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第16話 そしてやっぱり北海道へ…

俺、元兼満トオル(46)は最低ナンパ師だったが、トラブル相手の女性に殺された後、意図せずに30年前の時間軸で、初恋相手で部活中の事故で亡くなった滋味美緒(16)に入れ替わりで転生した上で、別人格の俺であるトオル君(16)に"友だち"として向き合っている。

そこに俺にとっての初めての交際相手であった、南波エリ(21)が予定より早くトオル君の前に出現した。


30年前の俺にとっては、黒歴史でしかないエリとの交際のトラウマを再び今のトオル君に経験させないよう、"友だち"として、阻止しなければならないが、年頃の男子は女性の色香にめっぽう弱い。

かつての俺もそうだった様に…


しかも夏休みにエリとトオル君と俺=美緒の三人で北海道に行く約束をしてしまった。

エリが隙を見てトオル君と男女の関係を持ってしまったら同じ歴史が繰り返されることになる。

俺が二人の傍から離れないようにすれば良いのだが、さらにより安心できる一手を考え中だ。

その一方で、俺の今の保護者でもある美緒の両親に遠距離旅行の許しも得なければならない。

女子高生が学校以外に旅行へ行くとなれば、いろいろと面倒ごとが増えてくるからな。


しかも女子校育ちの地味な女子が、いきなり同い年の男子と怪しい女子大生の三人で旅行に行ってきます!といっても両親からは不安がられるだけだしな。

できればあと一人くらい誰かに同行して貰い、4人になれば安心で楽しいグループ旅行を"偽装"できるのだが…しかもトオル君とエリの間にうまく楔を打ち込んでくれそうな誰かが見付かれば…でもそれって誰だろう??


例えば、トオル君に頼んで、同級生などの男友だちを誘って貰うか…

いやダメだ…そもそも当時の俺のことを思い出せば、旅行まで一緒に行ってくれるような友だちなんていなかったからだ。

次に兄弟だが、美緒は一人っ子でムリだから、トオル君の弟であるサトル君を同行させようか?とも考えた。

とはいえ現在は小学校6年生だし中学受験前を理由に、あの溺愛する母から猛反対されるだろうから、これも無理だろうな。


となると美緒=俺の現在の友だちか…ほとんどが元の美緒の中学校からの部活仲間だったから、この夏は皆、引退前の最後の練習と合宿で忙しいだろう。

俺=美緒は心室細動以来、休部中で、そのまま引退予定だったので部活仲間との交流の機会すらなかった。

そうなると他に旅行に誘えるような友だちが思いつかないな…困った。


そう思いつつ、俺が教室を見渡していると、

「どうしたの美緒さん?」

声のする方を振り返ると、同級生の美ヶ原陽子(16)がいた。

俺が美緒に代わってから最初に出来た友だちだったが、トオル君の初デート以来、バタバタしていて時折、世間話をする以外は、やや放置気味にしていた。

そうか、この陽子を試しに北海道旅行に誘っていみるのは、どうだろう?


「いえ、ちょっと今度の夏休み、どうしようかなぁって…陽子さんはどうするの?」

「うーん、私はそろそろ予備校の集中講座とか模試を受けてみようかな、って思っていたくらいだけど…美緒さんはどうするの?」

さすがは、学年トップの成績を誇る陽子には取り付く島もないのかも。

周りからも陽子の趣味は勉強だと思われているので、聞くだけムダだったかもしれない。


俺の場合、今のままでも最高学府を現役で合格できる程度の学力はあったので、来年の夏ころから少し準備勉強をすれば済むと思っていた。

それも最高学府を本気で狙う場合で、今回の人生で俺は私立の割と気楽な大学でも探して、授業の空いた時間を使って起業して、地道に財を築ける程度の小さな会社を作ろうかとも考えていた。

その場合、最低限の好成績で、どこか推薦枠のある大学を探せば入試の必要も無いので、これ以上、勉強する必要も無かったのだ。


「そうだなぁ…私はせっかくなら今年の夏は、どこか旅行でもしようかと思って」

「え、旅行?美緒さんって旅行に行く人だったの??」

陽子の喰い付きが急に良くなった。

あれ?案外いけるかも?

「うん、部活は事実上引退したけど、高校生活はまだ半分以上残っているからね…それを全部、進学準備に使うのはちょっと勿体なくって気分転換、かな?」

「でも旅行って…美緒さん、もう身体の方は大丈夫なの?」

「そうだね、まだお薬を飲みながらの様子見だけど、激しい運動とかしなければ大丈夫みたいだよ」


正直、元の美緒が心室細動を起こした原因は、過度のカフェイン依存症だったことに加えて、トオル君との出会いや初デートへの緊張のせいで、精神的なストレスや寝不足が重なった不幸な連鎖の末に発生したものと俺は分析している。

