろ先々の事も考えていて、オモガクだったら芸能活動をしても煩く言われないみたいだから…モデルとして本格的にデビューしたいみたいだし…」

「え?…ナニ??モデルって、お姉さん、サトル君の話についていけないんだけど…」

相手の女子は、一体どんなタイプなんだ??

てっきりサトルの恋愛対象は地味系女子だとばかり考えていたよ…


『これってもしかすると、おじさまの守備範囲なんじゃないですか?』

『おい、何を人聞きの悪い…ヘタするとエリみたいな小学生が出てきたらどうするんだ?』

『なるほど、おじさまにとっては天敵かも、ですね…』


「サトル君、言い方悪いかも、なんだけど、もしかして、その子って周りからかなり浮いた存在なんじゃないかな?」

「え?そんなことないと思いますよ…でも見た感じは、ちょっと派手かな…」

おいおい、まさかサトル、お前も兄貴同様、面食いだったのか…いや、でも今のトオル君は地味な美緒の方が好みなんだが…もしかして、1993年の失恋を契機に兄弟で好みが逆転したのか?

どちらにしても、将来芸能活動をしたい派手目な小学生って…かなり筋の悪い相手に思えて仕方ない…というかお子様のサトルでは、手に余りそうな気がするのだが…


「サトル君、一回、私にその子を紹介して貰えないかな?本当に君が付き合っても大丈夫な人かどうかも含めてちょっと確認してみたくなった…」

「本当ですか??…あの、実はその…もう来て貰ってます」

「え?どこに??」

俺は焦って、周囲を見渡したが、どこにも小学6年生女子など見当たらない。


「ここにいますよ…」

すぐ隣に座っていた、派手目な女性が立ち上がって、深々と被っていたアポロキャップを脱いだ。

大学生くらい?と勝手に思っていたが、それは背の高さ故だろう。

あどけなさの残る少女の顔つきはだが…どこかで、いや間違いなく知っている顔だ。


「初めまして美緒さん、サトル君の塾の友だちの七海幸子といいます」

「え?ナナミ…??」

挑戦的な鋭い眼差しの小学生離れをした大人びた少女のことを俺は良く知っていた。

もっとも知り合うのは、これから15年も先のことだが…


そう…前世の俺がユウカに殺されたあの晩、直前まで銀座で飲んでいた馴染みのホステスのナナミ…15年来の良き相談相手で、生前の俺にとって、比較的に心を許せた相手、その人だった。


今のトオル君が15年後にナナミに出会う可能性は全く想定していなかったが、まさかその前に弟のサトルに出会っていたとは…

えっと、これって歴史の歯車がまた狂い始めるのか…あ、でも別時間軸だからいいのか…この状況での、あまりの情報量の多さに俺の頭は処理をしきれなくなっていった…

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