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アクマテキ  作者: なん
一章
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はじまり

 がちゅ。

 これは記憶だ。

 昔の記憶。

 雨の冷たさが吹き飛ぶほどの光景を目の前に俺は何も出来なかった。

 唯の傍観者に成るしか許されなかった。

 灰色の世界。

 目の前には化け物。何かを()んでいる。

 化け物が此方を向く。


 「    」


 何て云ってたんだっけ。

 靄に塗りつぶされて分からなくなった。


 暑さがまだ残る季節。

 日光に照らされじんわりとした快感に包まれる。

 柔らかな草のクッションに身を預け心も身体もうっとり。

 意味も無く手を伸ばしてみたりする。


 「あーー、殺さなきゃ」


 雰囲気をぶち壊す発言だが彼にとっては日常である。


 「ぜったいころす、でも今は寝る」


 微睡みに全身を預け宙ぶらりんな思考が段々静止していく。

 次第に瞼が重くなり暗黒の世界に入る。完全に暗黒ではなく何かが蠢いているような暗黒。

 意識が徐々に落ちていき——。


 「~~~。~てら。だてら」


 ノイズが入る。


 「だてら。伊達寺」


 ごっ。


 打たれた。

 意識と身体が同時に覚醒する。

 一瞬だけ研ぎ澄まされた感覚は徐々に落ち着いた。


 「先輩」


 (´Д`)盛大な欠伸を晒しつつ呼ばれた方向を向いた。

 綺麗で可愛らしい顔立ち。セミロングの黒髪に白のインナーカラー。凛と鳴るチョーカーの装飾。

 健康的な肢体を包む漆黒のスーツをしっかり着こなしている。


 「何してんだお前。完全にサボりだろが」


 眉を曲げた顔すら写真に収めれば売れそうだ。

 「いやあ、デーモンいないかなって。ここからだと街がようく見えるんですよ」

 呆れた様な顔をする男に女は本当に呆れた。

 腰に手を当て溜息を吐く。


 「もういい。とっとと戻るぞ」


 豊満な身体をしているわけではないのになんだか色気がある。

 そんなことを考えつつ男は立ち上がりぼさぼさの茶髪を大仰に振った。


 「はーい」


 スーツに引っ付いた植物を雑に払いのける。


 「先輩なんか今日えろいですね」


 「はあ!?」


 男の名は伊達寺削鍬——だてら そぐわ——。


 化け物退治の組織の下っ端だ。


 女の名は田擦日田向——たすら ひたむき——。


 同じく化け物退治の組織に属しており隣に居る怠け者の先輩である。


 「なんで呼びに来たんです?デーモンですか?」


 「ちげー。会議だ会議。前云っただろが。一応伊達寺も来い」


 言い合いながら緑の丘を下る二人。

 遥かな太陽は様々な者を平等に照らしていた。

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