10.修行 探魔①
一通り魔術の重要性について理解したところで本格的に修行の準備に取り掛かる
「それじゃあまず俺が見本を見せるからそこで見とけ」
そう言うとヴァイトは地面に腰を下ろして坐禅を組み背筋を伸ばし両手で輪を作ると、お腹の前でそれを固定し、目を閉じる。
静かな訓練所内でヴァイトから発せられていた気配段々が薄くなっていく。
「今俺がやってるのが探魔と呼ばれる魔術を扱う上での最初のステップだ。探魔の目的は自身の体のどこかにある魔力の源を発見することだ。
基本的には頭、心臓、お腹の何処かに存在していていることが多い」
「発見するだけでいいのか?」
「ああそうだ、とりあえずやってみろ」
説明を終え、立ち上がるヴァイトと交代する様に地面に座り実際に真似してみる。
最初魔力を認識するだけだと聞きすぐに終わると思っていたが、いくら集中しても魔力の源らしきものを見つけられない。
10分が過ぎた頃、額に汗が現れ出す。
「どうだなかなか見つけられないだろ」
目を瞑ったままでもヴァイトがこちらを小馬鹿にした様なニヤケ顔で話してきたのが伝わってくる。
「今集中してるから黙ってろ」
「まあ俺も初めて探魔をやった時はお前みたいに余裕だと思っていたから気持ちは分かる」
集中してるフリをして無視するものの、こちらを気にする様子もなく、訓練場にヴァイトの声が静かに反響する。
「探魔は早くて二週間、長くてもだいたい1ヶ月ほどで習得できる。
だが逆に言うとそれまでに習得できない奴は一生できない。まあ習得率はヴァンパイアでも6割ってところだな」
こちらの恐怖を煽る様なことを平然とした様子で話し終えると、訓練所の入り口付近に陣取るように腰を下ろした。
「ハァハァ…」
さらに二時間ほど経った頃、強い倦怠感が押し寄せ、瞑想を続けられなくなってしまう。
一見座って居るだけに見える修行だが、自身の魔力を捉えようと集中する事は、予想していたよりもはるかに体力を奪っていった。
「今日の所はここまでにするか」
入口の方からずっとこちらを見ていたであろうヴァイトから声がかかる
「ハァハァ…いやまだ続ける…」
ヴァイトが呆れた様子で立ち上がる。
「最初から飛ばしたい気持ちは分かるが、探魔はコツ掴むまでは高い集中力がないといつまで経っても終わらねぇ。
これ以上続けても時間の無駄だ。明日もあるんだし今日はもう休め」
ヴァイトの説得に屈すると、続けたい気持ちを抑え、ここはヴァイトの助言を素直に聞くことにした。
立ち上がると自分が疲れていることを更に実感する。
村に帰る途中、二人で話しながら歩いているとレオンさんが前に図書館があると言っていたことを思い出した。
「そういえばこの通路のどっかに図書館あるって前聞いたんだけど、どこにあるんだ?」
「ああ図書館ならちょっと進んだ先にある二手に枝分かれした道の左の方に行けばある。何か気になるものでもあんのか?」
「魔術について何にも知らなかったし本で調べてみたくなっただけだ」
「なるほどな、勉強熱心だな。とりあえず俺はこのまま家に帰てるが帰り方は分かるよな?」
「ああもうここからなら問題ない」
突き当たりにさ差し掛かるりヴァイトと別れると、先ほどの案内に従って図書館に向かった。