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異世界ベテラン幼女師匠  作者: 赤しゃり
本編

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欲深き獅子王 ①

「な、何やらかしたんですか師匠ー!?」


「こら、声が大きい! 関係者とバレたらわしらまで捕まりかねんぞ!」


「そ、そうですね。 すみません……」


 あわてて自分の口を塞ぎ、握りしめた指名手配所を折りたたんでポケットに突っ込む。

たった5日離れただけで5000万円の賞金首、1日1000万円ずつ上がってることになる。

つまり10日も経てば1億円だ、もう私が一生かかっても稼げない額になってしまう。


「どどどどどどうしましょうアルニッタさん!? 師匠が捕まって処刑されちゃう!」


「落ち着けい! まずはとにかく街に入って情報を集めるじゃ、この書類だけでは何が起きたのかわからん!」


「モモセ様、この手配書では“生け捕りに限る”と書いてあります。 直ちに命の危険はないかと」


「そ、そそそそうですよね、大丈夫ですよね……」


 師匠に限ってそう簡単に捕まることはない、はずだ。

だけど1000年間も牢屋に閉じ込められていた師匠にとって、誰かから追われるというのは辛いと思う。

独りのままにさせたくない、少しでも早く合流したい。 こんな環境でちゃんとご飯も食べているのか、眠れているのか、気になって仕方ない。


「アルニッタさん、早くレグルスに入りましょう! 手続きお願いします!」


「おう、すぐに済ませてくるわい! ちいと待っとれ!」


――――――――…………

――――……

――…


「わぁー、水!!」


「そりゃ水上都市だからのう」


 アルニッタさんがすごい速さで手続きを終えて大きな門をくぐると、気持ちいい湿気を含んだ風を顔で浴びた。

あっちこっちに水路が伸びて、ランタンをくくりつけた小舟があっちこっちに人や荷物を運んでいる。

水路の上には白い石で作られた橋もかけられ、もう夕方なのにまだまだ賑やかな人々が行きかっていた。


「涼しい……水の匂いってこんな感じなんだ」


「なんだか……みんなこっち見てる……」


「そりゃ巨大五郎は目立つからのう」


「アルニッタ、どこか停泊できるところを探した方がいいのではないか?」


 そう、巨大五郎ごとレグルスに入ってきた私たちは周囲からとても多くの視線を集めていた。

しょうがない、だってロボットだもの。 めちゃくちゃかっこいいロボットだもの、誰だって気になる。

だけどこれだけ目立つならもしかして師匠もどこかで見ているんじゃないだろうか? そうじゃなくても巨大五郎はきっといい目印になる。


「手続きの際に門番から巨大五郎を停められる宿を聞いておいた、今夜はもう遅いし本格的な行動は明日じゃな」


「急がば……回れ……」


「うーん、そうですね。 焦っちゃダメです、明日に備えて今日は力を蓄えましょう」


「決まりじゃな、それじゃちぃと動かすぞ」


 アルニッタさんが巨大五郎を人型に変形させると、人ごみを踏まないように水路へ降りて歩き始める。

当然のように水陸両用として作られた巨大五郎はこのくらいへっちゃらだ。 周りの小舟も巻き込まれない距離からやんややんやと拍手を飛ばしてくれる。


「ぱぱー! みて、すごいゴーレム!」


「とんでもないなぁ、王様のゴーレムよりすごいんじゃないかあれ?」


「うおー! カッケー!」


「また王様が何かやってるの? えっ、別件?」


「うひょー! すっごい、変形機構積んでるのに防水処理まで!? 関節部なんてメンテ殺しなのにどうやってるのかなぁ、いやー機動戦士カソタムを思い出す出来栄えに眼福眼福……」


「……あれ、なんかどこかで聞いたことあるような」


 巨大五郎の外から聞こえてくる歓声の中に、どこか既視感のある声が混ざっていた気がする。

ハッチから顔を出して周囲の小舟を見渡してみると、アラビアンな衣装に身を包んだ眼鏡の女性と目が合った。


「…………あれ、モモちゃん?」


「あー、星川さん! お久しぶりです!」


 小舟の上できょとんとした顔をしているのは、かつてアルデバランでお世話になったギルド職員の星川さんだ。

以前着ていた職員用の制服や可愛いコスプレ衣装の印象が強くて、一瞬気が付かなかった。


「モモセ様、お知り合いですかな?」


「うひぃ、ジェントル紳士! お、お久しぶりぃ~……まさかこんなところで会うなんてねえ」


「はい、いろいろあってレグルスにやってきました! 星川さんはお仕事どうしたんです?」


「ライカちゃんロスのショックでしばらくお休み貰うことにしましたぁ……というかモモちゃんがいるということはまままままさかライカちゃんもおろおおおおおりゅ!?」


「先輩弟子、この人危険」


「うひょぉあシュテルちゃんも一緒だぁ!! ごちそうさまです!!」


「お、お粗末様でした? それと師匠は私たちも探してる最中で……」


「そ、そっかぁ……そうだよねぇ……」


 師匠がいないと知った瞬間、瑞々しかった星川さんが急にしおれてしまった。

アルデバランの時と全然変わってない、一緒にいるだけでなんだか楽しい人だ。


「そうだ、星川さんってここに来て長いんですか? 師匠について何か知ってません?」


「スリーサイズと身長・体重なら暗記してるけどぉ」


「こやつ衛兵に突き出した方がいいんじゃないかのう」


「わーわー待って待って見知らぬおじいちゃん! えーっと、スリーサイズじゃないなら王様との結婚についてとか?」


「………………はい?」


「なんかねぇ、王様がライカちゃんを娶りたいって話。 だから今手配書も貼りだして探しているんだってぇ」

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[良い点] ご結婚おめでとうございます! [一言] 言い寄るために指名手配してるのか王様…
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