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ルコ   ~ 猪人間が台頭してきている世界に転移したら女の子になっていました……  作者: 妄子《もうす》
11.撃滅

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その5

 廃都市での夜は静かに過ぎ去り、ルコ達四人はゆっくりと休息を取る事ができた。疲れていたので四人とも昼過ぎまで起きてこなかった。

 車は猪人間の村の方角とは反対側の外れの方に停車していた。偽装はしていたが、遠目には誤魔化せても近くに来るとすぐにバレるようなものだった。

「都市内に猪人間30体の侵入を確認。直ちに予定された退避行動に移ります」

 マリー・ベルの急報に寝ていた四人は次々にベットから飛び起きてきた。

 四人がベットから出てくる前に車は移動を開始していた。車は東へと向かい、山の方へと入っていった。とは言え、山を登ろうとしている訳ではなかった。山を登るにはこの車は適していなかったからだ。廃都市の奥には更に前に放棄された旧集落があり、そこへと向かっていた。

「今回の敵は本当に厄介じゃな」

 遙華は作業区画で他の三人と一緒に装備を整えながら忌々しそうに言った。

「間もなく敵を探知できる範囲を超えますが、予定通り進みますか?」

 マリー・ベルがそう確認してきた。

 猪人間達は都市内を捜索しているみたいで、こちらには真っ直ぐ向かっては来なかった。

「予定通りにして」

 ルコはそう言うと、装備が整い終わったので、車両前部へと向かった。

 その後を他の三人が次々と続いていった。

 ルコ達四人が前部区画に入った時は周辺地図に猪人間を示す赤丸が消え去り、探知外となっていた。

 ルコ達四人はいつもの座席に座った。

 車は1つ目の集落を掠めるように通過し、蛇行する川を2回渡り、ちょうど2つの集落の隅を通過する道に入ったところだった。

「またちょっと敵が増えたね」

 恵那は呟くようにそう言った。都市湯澤(ゆざわ)では5匹を葬り去っていたので、3匹増えている事になっていた。

「まだ増えるのかな?」

 恵那は素朴な疑問を口にしただけだったが、それは不吉な未来を暗示していた。

「増えるじゃろうな」

 遙華はぶっきらぼうにそう言った。それは確実で防ぎようがない事であり、苛つく他ないからだった。

「どのくらい?」

 恵那は不安そうな顔をして遙華に聞いてきた。

 しかし、その質問に遙華は顔を背けて答えなかった。あまり、楽しい未来予想ではなかったからだ。

「恐らく倍くらいにはなると思うわ」

 ルコは画面に映っている景色を見ながら他人事のように言った。

「そんな身も蓋もない……」

 あっさりと言ってのけたルコに恵那は抗議するように言いかけたが、恵那も思っていた事なので途中で言うのを止めた。

 そして、重い沈黙がその場を包み込むような雰囲気になった。

「ああ、ごめんなさい」

 ルコは場の雰囲気が重くなったのに気付いて、びっくりして謝罪した。そして、

「ちょっと周りの風景が気になって、上の空で答えてしまって」

と言ったが、言葉の最後の方は再び上の空のような感じだった。

「ルコ、主、上の空って……」

 遙華は苦笑してそう言った。

 場の雰囲気はルコが遙華の言葉に反応しなかったので更に重くなっていた。

 車は2つ目の集落を早々に通過すると、ルコ達の進む道は蛇行する川を避けるように、川から離れていき、3つ目の集落へと入っていった。

「あ、やっぱり、あれ!」

 ルコは突然大声を上げて、

「マリー・ベル、止まって!」

と言って急に立ち上がった。

 車は急停止し、ルコは強制的に座席に着かされた。

「急にどうしたのですか?ルコ様」

 瑠璃は当惑した表情をしていた。

 止まった所は、住居と思われる残骸があるだけで目立ったものがあるとは思えなかった。

「ほら、あれ!」

 ルコは再び立ち上がって、進行方向左側に向かって指差した。

「あれは旧炭鉱の跡です」

 マリー・ベルはルコが指差したごっつい櫓の説明をした。

「石炭を使って火攻めはできないかしら」

 ルコは意外とあっさりした口調でもの凄い提案をした。

「せきたん?」

 知らない言葉に遙華がいち早く反応した。

 ルコは遙華にどう説明していいか分からず、腕組みをして思案した。

「石炭とは、燃える石の事です。ご存知ありませんか?」

 マリー・ベルはそう助け舟を出した。

「おお、それなら吾も知っているのじゃ」

「あたしも知っているわ」

「妾もですわ」

 三人はどうやら石炭の存在を知っているようだった。

「あれ、燃やすと臭いやつじゃろ?」

 遙華は嫌そうな顔をした。

「ええ、なんか、こう、臭いが付いてしまうような感じがしますわ」

 瑠璃も深いそうな顔をした。

「え?そうかな?確かに燃え始めはそうかも知れないけど、よく燃えるわよ、あの石」

 恵那の方は二人の反応にちょっと不思議そうな顔をしていた。

 ただルコは実際に見た事も燃やした事がないのでどんなものかが分からなかった。

「確かに石炭にも色々ありますから、取れる場所やその品質にも依存性が高いと推察されます」

 マリー・ベルはそれぞれの反応にそう答えた。

「炭鉱に入って石炭を持ってこれないかな?」

 ルコはニヤリとしながらそう聞いた。顔は悪人面になっていた。

「火攻めってそういう事なのじゃな」

 遙華はちょっと希望が持てたような顔になっていた。

「この炭鉱に入るより、北約1kmに露天掘りをしていた場所があります。そちらの方がたやすく手に入ると推察されます」

 マリー・ベルはそう答えた。

「よし!すぐに出発よ!」

 ルコが張り切ってそう言うと、車は露天坑に向かって走り出した。

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