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6.ルヴァン村

「ここがヴァンパイアの村か……」


 ルヴァン村は長い洞窟を抜けた先の開かれた大きな空間に存在していた。

 初めヴァンパイヤの村と聞き、禍々しい城や塔を想像していたが、実際はドーム上にくり抜かれたスペースに洞窟内でありながら、樹木と岩が上手くは混ざり合い神秘的な空間を作り出していた。

 そこに木材と石を使用して造られた家が全部で15軒ほど壁に沿って5階ほどの高さまでに建てられている。

 ドーム内はここまでの道と同じように薄暗いが壁に沿って置かれている松明に加えて、ドーム天井には大きなシャンデリアのような形状をした優しい光を発する魔道具が置かれており、村全体が洞窟内でありながらどこが貴族のお城の中の様な品のある空間に仕上がっていた。

「どうだルヴァン村は?」

 ヴァイトがいつもの自慢顔をこちらに向ける。

「正直もっと禍々しいものを想像してたからこんな上品で神秘的な空間だとは思わなかった」

 思ったことをそのまま伝えると、ヴァイトはいつもの様に大きく笑った。

「まあ何はともあれ気に入ってくれたなら良かった」

 こうして村の入り口付近で二人で談笑していると3人の子供がそれぞれの家から出てきて階段をつたい降りてきて、俺たちのいる所に集まってきた。

「ヴァイトおじさん帰ってきたんだ!」

「今回はどんな魔獣獲ってきたの〜?」

「早くこっちきて外のお話聞かせて!」

次から次へと矢継ぎ早に質問してくると子供達に少してんやわんやしているヴァイトを斜め後ろから微笑ましく眺めていると、一人の子供がこちらの存在に気づき声をかけてきた。

「お兄さんは誰〜?」

 突然の質問に何で答えるべきか返答を迷っていると、すかさずヴァイトが俺を紹介してくれた。

「こいつはこれからここで一緒に過ごすアルだ!どれぐらいこの村に住むかはまだ未定だが寂しがり屋だからお前たち遊んでやってくれ」

「おい!俺がいつ寂しいって言ったよ!」

「アルお兄さんは大きいのに寂しがり屋なんだね〜」

「それじゃあ私達がお友達になってあげるー」

「僕達でこの村を案内してあげよ!」

「それいいね!」「そうしよー!」

 ヴァイトの発言により寂しがり屋認定された俺は自分の年齢の半分くらいの子供たちから同情されてしまった。

 その後は好奇心旺盛な子供達とヴァイトでとんとん拍子で話が進み、気づけば3人にこの村を案内してもらうことになった。

 子供達に手を引かれ村の中を歩こうとした時、家の中から会話を聞いていた見た目はヴァイトと同じく30代後半で身長は170cm後半ほどの細身の男が出てきた。

「ちょっと待てヴァイト、話を聞かせてもらったがいきなりこの村に住むとはどういう事だ。

 長老の許可もなしに人間の子供なんて連れて来てこの子が将来この場所を王国や帝国に売る可能性だってあるんだぞ!その危険性がわかってるのかヴァイト!」

 凄まじい剣幕で捲し立てる。

「まあ話を聞けよ。アルは森の中で一人傷だらけで本の数日前まで死の淵を彷徨ってたんだ、その上帰る場所もない。

 そんな状況であの森の中に見捨てる訳には行かないだろ。違うかレオン」

「お前の言わんとする事は分かるが、それでもあの森に一人でいる時点で何か唯ならぬ訳があるはずだ!

 そんな訳ありな人間を子供だからってここに住ませるわけには行かない!それにこいつが人間である以上俺達を裏切るかもしれないんだぞ!」

 “裏切り”その言葉に自然と体が反応する

「それだけは絶対にしない!!

 裏切る事だけは死んでも、、絶対に」

 反射的に大声を張り上げてしまい、さらに視線を集める。

「別に長い間アルと一緒にいたわけじゃないが、それでもこいつが充分に信頼に足る奴だって事は俺が保証する」

「そんな憶測で村全体を危険にさわすわけにはいかない!」

「無理を言ってるのは分かってる。それでもアルの家になる場所はここしかない以上引き下がる事はできない。どうかこの通りアルをここに住まわせてもらえないか」

 ヴァイトは静かに膝を地面につけると、村の全員に向けて土下座をした。

「おい!紳士たるヴァンパイヤがそんなはしたない真似するな」

 ヴァイトが土下座までして俺をの居場所を作ろうとしてくれる姿に暗く澱んでいた心に一筋の光が刺すが、それと同時にヴァイトが土下座しても尚、口論しているレオンと呼ばれる人やそれ以外の村の大人が俺に対して持っている不信感が拭えないことに寂しさが湧き上がる。

 

 しかし、そんな状況に意外な人物達が助け船を出してくれる

「なんでアルお兄さんにそんな酷い事言うの!」

 「そうだよ!お家がなくて困ってるんだったら一緒に住めばいいじゃん!」

「そんな酷いこと言うお父さん嫌い!」

 子供達のによる予想外の反論に大人達が驚き、上手く言い返せないでいると村の一番上の家から70歳ほど長髪で白髪が特徴的な威厳のある老人が降りてきた。

「長老!」

 「話は聞かせてもらった。顔を上げなさいヴァイト

 レオンの言う通りヴァイトの独断でこの村に人間を入れた事はいただけない。しかし、例え種族が違くても傷つき帰る場所のない子供を見殺しにする事は紳士淑女たるヴァンパイヤの名が廃る」

 顔をあげ、ヴァイトが恐る恐る長老に尋ねる

「それじゃあアルはここに住んでも……」

「よかろう。但し…」

 長老はヴァイトにだけ聞こえる様耳元に近づく。

 「もしその子が村を危険に晒す様なことがあればその時はヴァイト、お前が責任を持って……分かるよな」

「了解しました長老。寛大な対応ありがとうございます」

 ヴァイトに何か言い終えた後、長老はこちらを振り向く。

「それではアルと申したな、ようこそルヴァン村へ」

 こうして俺はルヴァン村にお世話になることになった。

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