その3
ルコ達は建物の最上階に一時居住する事になった。室内は快適な温度になっており、さっきまで寒さに泣いていた恵那がご機嫌にはしゃぎまわっていた。
「しかし、凄いわね。住めるように維持されているなんて」
ルコは感心しながらリビングの椅子に腰掛けた。部屋は4LDKで広々と言った感じではないが車内よりはかなり広かった。
「都市機能を維持するためにドローン達が活動していますので、問題はないと推定されます」
マリー・ベルはインカムを通してルコに答えた。マリー・ベルも車とともにメンテナンス工場にいた。
ルコは窓から外を見た。都市内は除雪されており、都市機能も完全に維持されていた。それを見て、何だか物悲しくなった。これらを築いた前人類はもう滅亡してしまっていたからだ。
「この上の屋上とかいう場所には出れるのじゃろうか?」
ルコの隣で外を見ていた遙華はマリー・ベルにそう聞いていた。
「はい、外に出る事は可能です」
「なら、吾はちいと屋上に行ってくるのじゃ」
遙華はそう言うと窓から離れてコートを手に取った。
「私も付いて行っていいかな?」
心配になったルコは慌てて遙華に声を掛けた。
「構わんのじゃ」
遙華はルコの方に振り返ってそう言った。
ルコはてっきり断られると思っていたので、変に慌てていた。
「妾もご一緒してよろしいでしょうか?」
瑠璃も遙華にそうお願いした。
「もちろん、いいのじゃ」
遙華は今度もあっさりと受け入れた。
そして、屋上へ行くと決めた三人の視線が恵那に向いた。
恵那は首を大きく振り、座っていた椅子の陰に隠れるように小さくなった。
三人はそれを見て肩をすくめるだけで、何も言わなかった。そして、コートを手に部屋を出ていった。




