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27.覚醒

閉ざされた先から聞こえてくる王国魔法師の叫び声や衝撃、魔力の余波がヴァイトが2人を逃す為に文字通り命を削りながら孤軍奮闘していることを伝えてくれるものの、次第に樹門を通じて伝わってくる振動は弱くなっていき、遂には一瞬の静寂が訪れた。

 …………

「貴様ら!諸悪の根源であるヴァンパイアは遂にこのドナルド•ケイター様の手によって討伐が完了した!残りの残党どももこのままの我らが第8王国部隊で討伐するぞ!!」

「「おおーー!!!」」

 歓喜に包まれた絶望の宣告が村の中から発せられた、次の瞬間、幾多もの魔法が樹門に衝突し、衝撃音が洞窟内に響き渡る。

「ウソ……ヴァイトさんまで……」

ルルが力が抜けた様に地面に膝を落とし、泣き崩れる。

「ルル、俺を噛んでくれ」

ルルの目が大きく開かれた。

「ダメだよアルくん、そんなことしたらアルくんが人間じゃなくなっちゃう……」

 「頼む、、もうこれ以上自分の目の前で大切な人を失うのは耐えられないんだ……」

 ルルの目線が僅かに泳ぐ。

「でも……そしたらもう人間には戻れないんだよ、それにアルくんも一生追われる身になっちゃう」

 こんな状況でも尚、俺の身を案じてくれるルルの優しさは改めてルヴァン村のみんなの様なヴァンパイアになりたいと願う意志を強固なものにする。

「ありがとなルル、でももういいんだ、俺はこんな醜い人間として自由に生きるくらいだったら、不自由でも気高きヴァンパイヤとしてこの先、生きていきたい」

 ルルの瞳が今度はしっかりと俺を捕まえる。

 そして僅かに頷くと何か決心した様子で立ち上がった。

「分かった。それじゃあこっち向いて」

 ルルの正面に立ち、体を預ける。

「血操魔術 眷属化」

 ルルの中の魔力が大きくなるのが何故か分かった。

「それじゃあいくよ、アル」

 鎖骨の少し上あたり、ルル牙がスッと僅かな痛みを伴って突き刺さる。

熱を持った液体が肩から注入され、心臓を経由して全身を巡り出し、高揚感に包まれる。

 しかし、血液が全身に行き渡った頃、内部から血管を焼かれる様な痛みが全身を襲い、筋肉は爆発寸前の様に膨張し脈打つ。

「ゔ、ゔぅあ!」

 呻き声が口から漏れると同時に、目、鼻、耳、口などの穴という穴から血液が溢れ出してくる。

 それでもルルから送られる血液は止まる事はなく、永遠にも感じられる10秒が過ぎた時、ようやく痛みから解放されると今度は体の至る所が負った傷を癒す様に急速に修復を開始した。

 

「ハァハァ…ルルありがとな」

「う……ん…」

 貧血と魔力欠乏で苦しそうにして寄りかかってきたルルを静かに抱きかかえ、隅に座らせる。

「悪いなルルここでもう少しだけ待っててくれ」

 ルルが静かに頷く。

 再び魔法の衝突する樹門に近づきそっと触れると、俺達を逃す為に施してくれた優しさが詰まっている気かまして何処かヴァイトの温かみを感じた。

 目を瞑り呼吸を整える。

―ヴァイト、ごめん、でもやっぱりこれ以上逃げることは俺には出来ない。約束を破るのはこれで最後だから許してくれ―

 

 覚悟を決め、首元に人差し指を当てる。

「第五界毒魔法 邪血」

 全身に力が漲り全能感が体を支配する。

―いくぞ―

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