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 パーシヴァルの言葉に、シャルロッテとリリィは全く別の反応を示した。


「鏡の中の人? それって、自分自身と話しているってことなの?」

「鏡の中の人とお話ができるなんて、さすがはお伽噺の王子様ですね!」


 怪訝そうに眉を顰めるシャルロッテに対して、リリィは大きな目を輝かせて興奮したようにパーシヴァルに詰め寄った。

 ほとんど同時にそう声を上げ、相手の言葉が信じられないと言うように顔を合わせる。


「リリィ、エリアスさんはそう言われているってだけで、本当に物語の中の人物ではないのよ」

「お嬢様だって妖精姫って呼ばれてるじゃないですか」

「呼ばれてるからって、妖精ではないでしょう?」

「……え、妖精じゃないんですか?」

「あなた、私のことを何だと思っていたの……」


 まさか本当に妖精だと思っていたわけではないだろうが、それでもリリィのことだ、もしかしたらという可能性を否定できない。

 驚いたように口を小さく開けて目を見開いていたリリィが、すぐに悪戯っぽい笑顔を作ると「冗談ですよ」と、本当か嘘か判断のつかない口調で付け足した。


「でも、エリアス様なら鏡の中の住人とお話しできそうな感じがするじゃないですか」

「鏡の中に人がいれば、そう言うことも出来るかもしれないけれど……」


 シャルロッテはそこまで言って、“鏡の中の人と話す術”がゼロではないことに気づいた。

 リリィが思い描くお伽噺のような話ではなく、もっと深刻で陰謀めいた話だった。


(もしも、鏡を通じて会話ができるような力を持った魔女がいたなら、変な話ではないのよね)


 今でこそ、魔女の力を持つ者でもリーデルシュタイン王国で暮らすことができているが、まだまだ偏見は多い。ある程度の力を持つロワー家ですらも、眉を顰められることが少なくないのだ。

 魔女の中には不死に近い能力を持つ者もおり、総じて寿命が長い。過酷な迫害に遭った者や、その過程で親族を亡くした者も多い。

 シャルロッテたちにとっては歴史で習うような遠い昔の出来事だったとしても、彼女たちにとっては忘れることのできない辛い記憶の一ページなのだ。

 エリアスが魔女と話しているのではないかという疑惑は、シャルロッテが勝手に想像したものだ。事実ではない可能性のほうが大きい。エリアスはもとより、フォルミコーニ家の人々に関しても、今まで一度も不穏な噂を聞いたことはない。

 ただの思い過ごしだと言い聞かせても、一度抱いた不安の種はシャルロッテの意思に関係なく育っていってしまう。

 この不穏な想像を否定し、育ちつつある花を刈り取るためには、実際に自分で調べてみるよりほかはない。


「私……エリアスさんに会ってみようかしら」


 シャルロッテの呟きに、リリィは諸手を挙げて喜び、パーシヴァルは意外そうな顔で目を丸くしていた。

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