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13.アキラの懐事情

「え? すごい……いや、足りるっていうか……すごくない? こんな厚みのある札束、テレビとかでしか見たことないんだけど……」


カズヤも目を丸くしている。


「まぁ、俺も、これだけいっぺんに持つのは初めてだけど……とりあえずこれ、二人にも渡しとくわ」


と言って、トランプのカードでも配るように、ほいっとざっくり三等分にした束を手渡してきた。



「え? え? ちょっと待って! こんなの受け取れないよ!」

「でも、金がないと身動き取れないだろ?」


(確かに……)



「ありがとう……でも、後で絶対返すから!」


と、返金額確認のためにお金を数え始めた。



「わぁ……こんなに大勢の諭吉さんに見つめられる日が来るなんて……」


と、扇子のように広げた万札をしみじみと見ていると、


「僕もこれ、一回やってみたかった」


と言って、カズヤも扇子型に広げて、顔を扇ぎ始めた。アキラは、


「それはこうやんだよ」


と言うと、椅子に腰掛け、背もたれに寄りかかると、片手を肘掛けに乗せ、ゆったりと一万円札で作った扇子を扇ぎ始めた。


「うわっ、悪そ〜っ!」

「マフィアにしか見えない」


カズヤまで賛同したので、


「どこがだよ!」


とアキラが反論したところで、皆笑った。




「って、笑ってる場合じゃないって! 32万円ある……」


そこで口をつぐむと、カズヤが、


「34万円ある……」


と小さな声でボソッと言った。


「お。俺の目分量、なかなか正確だな」

「うん。すごい……じゃなくて! 多いよ!」

「多い……」


中高生コンビが大金を前にうろたえていると、


「この先、何があるか分かんねーし、正直、これで足りるかも……」

「いやいや、足りるでしょ!」

「でも、こういう状況がいつまで続くか、今は検討もつかないだろ?」


二人とも押し黙った。


「それに、正直、俺一人で100万持ってうろつくとかこえ~し。だから、二人にも背負ってもらおうって魂胆」


アキラはそう言うとにんまり笑った。



「……分かった。これは、何年かかっても、絶対返すから!」

「僕も」

「あぁ。出世払いな」

「だから……もうちょっと減額して」

「僕も」


アキラは一度目をパチクリさせた後、


「ハハハハハ! 分かったよ。じゃぁ、歳の差分配にしよう」


と言って、若い順から20万、30万、50万と分けた。



「あんまり変わってない……」

「僕も、心理的にはあまり変わった気がしない」

「二人とも文句言うな。俺は大分増えたんだからな」


それを言われると何も言えなかったが、気になっていたことを聞いてみた。



「あのさ……そもそもこのお金って、勝手に使っちゃって大丈夫なの? お父さんが別荘に隠しておいたへそくりとかじゃないの?」

「へそくり? はは! 心配すんな。そんなんじゃねーよ。何かあったとき、ここですぐ生活できるようにって、ずっと置いてあったやつだから。今がまさに使いどきってわけよ」


そう言いながら、アキラはふと視線を落とした。



「お。お前、いいもん持ってんじゃん。ちょうど良かった。話してたら、喉乾いちまった。」


と言って、手に持っていた缶ジュースにアキラが手を伸ばした。


「あ、それ……」


と止める間もなく、アキラがプシュッと蓋をあけた途端、


ぶわわわわわわわわわわっ!


と中身が勢いよくあふれ出てきた。


「炭酸なの……」

「……そうみたいだな」


と、ずぶぬれになったアキラが答えた。


「ぷっ……あは! あははは! 漫画みた~い! こんな風に本当になるんだぁ」

「わはははははは! ははは!」


笑い上戸のカズヤにもスイッチが入った。


「お前ら~。やってくれたな!」

「違うよぉ。アキラが……ハッハ……勝手に……ふはは……取って自爆……」

「自爆……ぷはっ! ははははは! ははは……」


カズヤにターボスイッチが入ってしまったようだ。カズヤが身をよじりながら笑っているのを見て、アキラもついに、


「ぷっ……」


と吹き出し、


「笑うんじゃねーよ!」


と言いながら大笑いした。




ひとしきり笑い終えると、


「はぁ……腹痛ぇ……。お前らといると、時間があっという間に過ぎちまうな。とりあえず、金の使い道も含めて、今から作戦会議でもするか」

「おうっ!」

「うん」




 三人は居間に戻ると、テーブルを囲み、ソファに座った……のは、アキラだけで、あとの二人は、絨毯の上に座っていた。


「何でお前らソファに座んねーの?」

「だってソファだと、テーブル挟んで、なんか遠いし、この絨毯ふかふかで気持ちいいし」

「僕ん家、畳だったから、床の方が落ち着く」

「ふうん……」


アキラは珍しいものでも見るような目をしていたが、本題に入った。


「じゃぁ、これからのことな」

「うんうん」

「お前らは、どうしたい?」

「うーん、私はやっぱり、家に帰りたいかな……」

「僕も」

「だよな。家族も心配してるだろうし」

「うん……でも、さっきのニュースからすると、あの建物からいなくなった私たちのことを探してる人もいるかもしれないんだよね?」

「まぁな……そいつが、なのか、そいつらなのか分かんねーけど、俺達の素性まで知ってるとしたら、まず最初に探すのは……」

「家……」


カズヤが答えると、三人は難しい顔をし、それぞれに考え始めた。ふと思いついたことを口にしてみた。



「でもさ、もしここが未来だったら……今、家には34年後の自分がいるんじゃない?」


それには、アキラもカズヤも何も答えなかった。


(あれ? なんか変なこと言ったかな? ちょっと飛躍しすぎだったかな……)


「と、とにかく、今の状況を知るにためにも、どこでもいいから町に降りてみない?」


この提案には二人とも同意してくれた。三人の意見が一致したところで、アキラが言った。



「だったら、ここから歩いて30分位のところに町がある。そこに行ってみるか?」

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、三人が町で見たものは?


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