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異世界ベテラン幼女師匠  作者: 赤しゃり
本編

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平和な休日 ①

「うおー! 治りましたよ師匠!!」


「はいはい良かったな、壁を殴るなよ」


 件の事件から数日後のギルド、そこには元気に両手を振り回すモモ君の姿があった。

そう、両手だ。 腐りかけていた彼女の腕は聖女の魔法により、晴れて完治を迎えていた。


「それにしてもたった数日で腐敗した腕が元通りか、さすがは聖女様だ」


「んー、私はそのあたりの感覚よく分からないんですけど、やっぱりすごい事なんですね?」


「当たり前だ、魔法も魔術も何でもできるわけじゃない。 魔法遣いの腕がいいからこその完治だ、礼は欠かすなよ」


「もちろんですよ、何かお礼の品用意しないと……あ、お金が」


「金ならあるぞ、依頼の報酬がたんまりと色を付けられてな」


「それは師匠の分ですよ、私は頑張ってないんですからもらえません」


「君は妙なところで律儀だなぁ」


 貰う資格がないとは言うが、一度攫われかけたシュテル君を取り戻したのは間違いなく彼女の功績だ。

報酬を受け取る権利はあるとモモ君には何度も伝えたが、それでも受け取りを固辞している。

あくまで彼女は最低限の額を受け取り、ほとんどの金額は僕の懐へと収まってしまった。


「まあ食費を差っ引けば妥当な額かもしれないな、君はどうにも燃費が悪すぎる」


「あはは、ごめんなさぁい……」


「だがこのままじゃ君の稼ぎがないぞ、いざという時に使える金がないのは困るだろ」


「そうですよねぇ……よし、依頼探します! 私でも出来る奴!」


「肉体労働の依頼は人気が高いぞ、受けるつもりなら早く探して来い」


「私でもできる感じの知的なお仕事は……」


「そんなものはない」


「はい……体動かしてきます……」


 とぼとぼとした足取りで、モモ君が掲示板前の人だかりに消えていく。

幸いにも先日の幽霊船騒ぎのせいか、掲示板に張り出された紙の量は増えている。 妙な遠慮でもしなければ、取り逃すことはないはずだ。


「それとそこのテーブル下に隠れた変態、出てこい」


「ぴょぇ……け、気配は消していたはず……」


「邪気が駄々洩れだぞ。 しかしその恰好、非番か?」


「あっ、分かりますぅ? えへへ一週間ぶりのお休みなんですよねぇ……」


 一つ隣のテーブル下から這い出て来たギルド員の服装は、いつものギルド制服ではなくゆったりとした私服だ。

幽霊船騒ぎで徹夜の作業に勤しんでいたがゆえの慰労か、ギルドの労働環境が劣悪でないことは喜ばしいが、この変態を野に放つのはどうなんだと思わなくもない。


「まあいい、人の事をストーキングするくらいならちょっと付き合え」


「はぁい、ご用命とあらばなんでも……えっ」


「なんだ、用事があるなら別に構わないが」


「いえ、たった今予定はすべて些事と化しました。 私でよろしければ三千世界の果てまでもお供いたします」


「渡来人の言葉はたまに分からないな……了承と受け取るぞ、僕はまだ土地勘がないから助かるよ」


「師匠ぉー! やりました、丁度いい依頼ゲット……あっ、星川さんこんにちはーってわー! 私服可愛いですね!」


「いちいち騒がしいな君は……まあいい、仕事が決まったなら僕は少し出かけてくるぞ」


「うへへへ……ごめんねぇモモちゃん、お師匠様ちょっとお借りしまぁす!」


「別にいいですけど、何だか珍しい組み合わせですね? いってらっしゃーい」


 モモ君に見送られ、変態ギルド員に抱えられてギルドを去る。

持って来た依頼書を一瞥したかぎり、そこまで拘束時間がかかるものではない。 昼までに戻ればまた合流できるだろう。

……しかしこれ、はたから見ると誘拐されているようにしか見えないんじゃなかろうか。


――――――――…………

――――……

――…


「つ、着きましたぁ!」


「3回だぞ、ここに来るまで衛兵に呼び止められた回数」


「おかしいなぁまだ悪くて初犯のはずなんだけどなぁ……」


 僕はこれを冗談として聞き流すべきか、それとも未来の被害者が出る前に衛兵へ突き出すべきか。


「ま、まあまあまあそんなに怖い顔しないで! まだ何もしてませんから私は!」


「まだ」


「そ、そんなことよりもぉここで本当によかったんですか? おしゃれな洋服店とか紹介できますけども」


「いや、ここでいいんだ。 助かったよ、この街は入り組んでるしいちいち飛んで移動するのも悪目立ちする」


 ギルド員の案内によって辿り着いたのは、この街唯一にして最大の蔵書数を誇る「図書館」だ。

貴重な紙の本をこれでもかと集めた建物、しかも手続きさえ踏めばだれでも閲覧可能と来ている。 1000年前じゃ考えられない話だ。


「昔は魔術の教本すら入手にどれだけのコネと資金が必要だったか……」


「すごいですよねぇ、これもバベルのおかげらしいですよ?」


「ああ、なるほど。 識字率が昔とまるで違うのか」


 知識を記した書物を蒐集・保管する機関自体は昔から存在していた。

こうして分け隔てなく内容を公開できるのは、バベルによる強制翻訳効果が齎す影響だろう。

あの塔が与えた影響はとても大きい―――――だからこそ、そのルーツが知りたい。


「ありがとう、礼にこのあと昼食を奢るよ。 貴重な休日を拘束して悪かったね」


「いえいえむしろご褒美でしたから! ……それで、ライカちゃんは何か欲しい本でも?」


「なあに、少し調べ物を……ね」

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