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第21話 地味系JKの帰還

私、地味美緒(16)は、1993年6月13日、最初で最期のデートを思い出に他界した…ハズだった。

最期は新宿の都庁展望台からトオルおじさまに見送られながら、お空の彼方に消えていったつもりだったのに…なぜか途中で引っかかっているっぽい…


私は霧の中?をただただ漂い続けているようだった。

まさかこれって成仏しそこなっている?

困ったなぁ、前世に未練なんて残して来なかったハズなのに…

まあ、未練がないといえばウソになるか。


正確に言えば、心残り…というか、心配というか…

彼、兼満トオル君と私の身体を引き継いだおじさまとの恋の行方だ。

おじさまの方で兼満君をとっとと振ってしまったのだろうか?

それとも二人の間に愛が芽生えてしまうのだろうか??

でも私の初恋の結末が、男子高校生と中年男の薔薇設定な話になるなんて正直、喜べない…


などと、あれこれモヤモヤした思いを抱えながら漂っていると遠くから、うっすらと明かりが見えてきた。

あれがもしかして、あの世の入り口?…にしては小さそう。

明かりが徐々に近づいて来ると、それはどうやら、ランタンの灯りのようだった。


「ああ、やっと見つけた…」

ランタンの持ち主は声からして、若い女性のようだった。

うっすらと霧が晴れてくると、純白のドレス?を来た金髪の女性が立っていた。

どうやら私に用事があるらしい。

見た感じ、天国の受付さん?のような方にも思えた。

良かった、これで私も成仏できるのか…


「あの…ここがもしかして、あの世の入り口か何かですか?」

「違うわ、ここは現世とあの世との境界線みたいな場所で、あなたは単なる放浪者扱い…悪いけど保護させてもらうね」

「え?…私ってまだ成仏できないんですか?」

「そうみたいね…」

金髪女性は、私の方に手をかざし、何か呪文を唱え始める。

女性の手から出た光が一瞬、私を包んで消えた。


「あなた…どうやら、まだ死んでないみたいよ」

「どういうことですか??」

女性の話では、私は魂だけ切り離され境界線をさ迷っていたけど、肝心の肉体が滅んでいないので、死後の世界へは行けない状態になっているとのことだった。

まあ、確かに私の身体はおじさまに引き継がれて、現存している訳だから、まだ生きているとも言えるのだが…それでは私の今の立場はどうなってしまうの?


「え…っと、通常だとまだ生きている扱いだから、仮死状態になっている元の身体に戻す手続きに入ろうと思うだけど…ん、変ね、あなたの身体に何か他の人?が入っているみたいなんだけど、これどうなっているの??」

私は慌てて、これまでの経緯を説明した。

部活中の事故による心室細動で死にかかっていた時に、死神みたいな人が寿命審問官とか名乗って、勝手によそから連れてきたおじさまの魂を代わりに私の身体に入れたことや、その後、初デートまでの約束で身体の中でおじさまの魂と同居して、デート後に成仏する予定だったことなどを出来るだけ細かく女性に説明した。


「あいつか…」

女性は怒りを抑えるような低い震える声で呟いた。

やはり、あの審問官を知っているのだろうか?

「あなたは騙されてここに連れて来られたの…でも、よかった、もし発見できなければ、あなたの魂は永遠に時空の狭間に漂うことになっていたのだから…」

「え?騙されたって??」

「そもそも、寿命審問官なんて職業は存在しないんだよ…」

どういうことなのだろう?

私は訳が分からなくなった。


「え?それじゃあ、あの死神さんって…?」

「死神…そうね、そのたとえがいちばん近いのかもしれないけど、あなたが会ったのは、いわゆる”悪魔”と言われる種類の連中よ」

「悪魔…?」

女性の話では、あの審問官を装っていたのは、元々は破滅した人の魂を集めるのを生業?にしている悪魔の一族に属する一人だったようだ。


「でもね、なかなか破滅する人を見付けるのって大変でしょ、だからヤツは意図的に誰かを破滅させて、その魂を効率的に喰らうことで生きながらえているのよ」

「そんな…ひどい」

「まあ、あんなのに当たるなんて運が悪かったと思うしかないんだけどね…」

では私の目の前にいる金髪の女性は何者なのだろか?

