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 クリストフェルの誕生を祝って制作されたその肖像画は、生まれたばかりの彼を抱くヴィオレッタ王妃と、二人に寄り添うランヴァルド王を中心に描かれていた。

 聖母を思わせるヴィオレッタの微笑み、その腕の中でスヤスヤと眠るクリストフェルの無垢な顔、喜びをかみしめるランヴァルドの表情。その全てが生き生きと鮮やかに描かれており、初めて食堂に招かれた人々は皆、肖像画の前で立ち止まり感嘆した。


 その中には、コルネリウス伯爵夫妻はもとより、ローズフィールド男爵夫妻、マールヴェル男爵夫妻の姿もしっかりと描かれている。さらには、今は亡きヘレニウス公爵の姿もあった。

 王族の血を引きながら、マティルダ女王が定めた一夫一婦制に反する出自を持つヘレニウス公爵家は、国民から忌み嫌われた存在だった。短命な者の多い王族の中で、ただ一人長命なところも反感を買っていた。しかし、ランヴァルド王にとっては良き相談相手で、心の拠り所でもあった。それを裏付けるように、肖像画ではランヴァルド王の隣に描かれている。

 厳格な内面を映したような険しい表情で描かれることの多いヘレニウス公爵だったが、この時ばかりは眉間のシワも消え、口元には優しい笑みが浮かんでいる。


 幼い王子の誕生に喜びに沸く面々の中、端のほうで一人、仏頂面でワインを飲む一人の男性の姿があった。背景に溶け込むように小さく描かれているため、一見すると目に入らないのだが、一度目に留めると気になってしまうほどに違和感がある。

 その人こそが、若き日のロックウェル子爵だった。

 顔立ちは整っているのだが、内面からにじみ出る陰湿さがすべてを台無しにしていた。ズルがしそうな灰色の目は、幼い王子に向けられることはなく、明後日の方角を睨みつけている。輪から一人外れたところで描かれているあたりも、彼が画家にどんな態度で接していたのかが如実に表れていた。


「あの肖像画のロックウェル子爵の顔、誰かに似ていると思わない?」


 シャルロッテの問いかけにハイデマリーの顔が思い浮かぶが、彼女はロックウェル子爵とはあまり似ていなかった。どちらかと言えば、母親のロックウェル子爵夫人にそっくりだった。

 気の強さが宿るアンバーの瞳も、ツンとすました口元も、母親のそれとよく似ていた。


「例えば、王都騎士団の……」

「まさか……!」


 焦らすような口調で追加された情報に、パーシヴァルの目が見ひらかれる。

 王都騎士団の一人に、ロックウェル子爵に面立ちだけは瓜二つの人物がいた。子爵の内面の卑しさを消し去り、ふてぶてしさを気弱さに変えたら、まさに“彼”になるだろう。

 実子なのだから、顔立ちが似ていることは当然と言えば当然だった。


 地平に近づいた陽は赤々と空を焦がし、窓から差し込む光がシャルロッテの髪を燃えるような色に変える。横顔にもべったりとした赤い光が張り付き、顔に濃い影が落ちる。

 ニッコリと微笑んだシャルロッテの顔は、酷く人間じみて見えた。

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