手紙
そうこうしているうちに、僕は3年生となった。
そして、人生最大のモテ期は突然にやってきた。
その予兆的なものは、いちおうあった。
ある日、自分のロッカーを開けると可愛らしい封筒が入っていた。初めての経験に僕は動揺した。
直ぐには、その封筒を取り出す勇気が持てず、一旦ロッカーの扉を閉めた。そして、煮え切らないままに何日か経過した。
(さすがに、このままずっと放置はできないよな…)
僕は、人目がないことを確認しつつ、手紙をカバンにしまうと自宅へ持ち帰った。
そして、恐る恐る封筒を開けた。
手紙が入っていたが、それはラブレターとは少し違っていた。
手紙には、こういう趣旨が書いてあった。
【あなたに好きな人がいたら、×月×日に左手の小指にバンドエイドをしてきてください】
封筒には、キティちゃん柄の可愛らしいバンドエイドが同封されていた。
しかし、手紙を開封したとき、既に×月×日は過ぎていた。
僕には、好きと言い切れるような人はいなかったので、結果オーライではあった。
(しかし、仮に好きな人がいたとしても、中学3年の男子にキティちゃんのバンドエイドは無理だよ…)
僕は、手紙の差出人の神経を少しばかり疑った。