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第11話 友だち以上で恋人?未満??

今日から第2部のスタートです!

俺は前世では、兼満トオル46歳、起業家の仮面を被った最低のナンパ師だった。

現世では、滋味美緒16歳の女子高生に転生して生活をしている。

ただし、前世から三十年前の並行世界で…だが。


また三十年前の俺である、兼満トオル君は美緒と同じ16歳の高校生だ。

今は都内の進学校に通っているが、俺の前の身体の持ち主であった美緒と偶然、電車の中で出会って恋仲になりかけていた。

このため俺は自分自身と恋愛関係になるのは断固として避けたいため、前の持ち主との引継ぎの際には友だち以上にならないと宣言し承諾は得ていた。

とは言うものの…


「美緒~!兼満君からまた手紙、来てるわよ!」

学校から帰宅すると母親が、意味深に笑みを浮かべながら手紙を渡した。

やれやれ…今日もトオル君からの熱烈なラブレターだ。

すっかりトオル君も滋味家からは認知されたようで、ひとまずは良かったのだが、俺の高校時代は、ここまで筆まめな男では無かったハズだが。

全く、恋愛に傾けるエネルギーっていうものは実に凄まじい。


ただ、問題の中身だが…

封筒を開けて便箋を取り出すと俺はため息をついた。

またしてもワープロだ。

トオル君は自分の字に自信が無いため、いつもワープロで手紙を書いていた。


わかる…俺も高校時代にあまりの字の汚さに国語の先生から、

『兼満君、そんなミミズの羅列のような字を書いていたら、ラブレターとか書けないよ?』

と、やんわりと注意を受けていたくらいだ。


やはりトオル君は過去の俺自身だったということは間違いない。

だが、そのために彼は、やむを得ずワープロを使って手紙を書いているのだろう。

封筒のあて名書きはさすがに手書きだったが、既に書体が崩れ、ミミズになりかけている…

当時の俺は、いずれ人類は情報機器の普及で手書きからは解放されるのだから字の練習なんて不要!と開き直っていた。

でもいざ、こういう状況になるとペン習字くらいは習っていた方が良かったのかもしれないな。

手紙でやりとりしようと提案したのは俺=美緒からだったが、トオル君にとってはかなりハードルが高かったようだ。


ともかくもトオル君は初デート以来、ほぼ毎日のように手紙を書いてきている。

俺は面倒くさいので、数日に一回くらいのペースでしか返事を出していないが。

ただし俺=美緒の方はもちろん、手書きで書いていたが…

引継ぎの時に美緒の筆跡を真似て書く練習をしようかと思っていたが、自然に美緒の筆跡で字を書けていたので不思議だが、この点は助かっていた。


さて肝心のトオル君からの手紙の内容だが、ひと言でいえば、どうでもよい内容だった…

相手に失礼かもしれないが、どうせ三十年前の俺自身、気遣い無用だった。

ただ気になったのは、彼が時々通っている図書館で、大学生の女性と顔見知りになったという事だった。


前世の俺の記憶では、この時期に図書館で異性と知り合うなんてことはなかったハズなのだが…

既にこちらの時間軸の歴史が変わり始めているのかもしれないな。

だが、と俺は思った。

もしこの女子大生にトオル君の関心が移れば、俺は時々、その相談に乗るだけの所謂”友だち関係”だけで済むのではないか?


相手次第だとは思うが、もし俺がトオル君の恋の応援が出来る立場になれば、それはそれで良いことでもある。

中身が中年ナンパ師である俺よりも普通の女性であれば、よほど健全ではないのだろうか??

俺はそう思って、

『もし兼満君がその大学生の人が気になるなら、女性の立場でいろいろ相談に乗るよ!』

と書いて返事を出した。

だが、それがいけなかったのかもしれない…


そのことに対する返事?と思われるトオル君からの手紙は、あまりにも簡潔過ぎた。

『やはり滋味さんらしい反応だと思います。この件に関しまして、確認したい事があるので、なるべく早く僕と会って頂けませんでしょうか?』

トオル君のあまりに事務的な書き方に俺は一抹の不安を感じつつ、日程や会う場所の調整のため電話をかけてみた。


電話口に出たのは、トオル君の母親(俺にとっては三十年前の母)だったが、特に異性女子からの電話に驚く様子もなく、淡々と取り次いでくれた。

元々自分の息子の日常にあまり関心を持っていなかったので予想通りの反応だが、もう少し美緒の母親の様に自分事として子供と一緒になって彼女できたの?などとはしゃいで欲しいものだった。


