俺だけにエリクサーをくれる天使
※これは短編の「あの子のふとももはエリクサー」の続編です。
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※話の中で妊娠と言った内容がありますので苦手な方はご注意下さい。
俺は高校二年の一般男子・新藤晴一。
魔王討伐の為に召喚され、聖霊の力を持ったエリスと共に魔王を倒した。
そしてその功績を認められ、
エリスと言う太もももとい彼女(?)を手に入れた。
「でなー、
ちょっとお願い事で調べて欲しい事があるんよーワシ」
で、そんな実績のある俺の元へ頼み事が舞い込んだ。
贅沢放題を体現した国王はボヨンボヨンと腹をさすり、俺の返答を待つ。
小刻みに腹が揺れる度に国王が座る椅子がミシミシ悲鳴を上げてる。
その椅子、エリスのお気に入りだから壊さないで欲しいんすケド。
「……正直、嫌なんだが」
「そんな言わないでってばー。
他の勇者も今出払っててさー、君しかおらんのよぉ」
「そうは言ってもエリスが最近調子悪ぃんだ。
こないだ港町で食ったもんがあたったのかずっと体調が良くないみたいでよ」
「まじでー。ワシめっちゃ困りんぐー」
先週、エリスと一緒に遠出した際に港町で有名な海鮮料理を食ってきた。
そして王都に戻ると否や体調不良を訴え、先程病院へ行ったのだ。
微熱と言っても明らかに無理してる様子だったので検査して貰う事に。
魚介って点で何かに当たった可能性もあるし……。
流石に4日も続くっておかしいからな。
―――で、
検査が終わるまで待ってるつもりが国王に呼ばれ自室に戻る事となり、
今に至る。
「はぁーい。お邪魔するわー」
ノックと共に布面積がめっちゃキワドイ服装の少女がドアの前に立つ。
どこのギャルゲもといエロゲだよその格好……。
彼女はピンクの髪を掻き上げるとエロスを主張しながら部屋に入ってくる。
待って。
俺、入ってドウゾなんて言ってないんすが。
「おおエリエットじゃないか。どうしたんじゃ」
「……何の用すか?」
「はぁ~い国王様、ご機嫌麗しゅう。
ちょっとぉ。つれないじゃない勇者様ったら。わたしは付き添いよ付き添い」
訝しげな態度を示すとちょいちょいっと入口を指される。
「ただいまですハルヒトさん……」
遅れてエリスが弱々しい声と共に部屋へ入る。
随分真っ赤だが……熱が悪化したのか。
そうか、彼女は体調が悪くなったエリスに付き添ってくれたって訳ね。
「そう言う事か……悪いなエリエット。
検査どうだった?
気のせいか熱が上がってるみたいだけど……横になるか?」
俺の言葉にエリスはスカートを押さえながらふるふると首を横に振る。
またこの子はすぐに無茶をして。
俺の聖女様は大人しい見た目に反して時々頑固だからなぁ。
―――しゃーない。
「……よっと」
「わ、わぁあ!? は、はりゅひとさんっ!?
お、おろ、おろして下さい!!」
言う事を聞かないウチのお姫様を抱えると腕の中でばたばたと暴れられる。
しっかし軽いな。
長い髪のせいかもう少し肉が付いてる風に見えてたが……
予想以上に華奢だ。
まぁ背もちっこいし、細いから重さはこんなもんなのか?
「ひゅ~♪ さっすが勇者様見っせつけるぅ~」
「やっかましいわエロエット。そんなんじゃねーから」
俺は冷やかしを余所にベッドへ進み、エリスを横にさせるとうずくまられる。
……流石に人前で抱きかかえたのは恥ずかしかったか。
「エリスも式で抱えられる事になるんだから早い内に慣れた方が良いわよ?」
「わーわーわーわーわー!」
うん?
何の話だい?
「ほーらエリス、ちゃんとあなたの口から言わないと~。ね?」
からかい口調で笑いながらピンクの彼女はエリスにそう促す。
何事かとエリスに視線を向ければ真っ赤な顔を枕で必死に隠してる。
こりゃ体調不良による赤面では無く、恥ずかしさからだな。
一体どうしたんだ。
「あ、あのですねハルヒトさん……驚かずに、聞いて下さいね?」
「……うん、わかった。どうした?」
「じ、実はですね」
「うん」
「赤ちゃん……出来ちゃいました」
「おお、まじか。
……
……………
…………………え?」
「良かったわねぇ~。お2人とも、おめでとさん♪」
ピンクさんは屈託のない笑顔と祝福の言葉を向けてくる。
赤ちゃん? おめでとさん?
いやいやいやいや。
おかしいおかしいおかしいおかしい。
ちょっとまってストップ。
ボク、ナニもしてないんですけどナニだけに。
触ってたのは太もも位ですよ!
