1.才能は筋肉
才能鑑定式。
それは年一回、十歳になった者たちが神殿に集められ、自分に潜在する才能を鑑定する儀式だ。
対象は全国民、奴隷も王侯貴族も受けなければならない。
なんで全員参加するかって言うと、有用な才能を見つけて国がスカウトする為だ。
そして、鑑定式で鑑定することにより、創造神ブラフマーに才能を与えられるとされる。
俺、テインも今年才能鑑定式に参加する一人で、隣に住む幼馴染のエルカと一緒に神殿に訪れていた。
「どんな才能があるか楽しみだね! 私は剣士になりたいな。テインは?」
「エルカ、剣士なんて割と下級才能だぞ。どうせなら上級剣士、剣豪、剣聖、剣神とか上を目指そうぜ」
俺の父さんがやっている剣術道場に通うエルカは剣術大好きっ子なので、剣士系統の才能が欲しいようだな。
剣士系は物理職の花形だし、俺も剣術道場の息子だ。最上位の剣神とまでは言わないが剣豪くらいは欲しいところだ。
「それじゃあ、私はテインよりも上の剣士になる! テインが剣士なら私は上級剣士だ!」
「言ったなエルカ。鑑定で勝負だ! 負けた方が今日のおやつを差し出すこと!」
「望むところだぁ! テインになんて負けないもん!」
最近のエルカは幼馴染の俺に対抗意識を燃やしているようで、何かと突っ掛かってきて実に可愛い。
その上見た目まで可愛いものだから周りから嫉妬の視線を浴びてしまった。
エルカの薄紫色の髪はとても印象的で目立つし、可愛い女の子だからな。
甘んじて受け入れよう。
鑑定式の始まりを待っていると、壮年の神官がやってきて会場が静かになった。
「皆様、本日は才能鑑定式にお集まりありがとうございます。才能を鑑定することにより、自分に合った道に進むことができるでしょう。下位の才能の者も悲観しないでください。努力によって上位の才能に進化することもあるので、決して諦めてはいけません。努力が必ず報われるとは限りませんが、努力なくして才能を伸ばすことはできないのです」
努力なくして才能は伸びないか。
うちの親父は剣士から剣豪にまで才能を進化させた男だから、身近に実例がいるのでよくわかる。
才能を進化させることができるなら、努力できることも才能なんじゃないかと俺は思うんだが。
「才能はある程度遺伝するものですが、創造神ブラフマーは慈悲深い神です。親が才能を持たなくとも、子が持つこともあります。平民や奴隷の中から上位才能が出ることだってあるのです。この鑑定水晶に手を触れると現在の才能と能力が表示されます。では、順番に鑑定を始めましょう」
神官の挨拶が終わり鑑定式が始まった。
鑑定を受ける人たちは期待に満ちた表情で水晶に触れるが、才能を持つのは五人に一人くらいなので、なんの才能も出ず肩を落とす人の方が多い。
水晶に表示される鑑定結果を後ろの壁に魔道具で大きく表示されるから、才能が出ないと公開処刑みたいになる。
才能を公開することで国が上位才能を逃さないようにする為に公開しているそうだ。
「おめでとうございます! 貴方は上級剣士の才能がありますね」
「ふんっ! 当然だな」
名前 :アルストム・ダスト
種族 :人間
状態 :通常
Lv :1
HP :20/20
MP :3/3
腕力 :15
防御力:10
魔力 :4
素早さ:9
才能 :上級剣士(Cランク)
通常スキル
〖スラッシュ:Lv1〗 〖鎌鼬:Lv1〗 〖ステータス閲覧Lv1〗
領主の息子アルストムは上級剣士か、良い才能が出たな。
ステータスも下位才能の剣士よりも高いし、うちの道場でも俺とエルカの次に強いから納得だ。
でも、アルストムが上級剣士ならもっと強い俺たちは剣豪とか上級才能が出るんじゃ……。
これは俺たちも期待できそうだ!
「次の方前へ」
「はい! 楽しみー!」
エルカの順番が回ってきたようだ。
元気よく歩み出る姿に周りも笑顔になる。
剣の腕も高いが、エルカには周りを笑顔にする才能もあると思うんだよな。
エルカが期待に満ちた眼差しで水晶に触れると、神官は驚きの表情を見せた。
「なんと! お嬢さん、貴方の才能は剣鬼です! 高位才能ですよ!」
名前 :エルカ・フロイス
種族 :人間
状態 :通常
Lv :1
HP :32/32
MP :11/11
腕力 :40
防御力:22
魔力 :15
素早さ:38
才能 :剣鬼(Aランク)
通常スキル
〖スラッシュ:Lv1〗 〖鎌鼬:Lv1〗 〖衝撃波:Lv1〗
〖縮地Lv1〗 〖鬼人化Lv1〗 〖ステータス閲覧Lv1〗
特性スキル
〖剣士の矜持〗
「剣鬼だと!」
「それって剣士系統の上から何番目だ!」
マジかよエルカの奴、剣鬼は剣士系統の上から二番目だぞ!
剣鬼と剣聖が同列とされて、その上の最上位が剣神と言われているが、初めて見たぜ。
剣聖とランクは同じだが、使えるスキルと成長傾向が違うんだよな。
確かこの国の騎士団長が剣聖だったから、エルカは騎士団長に並ぶ才能ってことか……。
「えっ、剣鬼って剣士より強いの?」
「剣士よりずっと強いんだよお嬢さん」
どれだけ凄いことか分かっていないエルカに会場から笑いが起こる。
エルカは剣鬼になっても変わらないな。
幼馴染でライバルの俺も凄い才能持ってるんじゃないのか?
「次の方前へ」
「はいっ!」
俺の出番だ。見てろよエルカ。
剣鬼なんて才能を持つお前に並び立つ才能を出して見せるからな!
気合を入れて水晶に触れるとステータスが表示された。
名前 :テイン・アイソレート
種族 :人間
状態 :通常
Lv :1
HP :51/51
MP :7/7
腕力 :58
防御力:34
魔力 :8
素早さ:21
才能 :筋肉(Cランク)
通常スキル
〖筋圧縮Lv1〗 〖パンプアップLv1〗 〖ステータス閲覧Lv1〗
「こ……これは……何ですかね? 貴方の才能は筋肉です。よく分からないですが、ランクとステータスは結構高いですよ。やったじゃないですか!」
俺の才能は筋肉だった。
筋肉を武器に成り上がって行くお話です。
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