…少なくとも悪魔ではなさそうだが…


「あの…それであなたは…神様?なのですか??」

「え?…まさか、そんな偉いものじゃないよ、私は時空監察官のエル…まあ天使から派生した一族だから神には近いっていう存在かも、だけど」

エルの話では最近、悪魔の活動が活発になってきて、この境界線空間でいろいろと悪さをするので、定期的に時空監察官が交代で巡回をしているのだそうだ。

「でね、あなたの元いた世界から変な形で魂がここに放り込まれた形跡が見付かったから、私が捜索に来たっていう訳」

「あの…でも、なんで私の魂は喰われずに済んだのでしょうか?」

「ああ、あなたのは清く澄み切っているから、ヤツとしては使い途がなくて、ここに棄てんだろうね」

粗大ゴミみたいな扱いで、ひどい話だ。


「でも、だったら…なんで悪魔は私なんかに関わって来たんでしょうか?」

「ああヤツの狙いは、あなたじゃないよ。あなたの身体に入れた方のオッサンの魂さ」

「おじさまの…?」

「そう、彼は澄んだ魂だった時からあの悪魔に魅入られて、次々と酷い目に遭わされて、ヤツ好みに汚されていったんだ…」

「ひどい…それでおじさまは、あんなに捻くれてしまったんですね」

「まあね、元からの部分も多少はあったけど…それで、その魂の穢れが頂点に達する前に酷い目に遭わせすぎたのか、間違えて殺しちゃったみたい…で、慌てて、違う身体に彼の魂を移し替えただけなんだ…」

「そんな…たったそれだけの理由で…でもなんで私の身体だったのですか??」

そう、なんでわざわざこんな地味な私の身体を選んだんだろうか?


「それはね…おっと、これ以上話すとあなたの居た世界の歴史が大きく変わるかもしれないので黙っておくけど、そのオッサンとあなたの間にも少なからず、特別な絆があったから…ということで、これからあなたを元の世界に戻すから、これ以上の詮索は無用にね…」

「え?私、元に戻れるんですか??」

「もちろん…あなたは本来死ぬべきではなかったのだから…ただし」

「ただし?」

エルはしばらく考え込んだ。

ちょっと、気になるんですけど。


「今、あなたの身体に入っているオッサンとはもうしばらく同居が続くことになるけど良いですか?」

「はい、もちろん」

なんだ良かった、おじさまを追い出して代わりに成仏させると思って焦ったわ。

「それでね、もう一つ、これを機会にヤツを捕まえて、これ以上、悪さをさせないようにしたいんだけど協力して貰えるかな?」

「私に出来ることならば…」

「ありがとう、細かい指示は追い追い出すから、くれぐれも私の存在を周りに勘付かれないように気を付けてね!戻れても、今のあなたの周りには悪魔が使役する人で溢れているから…」

悪魔が使役って?まあスパイみたいな人がいっぱいにいるのね…ちょっと怖い。

「あの、でも、おじさまにだけは話してもいいですか?」

「うーーーん」

少し考え込むエル。


「まあ、そもそもの元凶はあのオッサンだからね…真実を知ってもらって協力して貰えるならいいけど、悪魔のせいで汚れ切ったあの魂を信用して良いものなのか…」

「大丈夫です!おじさまは薄汚れた性格で史上最低のナンパ師ですけど、根は優しく純粋な人だと思うんです!」

「うーーん、意味はわからくもないけど、あなたたちはウマが合っていそうだから大丈夫か…過去も、そして未来も含めて…いや、なんでもない…準備はいいですか?」

え?今なんかすごい気になる事、言われたんだけど…まあいいか。


エルは再び呪文のようなものを唱えると、手からは魔法の術式のような光が浮かび上がり、私を包み込んだ…やった、これで私は再び、元の世界に帰れるんだ!



そして、元の世界…私の身体の中にどうやら戻れたようだ。

で…ここはどこ?何がどうなっているの??

今、私…というかおじさまは、電車?に揺られて眠り込んでいる。

ボックス席のような座席だから、どうやらどこか旅行中のようだ。


薄目を開けて様子を伺うと、目の前では兼満君が眠っている。

良かった、まだ二人の関係は続いているみたいだ…っていうより二人で旅行中なの?

