一緒に頑張ろう
「そうですか!異世界の人は、スキルを持っていないんですね。一緒にプロを目指して頑張りましょう」
「あっ、はい」
ホウに差し出された手と握手をした。
俺は、ミズーを見つめた。
ミズーは、右手の人差し指を口に当てて(しっー)と言っている。
どうやら、俺のスキルの事をホウには話してはいけないらしい。
ホウから手を離すと、彼はポケットから小さなスプレー容器を取り出して、自分の手にシュッシュッとした。
「それは……」
「あーー、お気になさらずにアルコールスプレーです」と言ってホウは笑っている。
こえーー。
めちゃくちゃ潔癖じゃん。
「窓を開けてもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ」
ホウは、窓を開けに行く。
「どうも、何だか空気が濁った気がしたので……」
そう言って笑うけど、目は全く笑っていない。
「それでは、これからアーキーをよろしくお願いします」
「はい、わかりました」
そう言って、ミズーとパーンは、部屋から出て行く。
「待って」
俺は、小さい声でミズーの腕を握った。
「お話しなら、外で聞きますよ」
「はい」
俺は、外に出る。
「あのーー。聞きたいんですがーー」
「はい」
「彼のスキルの潔癖って?」
「あーー。そうですね。アーキーとは真逆なスキルですね。ホウは、産まれつきプロになれる逸材になります」
俺は、その言葉に困ってしまう。
「あのーー。他の部屋がいいんですが……」
「他の部屋ですか?それなら、60万きらり、もしくは20万きらりを払っていただきますが……。大丈夫ですか?」
「ありません」
俺は、がっかりしていた。
「それならば、彼と一緒に生活して下さいね」
ミズーは、そう言って笑っている。
「お金は払えなくても、別の部屋は?」
「残念ながら……。プロコースの特待生は、ホウしかおりません」
そう言われて、俺はさらに困った。
「大丈夫です。すぐにスキルは習得出来ますから……」
「本当かなーー」
パーンは、俺の言葉に肩を叩いた。
「大丈夫、大丈夫!心配する事なんかないから」
そう言って笑ってくれるから、何だか俺は、大丈夫な気がした。
「では、明日からスキル習得を頑張って下さい」
「はい!わかりました」
「それでは」
「じゃあ、またね!秋月」
「パーン、また会える?」
「また、会えるさ」
「ありがとう」
俺は、パーンに手を振った。
大丈夫だ!何とかなる!
俺なら、スキルをすぐに習得出来る!
俺は、部屋を開けた。
「靴は、そこに閉まってね」
「ああ」
そう言われて、三段ボックスに靴をしまった。




