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エスパーかあちゃん  作者: SF
5/6

五本目!!!!! 初恋パイロキネシス 前編

うちに帰ったら、なんや小学生くらいの男の子がちゃぶ台に向かってスマホでゲームしとった。

え、この子なに?俺帰る家間違うたんか?


「燦射音、おかえり」


母ちゃんが台所から顔出した。やっぱ俺ん家みたいやな。


「母ちゃん、あの子だれ」


母ちゃんは俺を手招きして、ジェスチャーだけで台所に入れ言うてきた。


「父ちゃんが連れてきてん。なんやご両親を亡くしはったみたいで、親戚の人らが引き取ってくれるまで預かるんやて」

「は?なんやそれ」

「預け先は決まっとるけど、急やったし、まだ準備出来てないから来週までおるねんて。仲良うしたってな」


はぁ、なんや大変やな。よっしゃ、いっちょ遊んだるか。


「なぁ、なんのゲームしとるん?」


ニコーッと笑ろて隣に座った。

その子は目ぇまん丸にして


「うわ、デカッ」


て、俺のガタイ見てちょっと身体を後ろに引いとった。

うん、慣れとるわ、このリアクション。ひどい時だとちっさい子に泣かれるわ。


「話しかけないでもらえる?集中できないから」


目がまたスマホに戻ったわ。なんやこれ。音ゲー?音符が画面の下の記号に重なったらタップするやつ。

ほんでめっちゃ上手いやん。

「俺もやっていい?勝負しよや」


「は?邪魔」


塩どころか激辛な対応やん。よっしゃ、こっちにも考えがあるで。

母ちゃん直伝の取っておきの方法が・・・!

俺は台所にダッシュして、スプーン取ってきた。


「あのな、兄ちゃん、エスパーやねん!」


は?とこっち見た時に、フンッてスプーンを曲げたった。どうや!


「いや、それ普通に力入れてるだけじゃん」


い、一瞬でバレおった!!え、この子も父ちゃんみたいなエスパーなん?!


「馬鹿じゃねえの。邪魔すんなハゲ」


クリクリのお目々でメンチ切られたわ。まだハゲとらんで!父ちゃんみたいに将来ハゲるかもやけど!