なので今はコーヒーも控えて栄養バランスにも気を付けつつ睡眠時間もたっぷりとるようにしているから、美緒の若い体力ならもう大丈夫だろう。


「行くところって、もう決まったの?」

「うん、実はね北海道に行こうかなって思ってね…」

「北海道!?」

陽子が更に目を輝かしながら聞いてくる。

「そうなんだけど、お金かかりそうだし、どうやって行こうかと考え中」


高校生のお小遣いは限られている上、トオル君も美緒=俺も親からは、アルバイトを禁止されている。

そんな時間があるなら部活や勉強を一生懸命やりなさい、という考えだ。

まあ高校生のバイト先なんて当時はファストフードなど飲食店の店員くらいしかなかったし、時給も低めで魅力をあまり感じなかった。


このため俺は大学生になってから一気に金を稼ごうと考えていたので、今は準備期間中だ。

それに何よりも今はトオル君をしっかりと最低ナンパ師にさせないように育て?ないといけないので、そちらを優先させている。

だが北海道まで往復で飛行機を使うのはこの当時の学生にはかなりの高額だった。

まあ、この一回だけなら、先代の美緒が貯めていた貯金を取り崩せばなんとかなりそうではあったが。


「それなら、鉄道を使えばいいんじゃないの?」

陽子の提案に驚く俺。

「え?でもそれって、時間かかって疲れるんじゃない?」

「ワイド周遊券とかを使えば大丈夫よ!上野から出ている夜行急行を乗り継いで、北海道に入ったら特急が使えるし、意外と時間もかからないよ」

トオル君のような男子ならともかく、まさか女子である陽子の口から鉄道で旅行なんて…

だが待てよ、これは面白いことになるかもしれない。


「でも私、あまり詳しくないから、良かったら陽子さんも一緒に行ってくれると助かるんだけど」

早速、陽子を誘ってみる俺。

「いいよ!でも女の子二人だけで旅をするのは、大丈夫なのかな?」

「うん、そこはいい考えがあるんだ!」

陽子にボディーガード代わりに知り合ったばかりの同い年の男友だちに同行して貰う提案をする俺。

男友だちとはもちろん、トオル君の事だ。


「えー?男子と一緒に旅行に行くの??」

微妙な反応をする陽子。

恐らく男女交際の経験がない故の警戒心からだろう。

まあ、そこは織り込み済みなので、次の提案を行う。

「うん、でも大丈夫、彼は、いい人だから安心だし、もしかしたら彼の家庭教師の早智大の人も誘おうかな、って思って」

そこでエリをトオル君の家庭教師役という設定で話す。


「でも、その早智大の人も男性なんでしょ?やっぱり不安だわ…」

「ううん、その人は女の人で四年生。頭のいい大人の人だよ」

陽子が警戒心を解かないので、更にエリを頭の良い大人設定を加えた。

あとからエリと辻褄合わせをしなければ…


「そうなんだ、女の人で早智大生なんて格好いいよね?」

女性と聞いて、途端に反応が変わる陽子。

これならいけそうだな。

「私も実はこれから親を説得するつもりだから、陽子さんも考えてみてくれる?」

「わかったわ!私も美緒さんと旅行行くのが楽しみだから両親に話しておくね!」

よし、これであとは俺=美緒の方で両親を説得すれば北海道旅行に行けそうだ!


あとは、陽子も連れて行くことをトオル君とエリにも説明をしなければな。

まあ本来の話とは順番が逆になるが、美緒が旅行に行くための親を説得する材料として同級生を同行させることには、二人は意義を唱えないだろう。


それに、もし陽子の美貌にトオル君が一目ぼれしてしまい、それで二人が恋に落ちれば、エリに付けこむ隙を与えずに済むかもしれないし、俺もその時はトオル君の恋を応援する”友だち”として振舞おう!

即席の思い付きにしては意外といい作戦になりそうだ。


想定通り、陽子の同行にトオル君は即座に了解し、エリも渋々、了解した。

あとは美緒=今の俺の両親か…


母親の方には、別にいいんじゃないの?と言われたものの、父親の方は難色を示した。

そんな遠くに旅行に行くなんて大丈夫なのか?

身体の方はもういいのか?

一緒に行く人たちは安全なのか?


とまあ、いろいろと余計な心配をされた。

娘を持つ男親は大抵の場合、保守的だし異性の存在はネガティブに気にするものだ。


「そもそも、美緒はどうして旅行なんかに行こうと思ったんだ?どこかに出かけたいなら、休みを取って父さんが車で美緒の行きたいところに連れて行くぞ!」

おいおい、それでは単なる父親とのデートになってしまうぞ!と俺から突っ込みたくなったが、

「あなた、美緒だってもう16歳なんだし、いつまでも子どもじゃないのよ…」

ナイスアシスト!

