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 シャルロッテがエッゲシュタイン邸を訪れてから数日後、パーシヴァルの鞄から再びあの分厚い書類が取り出された。

 機密事項と書かれたそれをテーブルの上に置き、紅茶を運んできたばかりのリリィと一緒に楽しそうに眺めている。


「パーシヴァル様、こちらのかたはどんな人ですか?」

「バストル男爵のセドリック様ですか? そうですね……真面目なかた、ですね。マクシミリアン男爵のアデル嬢と従兄妹同士なんですよ。セドリック様のお母様とアデル嬢のお母様が姉妹だとか」

「アデル様は知ってます。色々な研究をされている、すごいかたですよね?」

「……えぇ、そうデスネ……」


 キラキラと目を輝かせるリリィとは対照的に、パーシヴァルの顔色は優れない。眉間に深いしわを刻み、思い出したくない記憶から逃避するかのようにギュっと目を閉じている。

 リリィの言うとおり、アデルは素晴らしい研究者だった。彼女の探求心は尽きることなく、一日が二十四時間しかないことを惜しむかのように、自身の研究に没頭していた

 アデルの研究分野は多岐にわたり、時に難病の特効薬を作っては、作業効率が飛躍的に向上した水車を作り上げた。彼女の生み出した素晴らしい研究成果たちは大いに王国に貢献してくれているのだが、研究とは失敗がつきものだ。誰しも、失敗せずに成功を勝ち取ることなどありえない。彼女ほど才能がある人間であっても例外なく、成功にたどり着く前には幾度も失敗を繰り返していた。

 そしてその失敗は、いつも派手だった。火事や異臭騒ぎは日常茶飯事で、研究のためにと王国が新たに用意した研究所を台無しにされたことも、一度や二度ではない。人里離れた場所に苦労して建てた最新式の機材が揃った研究所を、引き渡した翌日に爆破されたこともあった。あの時のパーシヴァルの途方に暮れた顔は、いまだにシャルロッテの脳裏に深く刻み付けられていた。

 セドリックは、そんな規格外のアデルの助手を長いことしていた。シャルロッテは数度しか会ったことはないが、優しくて穏やかそうな雰囲気の人だったことは覚えている。


 パーシヴァルとシャルロッテがそれぞれ物思いにふける中、ペラペラと書類をめくっていたリリィの手が短い悲鳴と共に止まった。


「お、お嬢様……! このかたをご存知ですか?」


 興奮したような顔で、鼻息荒く手渡されたページに目を向ける。


「フォルミコーニ子爵のエリアスさん? 何度かパーティーでご一緒したことがあるけれど……」

「このかた、お伽噺の王子様って呼ばれてるかたですよね! 本当に、噂通りのかたなんですか?」

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