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アクマテキ  作者: なん
二章
6/34

伊達寺削鍬という男

「ほほへはふへんはほうはっはんへふ?」


「呑み込んでから喋れよ……」


 田擦は呆れた表情を浮かべる。

 伊達寺と田擦の二人はラーメン屋で腹ごしらえをしていた。

 こじんまりとした店で渋い店主が黙々とラーメンを提供している。

 二人はカウンター席に座ってズゾゾゾと麺を啜っている。


「作戦ってどうなったんです?」


 しっかり嚥下して問い直す。

 田擦達が追跡しているデーモン——陀付の放逐作戦会議は巨大デーモンを放逐した数日後に行われていた。

 二人だけの放逐ならば一目置かれたかも知れないが地場が居たことにより放逐官の興味は地場に注がれた。


 合同会議中も地場の話題が少し出た。

 田擦と伊達寺の事等眼中にない様だった。


 あれだけしつこかった揉短は忘れた様に田擦に構わなくなった。

 不思議な位鳴りを潜めている。

 兎も角陀付の放逐作戦は決定した。

 其の内容を伊達寺に共有する。


「陀付はテレポートの特性を持つ第二種デーモンであることが確定した。探知機の反応や周辺カメラの映像から間違いないだろう。捕えて放逐は困難だ。よって移動範囲を制限する」


 資料を取り出して伊達寺の前にスライドさせる。


「なんですかこれ」


 資料を見て首を傾げる。


「機関が開発した新型刹魔だ。ドーム状に展開した刹魔がデーモンを閉じ込める。これで陀付の動きを制限してドームの中で放逐する」


「ふーん」


 感心しているのか資料に目を奪われている。

 無闇に追っても陀付は放逐出来ない。其の事は伊達寺も理解していた筈だ。だからこそこの作戦は伊達寺の興味の内側に在る様だった。


「この作戦は連携が鍵になってくる。行動範囲を狭めてもテレポートの特性は防げない。ドーム型刹魔は陀付を放逐するまで解除できないから長期戦になればどんどん不利になる。伊達寺、分かるよな?」


 伊達寺はデーモンの事になると人が変わるが一人で突っ走る傾向が在る。この作戦は全員の連携が必須だ。放逐が長引けばそれだけ消耗する。連携が取れなければ最悪全滅の可能性もあるのだ。伊達寺を頼りにするからこそ釘を刺しておかねばなるまい。


「連携ですね。分かりました。ところでこのデーモンってテレポートの特性なんですね」


 平坦に了解する伊達寺。本当に分かっているかは怪しいが。


「ああ。今回の放逐は大変だが私たちの価値を示す機会でもある。陀付は絶対に放逐する」


 決意を灯す田擦。

 その瞳は爛々と燃えている。

 伊達寺の瞳とは対照的な熱い瞳。

 単独で突っ走る伊達寺と其れをサポートする田擦。正反対に見える彼らが同じ班に成っているのは何かの運命なのかも知れない。


「ごちそー様です」


「ご馳走様でした」


 食べ終えた二人は資料を抱えて会計を済ませ店を出る。

 うーんと伸びをする田擦と欠伸をする伊達寺。

 太陽が真上に鎮座し熱光を浴びせてくる。


「もう暑さもやわらいできたな。そろそろ秋か」


「秋ですか」


「時間が経つのは速いな。同時に怖いと思う。昔の感情が風化してしまうんじゃないかと思ってしまう」


「風化ですか。分からないですね。時間が経ったところで何も解決しないですしやるべきことは変わらないと思います」


「……」


「なんですか?」


「いや、伊達寺の過去については聞いたことがないなと思って」


「あー。大した事ないですよ。語れるほどのものはないですね」


「そうか。まあ皆何かを抱えているからな。詮索して済まなかった」


「いえいえ。全然気にしてないですよ。ていうかこんな話するのも久し振りですね」


「ああ。そういえば会ったばかりの時もこんな話したっけか」


「会ったころの先輩チョー怖かったですよ。よーく覚えてます」


「そうかあ?今と変わらない気がするが」


「いやいや怖すぎて漏らしましたもん。大」


「大かよ!つーか漏らしたのかよ!見たこと無いぞ伊達寺が漏らしたとこ」


「まあ俺も人間ですから大の一個や二個漏らしますよ」


「あぁそうなんだ……」


「昔よく親と長さ比べしたんですよ」


「もうその話はいいわ」


「そうですか。残念です。親の変顔で失神した話もしようと思ったんですけど」


「すっごい気になるがまあ今は良いわ」


「そうですね。先輩の漏らしエピソードはまたにしましょうか」


「誰がするか!」

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