まさかの薔薇展開??


一瞬焦ったが斜め向かい側には、なぜか同級生の美ヶ原さんが座っている。

そして私の隣には、見知らぬ女性が座っている。

私はそのまま寝たふりをしながら、様子を伺うことにした。

まずは、この四人の関係性を把握しなければ…そしてこの中に"悪魔の協力者"がいないかを警戒しつつ。


「今、どのあたりかしら?」

「あ、さっき東室蘭を出たので、もう少しで登別ですよ!」

「なんだ札幌は、まだまだ先か…」

え?まさか北海道まで旅行に来ているの??

お金はどうしたのよ?

…いや、今はそんなことはどうでもいいか。


「エリさん、本当にこの薬って効くんですか?」

「大丈夫、今までいろんな男で試したから」

「でも、美緒さんは女性ですよね?」

「私の勘だけど…もう一人の美緒さんの人格って、実は男性なんじゃないかなって」

「まさか…」

驚いた、このエリという女性はおじさまの正体まで見抜いている。

一体、何者なんだと思いながらもひたすら、二人の話に耳を傾ける。


二人の会話を分析するとどうやら、エリという女は占いによって、兼満君を運命の人と認識したみたいで、ひたすら執着しているようだ。

それを阻止しようと動いているのが、おじさまで、味方を増やそうと連れてきた美ヶ原さんは絶賛、裏切り中。

美ヶ原さんとしては、せっかく出来たお友だちである、おじさまを兼満君に奪われない様に独占したい…まあ、ちょっと見た目は百合入っているかな…

結果、エリという女が兼満君狙いで、美ヶ原さんが私…っていうか、おじさま狙いで利害が一致したみたいだ。


初デートから一ヶ月以上経ったとはいえ、今のこの状況ってなんなの?

兼満君を中心として、この展開って、カオス過ぎないかしら?

まあ美ヶ原さんの件は、おじさまの自業自得としても…


ただ、兼満君のことをここまで好いてくれるエリという女をなんで、おじさまは阻止したがったのだろう?そこは疑問だった。

「でもなんで美緒さんは、そこまでしてエリさんと兼満君の仲を邪魔をするんでしょうね?」

ちょうど、その答えを美ヶ原さんが聞き出してくれていた。

「なんかね…変な話だけど、もう一人の美緒さんって、私のこと前から知っていたみたいなのよね。たまたま私によく似た人と一緒にしているだけかもしれないんだけど、私が銀座で水商売をやっていることまで正確に見抜いたし…何者なんだろう、もう一人の美緒さんって…今度、占い師に聞いてみるよ」


そうか謎が解けた…おじさまは生前に、このエリという女を知っていて、恐らくはひどい目に遭わされたのだろう。だから、そんな女を兼満君に近付けさせないために、守ってくれていたのだ。


ありがとう、おじさま、勝手に薔薇認定しようとしちゃってゴメンなさい。

私がいなくなった後も、私の周りの人たちを大事にしてくれている、おじさまに感謝しつつも、引き続き二人の会話の盗聴を続けていた。

さっきから度々、出てくる占い師ってなんだ?


「もしかして、エリさんを導いてくれている、その占い師って、真っ白い髭に山高帽のおじいさんだったりしますか?」

「そうそう、え?、もしかして陽子さんも、その人に見てもらったことあるの??」

「偶然ってすごいですね!私もその占い師さんに背中を押してもらって、この旅行に参加したんですよ!」

いや、これはもはや偶然ではないのでは?私は思った。

その占い師って、あの審問官を名乗る悪魔か、その一味の疑い濃厚だ。

ともかく飲ませようとしてる怪しげな薬の件も気になる、まずは、おじさまを起こして早めに警告するか。


『おじさま、聞こえますか?美緒です』

『…』

呼びかけてもおじさまは反応しない。

『あのぉ…』

どこからともなく、女性の声が聞こえてきた。

『誰…?』

『エルです』

あ、さきほどの時空監察官の人か…

どうやら彼女とは会話ができるようだった。


『あなたは今、中に入っているオッサンと連絡を取り合おうとしていますか?』

『はい、ダメですか?』

『残念ですが、初デート後にあなたの魂が引き剝がされた影響で現在、オッサンの魂とのリンクが切断されているのです』

『そんな…どうすれば、前みたいな念話ができるようになるのでしょうか?』

『現時点で、あなたの身体の主導権は、オッサンの方が持っているので、彼があなたを認識して、強く呼びかけないと再リンクできないですね』

それって私が復活したことをおじさまが認識しないとムリってことじゃないの??