「ちょっと!何言ってんの!」


ゲンコツと一緒にカワイイ声がガキンチョに降ってきた。見上げたら、おうわああああ女子がおる!!え、制服?高校生!?多分学校違うけど俺とおんなじくらいやん。


「駄目でしょ迷惑かけちゃ!」


腰に手を当てて、ショートボブの髪を揺らしながらガキンチョに怒っとる。カワイイけど気ぃ強そうやな。


「うっせえ、大体コイツが」

「どーせハジメちゃんが生意気な口きいたからでしょ?!あ、コラ逃げんな!」


部屋ん中でドタドタ追っかけっこし始めたわ。ほんでガキンチョが捕まってまたゲンコツ食らっとったわ。え、なんなんこの子。


「あ、ユカリちゃんおかえり」


母ちゃんが台所から菓子とお茶持ってきたわ。ユカリちゃんいうんかこの子。


「あ、うわわわどうもすいません。騒がしくしちゃって」


ユカリちゃんはあわあわし始めおったわ。ほんで母ちゃんの持っとるお盆を持ちます言うて受け取る。ちゃぶ台に乗せながら俺を見た。


「えっと、ごめんなさい、うちの弟が」


ガキンチョそっくりなクリクリお目々をパチパチさせる。カワイイなあ。


「この子がなんかやらかしたらぶん殴ってくれていいから」


かわいいお目々が一瞬で据わったわ。中々バイオレンスな姉ちゃんやな。

ユカリちゃんに指差されて、ガキンチョはビクッと肩を上げとったわ。姉ちゃんには頭あがらへんのか。


「ええねん。俺がぶん殴ったらあんなガキンチョ木っ端微塵やで」


ガキンチョは、え、て虚な顔してこっち見て、ユカリちゃんは横向いてブフーって吹き出した。


「ガキンチョ言うな」


ガキンチョは母ちゃんお手製のチーズケーキをもっしゃもっしゃ食べとるわ。ほんで紅茶に砂糖とミルクめっちゃ入れとるわ。やっぱガキンチョやな。


夕飯時に父ちゃんが帰ってきて改めて話を聞いた。大体母ちゃんの言っとったこととおんなじやった。


「仕事仲間の友達の子らなんや。ユカリちゃんとハジメ君や。燦射音、お前ユカリちゃんに手ェ出したらシバくで」


シバくどころか殺されそうな目付きやったわ。

仕事仲間の友達てそれホンマ他人やん。父ちゃんお人好しすぎへんか。でもうちに来なかったら施設にも入れずにホテルを泊まり歩く予定やったんやて。それ聞いてまったらもうあかんて言えへんわな。

ユカリちゃんは電車で高校行っとるけど、ハジメ君の小学校は遠すぎるから休んどるんやて。まだ3年生やて。そら1人で県外まで通うのはキツいわ。

ユカリちゃんと母ちゃんは洗い物した後キャッキャしながら銭湯行ったわ。もう仲良うなったんやな。

ハジメ君は


「1人で入る。ガキじゃねえんだし」


って一丁前な口きいて、男らは別々に風呂入ったわ。でもハジメ君割ときちんとしてはる。

服はちゃんと畳むし、言わんでも食器を流しに持っていくし歯磨きもやっとる。俺も母ちゃんに口煩く言われたもんな。ユカリちゃんか()うなった母ちゃんがしっかりしとったんやな。

あかん、それ考えたら涙でてきそうやわ。

鼻を啜りながら布団かぶって寝た。


翌朝、居間に行くとなんや台所から楽しそうな声が聞こえてきた。

ユカリちゃんと母ちゃんがニコニコしながら朝飯作っとる。

母ちゃんは


「女の子もええなあ」


ってウホウホ喜んどった。 

ユカリちゃんも「百合子さんと話すの楽しいです!」て弁当に卵焼き詰めとった。

え、あの弁当箱(重箱3段重ね)もしかして俺のやつ?やばいなんやドキドキしてきた。


家を出る時、電位美人(デイビッド)はユカリちゃん見て顔真っ赤にしとったわ。かわええもんな。ほんでユカリちゃんが作った言うたら弁当の中身取られまくったわ。


「俺も燦射音ん家行く!」


放課後、鼻の下伸ばして馬面に拍車をかけてうちに来おった。  


「コラ!ちゃんと勉強しなさいって言ってるでしょ!それか百合子さん手伝いなさい!」


玄関開けたらユカリちゃんはまたハジメ君にゲンコツ食らわせとったわ。電位美人はスンッてなって


「ゴリラ増えてない?」


て言うてきたからプロレス技かけて遊んだった。

でも電位美人は母ちゃんから出された黒豆抹茶クッキー食べながらユカリちゃんと楽しそうに話しとったわ。おから入りだから低糖質で食感もサクサクや。最強やな。


「あー、運動したのに体重増えたの筋肉が増えたからなんだ。筋トレやめなきゃよかったなあ」

「せやで。筋肉は脂肪を燃やす機関やねん。体重より引き締まった見た目が大事や思うわ」

「なるほどねー」


筋トレオタクの電位美人の会話に付いてっとる。ユカリちゃんは誰とでも仲良うなれてすごいなあ。

でも電位美人と話とるのを見ると、なんや胸の中がモヤモヤした。


ほんで、土日にユカリちゃんと電位美人とハジメ君と俺で遊びに行く約束した。

ハジメ君、ずっと家におるのもなんやし、この辺に友達もおれへんからて、ユカリちゃんが出掛けるのにええとこないか聞いてきたのがきっかけやった。ユカリちゃん、なんだかんだでいい姉ちゃんやん。

ポカポカ日向ぼっこしとるみたいにあったかい気分になる。


その日まで、しばらくうちの中は賑やかやった。

ハジメ君に俺がちょっかい出してからかったり、電位美人もしょっちゅう来たり、ユカリちゃんが母ちゃんとキャッキャしながら家の事やったり、ユカリちゃんがハジメ君シバいたり。

