二股
だが、本当のモテ期はこれからである。
ある朝。
学校に登校する途中で、ブラスバンド部でアルトサックスをやっているY村さんとバッタリと会った。
その日は、Y村さんと一緒に学校へ登校した。
しかし、それは偶然ではなく、二度三度と続いた。
そうなってくると、いくら鈍い僕でも気づいた。
Y村さんの家からは、僕の通学路がかなり遠くから見通せるような位置関係になっていた。おそらく彼女は、家で待機しながら様子を見ていて、僕とちょうどバッタリ出会うようなタイミングで家を出ていたのだろう。
僕は、そのあからさまな行動から、Y村さんの好意に気付いたが、彼女から告白されるようなことは最後までなかった。
彼女は、ちょっとだけぽっちゃりしていて、性格はおとなしくて、いい人そうだった。顔は、まあ普通で、美人とは言い難かった。
彼女とは通学路が一緒なので、帰りも一緒に帰ったことがある。
ある日の帰り道、彼女の家に近づくと突然彼女は自宅に向けてダッシュして行った。
「もう。お母さんったら…」的なことを口走っていたと思う。
僕は、その時全く気付かなかったのだが、実は洗濯物が干してあって、その中に彼女の下着が含まれていたという落ちのようだった。
僕は、さほど気にはしていなかったが、当の彼女にとっては大問題なのだろう。おそらく、あの年頃の女の子の心はデリケートなのだ。
Y村さんとは、付き合っているという訳ではないが、T山さんと合わせて、この時点で、事実上の二股状態となっていた。