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ルコ   ~ 猪人間が台頭してきている世界に転移したら女の子になっていました……  作者: 妄子《もうす》
14.故郷

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その7

 結局、出発したのはその7日後で、都市抜井(ぬい)に入ってから15日後の事だった。都市仲区(ちゅく)までの道中は約56km、ルコ達は4日掛けての移動となった。途中、2つの猪人間の村の傍を通過したが、雪のために活動範囲が狭まっていたため、交戦する事はおろか、姿を見る事さえなかった。

 都市仲区(ちゅく)に近付く度に、遙華は驚きと喜びの表情を強めていき、仲区ちゅくが遙華の住んでいた街と同じ地形にある事はほぼ確実だった。

 ただし、都市仲区(ちゅく)に入る前に驚いた事があった。それは都市が城壁に囲まれていた事だった。仲区ちゅくは所謂城塞都市であり、前人類の最後の拠点の一つだった事が後になって分かった。

 入城したルコ達は招待してくれたこの都市のリーダーとも言える寛菜かんなの直々の出迎えを受けた。とても寒い日だったが、わざわざ外で出迎えてくれたのでとても誠意のある人だという事が分かった。

 ルコ達四人は車から降りると寛菜の前に進み出た。

 寛菜を見た瞬間、ルコ達四人は不思議な違和感を感じた。

 寛菜はベリーショートの茶髪に、切れ長の目が特徴で、パンツルックスタイルで胸の膨らみを隠そうとしているが、どこから見ても女性だった。男装の麗人と言った言葉が似合う感じで、年の頃は30歳半ばだろうか、ルコに近い人種の場合の話だが。

 しかし、ルコ達の違和感はそれではなく、文脈から誠意のある男性だと思っていた。誠意があるのは間違いなさそうだが、男性ではなかったから驚いていた。ただ、異世界から来たのは全て女性だという事を思い出せば、間違えるほうがどうかしていた。

「みなさん、ようこそ、仲区ちゅくへ。心から歓迎します」

 寛菜はルコ達に歓迎の言葉を述べたが、寛菜は寛菜で意外そうな顔をしました。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ルコはそう言って、寛菜の差し出した手と握手した。他の三人はそれを不思議そうな顔で見ていた。

「どうやら、この挨拶は通じる方のようですね」

 寛菜はそう言うとニッコリと笑った。

 ルコは握手した手をマジマジと見つめた。何かがピンときた。しかし、そのピンは分からなかった。

 そんなルコが自分の手を見つめている間に、他の三人もルコに習って握手で挨拶をし終わっていた。

「四人で全員なのでしょうか?」

 寛菜は全員と握手し終わってからちょっと戸惑ってそう聞いてきた。

「はい、そうですが、何か?」

 ルコは質問の意図がわからなかった。

「それでは、道中の戦闘でお亡くなりなった方がいるのですね。お悔やみ申し上げます」

 寛菜の言葉に今度はルコ達四人が当惑した。

「あの、私達は最初から四人ですけど……」

 ルコは何だか申し訳ないような気持ちでそう言った。

「あ、これは失礼しました。まさか四人だけで、長い道中を切り抜けてこられたとは思いもよりませんでした」

 寛菜は今度は感嘆していた。

「四人は少ないのですか?」

「はい。私が知っている限りでは八人の場合が最も多く、それ以上の場合もあるみたいです」

 寛菜のこの言葉を聞いて、ルコ達はちょっとギョッとした。あの狭い車内に八人以上は喧嘩になっても仕方がないだろうと思ったからだ。

「まあ、ここで立ち話もなんですから中にご案内します」

 寛菜は寒さで死にそうな恵那に気を使ったのだろうか、そう言って建物の中にルコ達を招き入れた。

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