でもハジメ君、口悪いしいっつもむすっとしとるけど悪い子やあらへんかった。

大人しゅうゲームやって騒いだりせえへん。わがままも言わへん。好き嫌いもせえへん。母ちゃんが頼めば手伝いするし、自分の事は自分でやっとる。

でもユカリちゃんは


「いいの。私、ハジメちゃんと早めに家出るつもりだから。

ハジメちゃんにはしっかりしてもらわなきゃ」


て使命感に燃えとるみたいやった。

ユカリちゃんすごいわ。


それから土曜日になって、ありきたりやけど商店街をぶらぶらした。

ユカリちゃんはふわっとした透け感のある袖のチュニックにデニムのショートパンツ、黒タイツを合わせとって、化粧もしてて、ちょっと大人っぽくてドキドキした。

ユカリちゃんは惣菜屋のコーンクリームコロッケを頬張りながら、八百屋であれが安いだのこれが安いだのテンション上げて、母ちゃんに教えてやらんと、って笑っとった。でも、ハジメ君はむすっとした顔でユカリちゃんの後をくっついて歩くだけやった。

ユカリちゃんは音楽が好きみたいで、レコード店を見つけるとダッシュしおった。


「うわあ、ダスティ・スプリングフィールドが歌ったやつあるんですか?聴いていいんですか、嬉しい!」


レコード店の爺ちゃんは鼻の下伸ばしながら蓄音器でプレスリーやらジャズやらねだられるままに掛けとったわ。

お、おお!ハジメ君もなんや目をキラキラさせとる。なんや、なんや。

目の先を追ってみると、オルガンがひっそりと店の奥に置いてあった。


「ハジメ君、あれ弾きたいん?」


ハジメ君は顔を顰めた。


「別に」

「ええやん頼んでみれば。今ならイケルで」


爺ちゃん今ご機嫌やからな。


「・・・から」

「え、なんて?」

「だって、女が弾くやつだから」


ハジメ君は顔を真っ赤にしとった。

あーなんか覚えあるわ。小学生の時、姉ちゃんとピアノ習っとったヤツが女みたいやてからかわれとったわ。


「それ、クラスのヤツに言われたん?」


ハジメ君は頷いた。やっぱりな。


「ええやん。今はクラスのヤツらおれへんし。それに俺はピアノ弾けるやつカッコええ思うで」


ハジメ君はホンマに?っていいたげな目で俺を見てくる。

俺は爺ちゃんにデッカい声でオルガン弾いてええか聞いた。爺ちゃんはユカリちゃんといつの間にか茶菓子食いながらええよ言うた。

ニッコニコやがな、いつもは死んだ魚みたいな目ェしとるのに。


ハジメ君をオルガンの椅子に座らせたったら、うわあって小さく口の中で言うて、目がキラキラし始めた。

そのままアニメ映画の曲とか車のCMでよく聞く曲とか弾きだした。メロディは簡単なやつやけど普通に上手いやん。


しばらく弾いて、ハジメ君は満足そうに椅子から飛び降りた。


「もうええんか?」

「うん、楽しかった!」


屈託なくニコーッて笑う顔みたら、なんや感動して泣きそうになったわ。初めてこんな楽しそうな顔みたもんな。てかユカリちゃん涙ぐんどるやんけ。よかったなあ、ユカリちゃん。ハジメ君元気が出てよかったな。

よけい泣きそうになったけど、電位美人と爺ちゃんが盛大にもらい泣きしとるのを見て涙が引っ込んだわ。


日曜日もここに入り浸っとった。

爺ちゃんに褒められてハジメ君も嬉しそうにしとったわ。

でも次の週には引っ越す事を言うたら、爺ちゃんはめちゃくちゃ残念そうにしとった。


俺も寂しいわ。せっかくハジメ君やユカリちゃんと仲良うなれたのにな。

ユカリちゃん・・・もう会えへんのやろか。

でも連絡先聞くのもなんやガッついてる思われるやろか。


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