『まあ、それは追い追い…少なくとも今みたいに彼が眠っている時は、身体の主導権を一時的にだけど、あなたが握れるから、その時にうまくやってくださいね…ただし周りにいる”悪魔の協力者”には、くれぐれも気を付けてね…』

この状況で、そんなに都合よく動けない…結論、しばらく私は寝たフリで様子見を決め込む。


札幌到着後に目を覚ましたおじさまによって、私の身体の主導権は奪われたものの、不思議と五感の共有は出来ている。

私としては、エリと美ヶ原さんらの策謀をおじさまに何とか伝えたかったのだが、文字通りただ指をくわえて見ているだけだった。

マンションに着いてからも、おじさまは、とりあえず兼満君には、エリから変なものを摂取されないように気配りをしていたが…残念だけど、おじさま、ターゲットはあなたなのよ。


そして美ヶ原さんの手渡したアイスをなんの疑いも無く、口にするおじさまなのだった。

『あれ、変な味がする…待てよ、これ媚薬か??』

おじさまの心の声は聞こえてきたが、状況は絶望的だった。

そうよ、もう手遅れなのよ、おじさま…


薬の影響で、身体の自由が利かなくなり、美ヶ原さんにベッドルームに運ばれるおじさま…っていうか私の身体。

何よ、単に身体が熱くなるだけの薬でしょ?

しっかりしてよ、おじさま。


…でも、そうか、きっとおじさまの脳内は媚薬による、違う変化が起きているんだろうな。

美ヶ原さんに触れられたり、彼女の僅かな香りを嗅ぐだけで、心臓の鼓動が異様に早くなるのを感じた。


おじさまは必死に美ヶ原さんからの誘惑?に耐えているのがわかるが、徐々に抵抗する力が弱まってくるのが同じ身体の中にいるので、手に取るように分かった。

…全く、男という生き物は、そう思って私は呆れると同時に諦めかけていた。

あーあ、私の純潔を同級生の…しかも女の子に捧げちゃうなんて…


『う…ゴメン、ゴメンよ、美緒…こんなハズじゃなかったのに』

おじさまの悲痛な心の叫びが伝わって来る。

…っていうか、なんでここで、私なんかに呼びかけるのよ?

『本当は美緒とトオル君を結び付けてやりたかったのに…まさかこんな結末になるなんて…』


まあ、私も正直、ガッカリな展開だけど、おじさまなりには頑張ってくれたよ…だからもういいんだよ、おじさまは男なんだから…

もしここで私が主導権さえ握れば、美ヶ原さんなんて簡単にブッ飛ばせるのに…

残念だけど…


『美緒…なんで君がここにいてくれなかったんだ…』

だから私はここに居るんだってば…

『美緒!お願いだ戻ってきてくれ~!』

急におじさまの悲痛な心の声が一段近く私に入り込むのを感じた。

あれ…もしかして、これって繋がった??


『おじさま、聞こえますか?』

私は試しに語り掛けてみる。

『ああ、美緒…ついに幻聴まで聞こえてきたのか…まあいい、幻でもいいから謝っておくよ…ゴメン、美緒…』

既に薬の作用で無抵抗になったおじさま=私の身体を美ヶ原さんがブラウスに続けて下着を脱がせようとしていた。


『謝っているヒマがあったら主導権を私にください!』

『え?…まさか本物の美緒…なのか??』

『美緒ですよ!今、私の貞操の危機なんですから、早く私に身体を渡してください!!なんとかしますから…』

『わかった…あとは頼む!』


突然私の意識が表面に浮き上がるような感覚を覚えた。

どうやら主導権が私に移ったようだ。

目の前には、ギラギラとした表情の美ヶ原さんが、今まさに私の下着のホックを外そうとしていた。

「美緒さーん、暑そうだから、私が全ー部脱がしてあげちゃうねー♡」

その腕を押し退ける私。

「ゴメン…そういうのムリだから!」

「美緒…さん?」


美ヶ原さんは驚いたように一瞬たじろいだが、すぐに夢中で私に覆いかぶさった。

「だめー!美緒さんは私だけのものなの!誰にも渡さないんだからー!!」

ダメだ…完全に壊れてる。

私の知っている、あの知的で大人しい美少女の美ヶ原さんはどこに行ったのだろう?

