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 パーシヴァルがシャルロッテの手を取り、甲に軽く口付けをする。触れていないが、唇の熱を感じる距離だった。シャルロッテが手を引っ込め、一歩距離を取ると険しい表情でパーシヴァルを睨んだ。


「王の付き人が、王から離れても良いのかしら?」

「王の許可は得ています。王城の警備は万全ですし、国外の勢力で城内に侵入してまで暗殺を企てようとする輩はいないでしょう。カシミロ氏は我が国との関係を重視しており、強硬派の動向に目を光らせています。彼らが国外で自由に活動できるとは思えません。マールグリッドとの同盟が盤石なうちは、スーシェンテも動かないでしょう」


 いくらスーシェンテの軍隊が強力だとは言え、リーデルシュタインとマールグリッドを同時に相手できるとは思えない。スーシェンテが動くなら、同盟が破棄された後だ。


「オウカにいたっては、オウカ王の意向に背いてまで動く者は皆無です。前オウカ王が暗殺された際に、一緒に葬られましたからね」


 現オウカ王にという言葉を、パーシヴァルはあえて口にしなかった。

 パーシヴァルの青い瞳が、鋭くシャルロッテを射抜く。口にしていないもう一つの可能性があることについて、シャルロッテは気づいていた。


(確かに今の状況なら、国外の勢力は危険を冒してまで城内に暗殺者を送り込んできたりしないでしょうね。……でも、国内の勢力なら?)


 例えば、愛しい妹が突然王から婚約破棄を言い渡されたとしたなら?

 リーデルシュタインでも精鋭揃いの北方騎士団の九割を動かすことが出来たとしたなら?

 同じく優秀な騎士がそろっている南方騎士団も動かせる可能性が高いとしたなら?


(リーデルシュタインにとって最も脅威度が高いのは私、ということね)


 シャルロッテの後任を育てるためと言うのも、嘘ではないだろう。それにはパーシヴァルが適任だと言うのも、納得できる。しかしそれは建前で、本音はシャルロッテの監視をしたいのだろう。もっと言えば、コンラートとリーンハルトの監視だ。


(マリーが警戒していたくらいなのだから、当然パーシヴァルだってその可能性に気づいていたわよね)


 シャルロッテにエリザ聖戦の意思がないことは理解しているだろうが、コンラートとリーンハルトが妹を溺愛していることも分かっているからこそ、監視しておきたいのだろう。

 誰か適当な者を監視役にあてた場合、懐柔される可能性がゼロではない。しかし、パーシヴァルなら絶対にシャルロッテの側につくことはない。


 最悪王国が崩壊したとしても、王が生きていればそれで良い。

 王の付き人とは、それほどの確固たる考えを持った者にしか務まらないのだ。

 クリストフェルを雑にあしらっているように見えても、それは表面的なことでしかない。パーシヴァルは、決してクリストフェルを裏切らない。

 妄信ともいえる忠誠心は、エリザ聖戦を引き起こしリーデルシュタイン王国に甚大な被害をもたらしたルカの付き人ですら持っていた。彼は全ての者を敵にまわしても、最期までルカの側につき続けたのだ。


 パーシヴァルの提案を、断ることは出来ない。

 仕方なく了承の言葉を口にしようとしたとき、バタバタと誰かが走ってくる音が聞こえた。

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