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異世界ベテラン幼女師匠  作者: 赤しゃり
本編

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欲深き獅子王 ②

「……ろ、ロリコンだー!!」


「モモちゃん、声! 声大きい!」


「ごめんなさい、つい本音が!」


 つい王様の悪口を叫んでしまった口を手で押さえる。

だけど心からの本音だ、師匠は中の人はともかく見た目は幼い女の子なのになんで結婚なんて話が出るのか。


「か、確認ですけど……その王様って何歳なんですか?」


「見た目は若く見えたけどぉ……低く見積もっても20代?」


「ロリコンだー!!!」


「滅ぼすべし、これは弟子全員の総意」


「待った待った待って待って、とりあえず場所変えて話しましょ! ここじゃ私の胃が擦り切れてなくなっちゃうなぁ!」


「わかりました、では乗ってください星川さん!」


「えっ、いいのぉ!?」


 ハッチから身を乗り出して手を差し出すと、少し嬉しそうな星川さんが船の渡し賃を支払って、巨大五郎に飛び移る。

そのまま引き上げてハッチの中に引き込むと、彼女は目を輝かせて室内を探り始めた。


「あっあっあっ、なるほどぉ~! コックピットは別でちゃんと居住空間が……大きなキャンピングカーって感じだ。 そうか変形したらこのあたりのスペースが開くから内側にパーツを折りたたんで……」


「おう、なんじゃこの眼鏡の嬢ちゃんはずいぶん話せるのう」


「あ、ごめんなさいつい興奮してまくしたてちゃって」


「わかります……かっこいいですからね、変形ロボットは」


 星川さんと語りたいことはいっぱいあるけど、今は師匠の話が先だ。

全員の着席と安全を確認してから、再び宿を目指して巨大五郎は歩き始めた。


――――――――…………

――――……

――…


「到着、今日の宿! そして話を聞かせてください星川さん!」


「性急だぁ」


 目的の宿に到着し、巨大五郎を所定の場所に停めてすぐ、部屋に集まった私たちは星川さんに詰め寄った。

落ち着いて考えてもやっぱりわからない、なんでリゲルを飛び出した師匠がこの街で結婚することになるのか。


「ま、まずは落ち着いてねぇ……結婚って言うのも王様が勝手に言ってるだけで、まだプロポーズして断られたってだけだから」


「で、ですよねー……よかった、王様にビンタすることにならなくて」


「大丈夫だよモモちゃん、ビンタはライカちゃんがちゃんと叩き込んでくれたから」


「さすが師匠です。 けどなんでそんなことになったんです?」


「私もうわさで聞いただけなんだけどねぇ。 まず大前提としてこのレグルスを統べる王様は欲しがりなんです」


「欲しがり」


「一度ほしいと決めたものは何が何でも手に入れないと気が済まない、この都市も“自分の国が欲しい”という彼の欲から始まりました」


 窓の外に見える水と灯りが浮かぶ景色は、とてもファンタジーで綺麗なものだ。

リゲルやアルデバランも素敵な街だったけども、綺麗な景観だけで考えるならリゲルが間違いなく一番だ。

この都市を「国が欲しい」という欲望だけで作ったのなら、それはとてもすごいことだと思う。


「なるほどのう、それで王様はちっこい嬢ちゃんを欲したわけか」


「魔術師としてライカ様の実力は稀有なものだ、手元に置きたいと考えるのも無理はない」


「そんな……師匠は物じゃないんですよ!!」


 ロッシュさんは悪い人じゃないと言っていたけども、絶対何かの間違いだ。

たぶん騙されてる、ここの王様はたしかにすごい人だけど悪い人に違いない。


「それでせんせは……手籠めに……?」


「お米?」


「されてないされてない、王様をビンタしてから今のところ姿は隠しているんだよねぇ。 だけどレグルスからは出ていないみたい」


「なぜそれがわかるんじゃ?」


「これです、即席で作ったダウジングマシーン。 大まかにだけど近くにいる尋ね人の現在位置がわかるのでぇ」


「ほえー、すごい便利じゃないですか!」


 星川さんが首から下げていたネックレスを外し、目の前でぶらぶらと振って見せてくれる。

ネックレスに括りつけられたひし形の水晶は、ゆっくりと揺れながらもいつの間にか磁石に引っ張られるようにピンと真下を指し示した。


「これはライカちゃんがこの都市から離れていないことを表してます、おそらくどこか見つからないところに身を隠しているんでしょうね」


「師匠がまだこの街に……」

 

 だけど王様が指名手配しても見つからないのに、どうやって探せばいいんだろう? 私じゃ本気で隠れた師匠を見つけ出せる気がしない。

レグルスから離れないのは理由があるからだ。 アルニッタさんの工房が襲われた事件の手掛かりがきっとここにある。

師匠は私に「あとで会おう」と言ったんだ、きっと何か意味がある。 師匠と合流するためには……


「……よし、まずは王様に会います! 多分それが正解です!」


「び、ビンタするの!?」


「したいけどしません! 王様が師匠を探しているなら、その近くで待てば師匠に近づくはずです」


「なるほど、一理あるわい。 しかしどうやって接近するんじゃ?」


「大丈夫です、私にいい考えがあります!」


 王様は偉い人だ、ただ訪ねただけではまず門前払いされてしまうだけだ。

だけど私たちには王様の気を引くための切り札を持っている、砂漠の中で出会ったとっておきのカードだ。


「ヴァルカさんに頼まれましたからね、王様を呼んできてほしいと! だからこちらから近づくんじゃなくて、向こうから出てきてもらいましょう!」

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