まあ半分は、彼女を中途半端に口説き落とした、おじさまのせいなのだが…

でも、いちばん許せないのは、そんな彼女の心の隙間に付け込んだ"悪魔"の方だ。


「美緒さーーん…ウゲッ」

私は美ヶ原さんを足蹴りにして飛ばすと、部屋から飛び出した。


リビングルームでは兼満君とエリという女がソファーに腰かけていた。

私は、はだけたブラウスを慌てて元に戻すと、兼満君の方を向いた。

「私ね、やっぱり兼満君のことが誰よりも好きなの!他の人のことは考えられないんだ!!」

私の表情を見た兼満君の表情が、パッと輝いた。

「滋味さん…やっと戻ってきてくれたんだ!」

「うん、待たせちゃってゴメンね!兼満君!」

どうやら兼満君も私とおじさまの人格を区別できるらしい。

私は思わず兼満君に駆け寄り、抱きついた。


「あ…あの、あなたは元々の美緒さん…?たぶん初めましてかな?」

動揺しながらも私に話しかけるエリ。

「そうですね、こうやって話すのは初めてですね、エリさん…でも昼間の特急列車では寝たフリをして、あなたと美ヶ原さんの悪だくみは散々、聞かせて貰いましたよ!」

「え…と…そう、あなたってもしかすると、さっきまでの美緒さんよりも策士なのかもしれないわね…」

「まさか、エリさんのような方と一緒にされても困ります…」

さて、この後、どうやってこの場をおさめようか…


私はおじさまと再び交代してもらおうと試みる。

『おじさま、聞こえますか?』

『…』

『あ、あのオッサンは、媚薬のせいですっかり意識を失ったみたいですよ!』

監察官のエルがこっそりと囁く。

やれやれ、修羅場の後始末は私がやらないといけないのか…まあこうして現世に戻れて、せっかくの兼満君との旅行だ。

仕方ない、もうひと頑張りしよう。


この晩、錯乱状態から落ち着きを取り戻した美ヶ原さんを加え、私たち4人で今後の旅行の予定について話し合った。

結論として釧路方面には私と兼満君だけで向かい、美ヶ原さんは稚内方面へ一人旅、エリはこのまま札幌に留まることになった。

まあ、このまま4人仲良く旅行を続けるのは気まずいよね…

意外にすんなりと折れてくれたエリを怪しみつつも私は兼満君との旅行を楽しむことにしよう。


『…美緒、結局どうなったんだ…』

ようやく意識を取り戻したおじさまが、間の抜けたタイミングで聞いてきた。

私は今回のトラブルの後始末のことだけ、簡単に説明すると、

『いろいろありがとう…あと、お帰り…』

つらそうに起きていた、おじさまの意識が再び途切れた。

まだ薬の作用が残っているようだ。

『ただいま』

私は、そうおじさまに呟くと、リビングのソファーに寝転んだ。


「こんなところで大丈夫?滋味さん??」

リビングの床に布団を敷いた兼満君が心配そうに聞いてきた。

「大丈夫よ、夜行列車のシートに比べれば快適じゃない?」

「そうだよね…おやすみ」

「おやすみ、兼満君」

隣のベッドルームには美ヶ原さんとエリが引っ込んだまま出て来ないので、このまま兼満君の布団に一緒に潜り込むことも一瞬考えたが、まだ先でもいいだろう。


それはもっと、兼満君のことを知ってからで遅くない。

それに私ももっと、兼満君のことが知りたいし。

明日からの二人きりの旅行が楽しみだ。

これで第2部は終わりです。

今まで読んで頂いたみなさん、ありがとうございます!

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