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ルコ   ~ 猪人間が台頭してきている世界に転移したら女の子になっていました……  作者: 妄子《もうす》
18.研究所

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その1

 ルコ達はまず都市抜消(ぬけし)から直線で北東へ37kmにある都市知羽(しりぱ)に向かった。目指す研究所の方は都市知羽(しりぱ)の直線で南5kmのところの森の中にあったので、抜消ぬけしを研究所に通うための拠点とした。。

 ルコ達は杏達との抗争の翌日に補給と修理を済ませ、その次の日から都市知羽(しりぱ)から研究所に通う事にした。というのは、研究所の周りは施設以外深い森に囲まれており、道も幹線道路から外れており、敵が近付いて来た場合に発見しづらい場所にあったため、あまり長居をしないようにするためだった。特に暗い時間に研究所に入るのは危険と感じたので、朝来て夕方前に帰るという事を徹底していた。

 この研究所自体は生物系の研究所だったらしいが、どういった情報が得られるかはルコ達には全く想像ができなかった。研究所は全ての施設ではないが一部は前人類が滅亡する直前まで稼働していた事が判明した。ただ、閉鎖とともにコンピューターはセキュリティロックが掛けられると共に、建物には物理的なロックが掛けられていたので、これらの解除から始めなくてはならなかった。

 研究所は低層で2階建ての管理棟と高層で12階建ての研究棟に分かれていた。2つの棟は横長な構造をしており、平行に配置されており、2つの棟を結ぶ長すぎる渡り廊下が設置されていた。中に入るには管理棟から入るしかなく、研究棟には出入口はあっても中からしか鍵を開けられないシステムになっていた。よって、管理棟のロックの解除から始めなくてはならなかった。

 建物に入るのに2日掛かり、建物内を自由に行き来できるようになるまで更に2日間掛かった。そして、情報が詰まっていると思われるメインコンピューターを稼働させるのには更に3日掛かった。この時点で、建物内にある各研究室には全く入れなかったが、危険な場合もあると考えて入る事を諦めて、メインコンピューターに蓄積されている情報の検索から始める事とした。問題だったのが、セキュリティのためか、メインコンピュータには外部からのネットワークからアクセスできない点だった。

 ただこの問題点は研究棟のドローンと長い有線ケーブルを経由してメインコンピュータの情報を吸い出すお膳立てをする事によりあっさりと解決できた。しかしながら、様々な問題が解決した後に、ルコと遙華は端末の前にちょこんと遠慮がちに座っていた。その理由は、これからどうしていいのか分からなかったからだ。研究論文の検索など遙華はもちろんの事、ルコもやった事がなかったので、何をどうすればいいのか分からなかった。

「どうしたもんじゃろうな。ここに来れば、なんでも分かると思っていたのじゃが、何を聞いていいのか分からんという間抜けな状態になるとは……」

 遙華はトホホという顔をしていた。

「ごめんなさい。私が頼りないばっかりに……」

 ルコはルコで申し訳ないという顔をしていた。そして、自分の不甲斐なさも感じていた。

「まあ、それはルコだけじゃなく、吾ら全員に言える事じゃからな。謝る事はないのじゃ。それよりはこれをどう活用するかじゃな」

 遙華はそう言うと立ち上がって、部屋をウロウロし始めた。

 ルコはルコで正面の時々点滅するLEDを眺めていた。

 ルコは歳から言うと高校生なので論文検索などはやった事がないのは当然だったかもしれないし、遙華の世界にはこんなシステムがないので遙華に経験がないのは当然だった。そんな二人が効率よく事を運べる訳がなかった。

「そうじゃ、基本に帰るのじゃ」

 遙華は何か思い付いたようにルコのところに戻ってきて隣りに座った。そして、

「まりぃ、ここはどんな情報があるのじゃ?」

とマリー・ベルに聞いた。

「生物系のあらゆる研究データが蓄積されています」

「ああ、それはさっき聞いたのじゃ。それについてどういった情報があるのじゃ?」

「生物系のあらゆる研究データが蓄積されています」

 マリー・ベルはオウム返しのように答えた。

「うわぁ、また同じ答えになったのじゃ」

 遙華はそう言って頭を抱えてしまった。

 先程もこのやり取りをしたが、言い方を変えても同じ答えが帰ってくるだけで埒が開かなかった。マリー・ベルにしてみれば、もっと具体的な質問をしてくれという事なのだろうが。

「そうか……より具体的な質問をしなくては……」

 ルコは呟くように言った。

「ルコ、何か思い付いたのじゃな?」

 遙華はホッとした顔をした。

「いえ、具体的な事を思い付いたわけじゃないんだけど……」

 ルコは言葉を濁すように言った。

「なんか、こう……。うまくいかないのじゃ」

 遙華はルコの言葉を聞いてがっかりした。

「遙華は何か気になる事ない?この世界の生き物で」

 ルコは何とか打開しようとありふれた事を遙華に聞いた。

「それはもちろん、生き物だったら猪人間の事が一番気になるのじゃ」

 遙華はルコの質問に素直に答えてくれた。

「ああ、それね。猪人間について検索して」

 ルコは遙華に言われた事を研究所のメインコンピューターに聞いた。ようやく何かが掴めそうな感じがした。

 すると、検索結果が出てきた。ただし、100万件近くのヒットがあった。

「なんかすごい数が出てきたのじゃが、これ全部猪人間に関する情報なのじゃな」

 遙華はびっくりした顔をしていた。

「ええ、ちょっと多いけどまずは第一歩ね」

 ルコはそう言った。考えてみれば、そんなに難しく考える必要はなかった。知りたい事をキーワードとして話せばいいだけだったとルコは思った。セキュリティ解除で頭が凝り固まってしまったようだ。

「猪人間の何が知りたいかよね」

 ルコは考え込むようにそう言った。

「そうじゃな、特徴じゃな」

 遙華がそう言うと、メインコンピューターが検索した。結果はあまり変わらず100万件近くのヒットから約100件減った程度だった。

 その数字を見てルコはちょっとがっかりした。

「これはどういう事じゃ?ちょっと数字が減ったのじゃが」

 遙華の方は不思議そうな顔をした。

「そうね。100万本の論文は読み切れないからもっと絞り込まないと」

「絞り込む?」

「ええ。キーワードじゃなかった……聞きたい言葉を増やしていって読める件数にしていくのよ。もっとも難しいから読んでも理解できないからマリー・ベルにまとめてもらって解説してもらうんだけど」

「そうか、それなら少ないほうがいいのじゃな」

 こうしてようやく情報収集のメドが立った。

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