さすが、母親の方が良くわかっている。

「とは、いってもなぁ…」

まだ不満そうな父親に俺は思い切って切り出した。


「お父さん、いつも心配してくれてありがとう。気持ちは嬉しいんだけど、私って今まで学校と家の往復だけの生活だったじゃない…だからさ、部活が引退状態の今は、せっかくなら、もっと外の世界を知りたくなったの」

「だからって美緒、身体の方はもう大丈夫なのか?」

「平気だよ、逆に部屋でじっとしていて、このまま、もし死んじゃったら後悔しそうだし…」

「おい…」

「あ、また心配かけちゃったね、ゴメン。私が何が言いたいかっていうと、一度きりの人生だから、やりたいと思うときには出来る限り、やっておきたくなっただけ、なのかな…」

「美緒が、そこまで言うなら…わかった、父さんも止めないよ」

「ありがとう、お父さん…」

またしても、美緒が生死の境をさ迷ったネタで、今やりたいことは今やらせてもらう、という言い訳めいた説得をしたのだが、九死に一生を得た人間(※本当は死んでる)の言うことは不思議と皆に聞いてもらえるものだ。


「だけど美緒って、あの事故以来、まるで別人みたいに成長したよな…」

「…え?そうなのかな」

まあ、トオル君でさえ、先代の美緒と俺が別人と気付いているから、まあ当然と言えば、当然かな…

「前のままの方が、お父さんは良かったのかな?」

「…いや、いつまで経っても成長しない美緒を見ているのも逆に不安だけど…まあ、父さんとしてはもう少しだけ昔のままでも良かったのかな、と」

「違うわよ、父さんは、美緒が兼満君と旅行に行くっていうのを気にしているだけよ…」

「おい、母さんまで何を…」

横から母親がニコニコしながら、突っ込みを入れる。

まあ、その方がこの父親らしいか。

美緒は俺と違って本当に素敵な両親に愛されながら育てられたんだな、と俺はしみじみ実感した。


30年前、美緒の死で初デートをすっぽかされたと勘違いした俺が自暴自棄になって荒れた時は俺の両親は、見事にスルーしたし、北海道に一人旅に行くといっても、「わかった」の一言で全くの無関心だったし、その後、エリと付き合いだして彼女のアパートに入り浸り、外泊を繰り返しても突っ込みの一つも入らなった。

これが男女の育て方の違い、ともいうのかもしれないが、もうちょっと心配やら文句の一つくらい言って欲しかったな、と俺は今更ながら思うのだった。


「ちょっと美緒、なんで泣いているの?」

「え?」

母親にそう突っ込まれ、俺は涙を流している自分に気付いた。

そうか、元の俺の両親と比べ滋味家の両親の暖かさに思わず感動してしまっていた自分がいた。

「俺、なんか悪いこといっちゃったか?」

「え…いや違うの、私、本当にお父さんとお母さんの子で良かったなって、思って」

そう、今の俺は、滋味美緒なんだ。

そして、こんなに自分のことを心配し、構ってくれる両親がいることが正直、嬉しかったのだ。

「何、気の早いこと言っているのよ。ただ旅行に行くだけでしょ、別に嫁に行く訳じゃないんだから!…ちょっと何?お父さんまで」

母親は陽気に笑っていたが、父親は美緒の涙を見て、もらい泣きをしていた。

「う…だってさ、本当にあの時、もう美緒が死ぬんじゃないかと思っていたから…だから本当に生きて今、ここにいるだけで、父さんは十分なんだよ…」

「何、言ってるのよ、お父さんったら!」

笑って胡麻化そうとする母親まで、いつの間にか涙声になっている。


ゴメン…本当の美緒はもうここにはいないのだけど、その分、これからはこの両親の前ではできるだけ元の美緒のように振舞えるよう頑張ってみよう。

そして、今後は、美緒の両親に、もう少しだけ甘えてみても良い気すらしてきた。

俺の本当の親には甘えられなかった分まで。


こうして、無事に俺の北海道行は美緒の両親から許可をもらい、陽子も家族から了解をもらったという連絡が入ったので早速、北海道旅行の計画を立てるため、トオル君、エリの4人で前に集まったファミレスで集まる事となった。


例によってトオル君とエリは先に着いていた。

きっとまた、エリはトオル君に何か入れ知恵をしていたのだろう。

だが今回、俺の秘密兵器?である、美人女子高生の陽子はトオル君に対してかなりの威力を発揮するだろう。

基本的に陽子は面食いだった俺の好みに合っていたから、恐らくトオル君も一目惚れして、エリへの関心が薄れるであろう、と俺は大いに期待していた。


俺が陽子を連れて現れると、案の定、トオル君は陽子の美貌にドギマギして、エリはあからさまに警戒した。

二人とも実にわかりやすいリアクションだ。

「紹介しますね、私のクラスメートの美ヶ原陽子さんです」

陽子はやや緊張しながら座ると、軽く会釈する。

「実は陽子さんも旅好きで、今回の旅行の計画案を考えて貰ったんです」

俺に促され早速、陽子が手書きの旅行案を配る。

当時の俺=トオル君も旅行好きであったので、ここから話が盛り上がって打ち解け合えば、もしかして恋が始まる…かも?と俺は期待をしていた。

だが、


なんじゃ、こりゃあ!?

陽子の作ってきた旅行計画書を見て、俺は思わず叫びたくなった。

これって…30年前の俺ですら考えつかないような内容だ!


「どうですか?私の計画案は??」

陽子はドヤ顔で、トオル君とエリの方を睨みつけている。

何だか、陽子のキャラがいつもと違う。

しかもエリというよりはトオル君の方に敵意が向いているような気もして、俺は一気に不安になった。

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