これに対して、トオル君の方は、

『え?えーーー!?本当に滋味さんなの?電話をくれるなんて思ってなかったよ!』

驚きと嬉しさが半々くらいの上ずった声が聞こえてくる。

ああ、やはり高校時代の女性に何の縁もなかった俺そのものだ。

「え?だって兼満君が急いでいたみたいだったから、緊急と判断しただけよ。一体どうしたというの?」

本音は電話で実際にトオル君の声を聞きながら様子をうかがってみたかっただけだが、予想通りの反応で少し安心した俺。


『うん、ちょっと滋味さんに会って話したいことがあって』

どうやら手紙や電話では済ませられない内容の話…つまりは結構、重たそうなことを話したいんだろうな、俺も覚悟を決めてトオル君に会うことにした。


翌日、俺は学校帰りにトオル君との待ち合わせ場所であるファミレスに向かった。

でも、と俺は思った…何かがおかしい。

ファミレスを指定して来たのはトオル君の方だったが、俺が高校時代に立ち寄っていたのは、〇ックとかケ〇タなどのファストフード店か古い喫茶店なので違和感を持った。

まあ、あまり深く考えるのは止めておこう。


待ち合わせ時間の少し前に店に入ると既にトオル君は到着していた。

「兼満君ごめん、待った?」

「いや全然、こちらも今、来たところだよ!」

テーブルを見るとドリンクバーの飲み終えたグラスやカップが複数並んでいる。

いやいや、どうみても30分前から来ていただろう…やっぱり彼は三十年前の俺だ。


俺もドリンクバーを注文し、ブレンドコーヒーを持って座った。

「それで話っていうのは何?」

早々に話を切り出す俺。

「僕たちの今の関係の確認と…それから今後についての相談なんだけど」

やはり…俺はトオル君からこのような話が出てくることはある程度、想定はしていた。


友だちなのか恋人なのか、そろそろトオル君としては、関係をはっきりさせて欲しいのだろう。

俺はもちろん友だち関係で止めたかったのだが、伝え方を一歩間違うと、トオル君が昔の俺のように失恋と勘違いし、自暴自棄になった上に行きずりの女に弄ばれるような事態になりかねない。


「もう少し今の関係のままが私はいいと思うんだけどな…」

「もう少し…っていつまで?」

「それは…」

だが、やはり何か変だ。

まるで俺=美緒がトオル君を上手くはぐらかさない様、逃げ道を塞ぐような形で問い詰めて来る。

何が彼をそうさせている?

何が…というより誰が??


ああ、そういうことか、俺は試しに聞いてみた。

「そういえば手紙で書いていた大学生の人の話なんだけど…」

「え?な…なんでその話を今」

明らかに狼狽えるトオル君、図星だったようだ。

「つまりは私以外に気になる人ができちゃったから、私との関係にけじめをつけたくなったのかな?って思って…でも私は今のままの関係で兼満君の支えになれればいいのかな、って考えているんだけど」

「そ、そんな…」


俺の予想が正しければ、トオル君はその女子大生が気になり始めているのだろう。

だが、わざわざ手紙にそのことを書いて美緒=俺の反応を試すなんて、三十年前の俺の性格からは考えつかない小賢しさだ。

今なら、平気で考えつくが…となると、この違和感の正体はなんなのだ?


「兼満君…もしかしてだけど、今日、私をここに呼び出そうとしたのは、あなただけの考えじゃないでしょ?」

「え?なんでわかったの??」

思わず口走って、はっとするトオル君。

やっぱり昔の僕だ、正直すぎる。

「で、誰なの?兼満君と一緒に私を試すような悪巧みを考えたのは?」

俺はわざわざ周囲に聞こえるように大きな声で言ってみた。


「あーあ、バレちゃったか…」

隣のボックス席に座っていた女性が立ち上がると俺たちのテーブルの前に立った。

「え?」

俺は思わず絶句した。

目の前の女性に見覚えがあった。

ただし三十年前だが。


「はじめまして、南波エリって言います。トオル君と図書館で知り合った大学生って私のことなんです」

俺が三十年前の夏休みに北海道旅行で知り合って、そのまま男女の関係になった女子大生のエリがなぜここにいるんだ?

今はまだ夏休み前だし、トオル君とエリが出会うなんて俺は全く想定すらしていなかった。


「ゴメン、エリさん、うまくやれなくて…」

「いいの、いいの、直にトオル君の彼女に会ってみたいって思っていたから」

そう言ってエリは当たり前の様にトオル君の横に座った。

「あの…私と兼満君ってまだ」

俺は冷静を装いながらエリの出方を伺った。


「うん、彼から聞いてるよ!思わせぶりな態度で純情なトオル君を弄ぶ悪い女って…」

「僕、そんなこと言ってませんよ!」

悪い女ってエリ、お前のことだろ!

俺はそう叫びたかったが、今の俺は滋味美緒だ。

あくまでも女子高生として自然に振舞いつつ、今は様子見だ。

だがこの先、一体、何が起ころうとしているんだ?


『ふふふ、面白くなってきましたね。今後もさらなる試練と絶望に打ちひしがれるあなたの姿、とても楽しみですよ』

店の客に混じった審問官が小声でそう呟いたが、この時の俺は全く気付いていなかった。

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