そりゃあこないだ悪戯でちょっと舐めたけど……じゃなくて。
つーかそれ以前にエリスは―――
「男でも妊娠するなんて、願いが叶って良かったわねエリス♪」
○ ○ ● ● ○ ● ● ○ ○
「だーかーらー俺はなんっもしてないっつーの!
検査ミスじゃねーの!? 第一、その……エリスは男だろっ!」
「あら~往生際の悪い男はどうかと思うわぁ~。ねーエリスぅ?」
予想外の検査結果に俺は声を上げる。
書類にはエリスの性別は男とちゃんと書いてあるのに検査結果は妊娠の文字。
訳がわからん。
もしかしてあれか?
異世界じゃ男も妊娠すんの?
「そうは言ってもやる事やってたんでしょぉ~。
エリスに聞いたら色々されたって言ってたしぃ好い加減認めなさい?」
「いやいやいや?
てかエリスさんアナタ何を言ったんですか!?
俺何やったっけ!? ま、まさか記憶が無い間に……」
普段俺はエリスの膝枕で寝る事が多い。
で、こないだからかいと言うかじゃれ合いで触りまくりはした。
あとはこの前、調子に乗って舐めたり、頬ずりしまくったり―――
ってそれ位だよ!
それ以上なんて恥ずかしくて無理だよ!?
「えっと……2人きりになるとその……
激しく求められて、抵抗出来なくて成すがまま好きなだけ色々されたり……。
あと……この間は恥ずかしいって言ったのにその、直接舐められました。
ほ、他にはヤダって言うのに良い匂いとか言って……
直接匂いをかがれたりとか―――」
「どう聞いてもヤってんじゃない」
「ちょっとエリスさん、エリスさん!?
それ間違ってないけど色々誤解生むから、語弊があっから!
つーか主語、主語プリーズ! あとそれ全部太ももにやった事だから!」
ジロリと詰問の目を向けるエリエットへ弁明をする。
つーか俺、こんな必死に何言ってんの?
ここは公開処刑会場ですか?
「やだこの勇者、ホモなの?」
「そうみたいですねぇ国王様。
てっきりエリスだから好きなのかなと思ってましたがこの陰湿なテク、
どう聞いても手馴れてますよねぇ~。
はっ! だから聖女選びの時に私達を選ばずに即答でエリスを……」
「いやぁ~んワシ怖い、勇者に襲われちゃうー!」
「おいアホな事言ってっとぶっ飛ばすぞこのピザ国王」
2人のアホな会話に自分はうな垂れる。
まぁ、どう言っても現状エリスは妊娠してる訳だ。
……そうなればこれからの事を考えなきゃいけないって話で。
「ハルヒトさん?」
気付くと俺は無意識にエリスの水色の長い髪に指を通し、撫でていた。
「……ん」
すると横になっているエリスはそのまま猫みたいに俺の手へ甘えてくる。
赤ちゃんかぁ。
まじかぁ。
しかしまさか高二で子持ちになろうとは……
って今勇者だから学生ではないか。うん。
つかこの場合、生活を考えてかなきゃだし勇者で大丈夫なのか?
今は魔王倒した実績で生活保障されてるけど、それは俺一人の話だし。
となれば何か仕事を考えないとだな。
一応レベルは600越えたし討伐クエで稼ぎは出来るが……安定は無いよな。
そうなると勇者と言う点を活かし、仕事を斡旋して貰うのがベストなのか?
しかしそれだと国王に無理難題ふっかけられそうな―――。
「そう言えばエリスは何ヶ月目なんじゃー?」
考えに更けていると国王がそんな疑問を口にする。
そう言えばその辺りきちんと聞いてなかったな……。
「え、えーっとまだ1ヶ月らしいです」
「そうかそうか。じゃあこれから大変じゃのー」
国王は自前の腹をたぷたぷと撫でながらそう返す。
王族とか貴族ってのはほんと絵に画いた太り方するよなぁ。
「そう言うアンタは出産前みてーな腹だよな」
「んふー残念。ワシはまだ7ヶ月じゃよぉー」
「はいはいそうですねおめでたさーん。相手は誰っすかー?」
国王はでっぷりとしたビールっ腹を両手で揺らしながら訳判らん事を言い出す。
皮肉のつもりが上手く躱されたわ、クソ。
「相手は魔王じゃよー」
「はいはい魔王ね魔王……は?」
「あれ、ワシさっき話したジャン。
最近、西の魔王のせいで男達が原因不明の妊娠してるって。
ワシさっきどうにかしてって頼んだじゃろ?」
おい、聞いてねーからそんな話。
○ ○ ● ● ○ ● ● ○ ○
俺らは国王の依頼を受け、即座に西の土地へ向かった。
一件の発端は約1ヶ月前らしく男のみにその症状が発症する。
そして西の土地の港町を中心に問題が発生してる事が判明し、
港町名産の海鮮料理を食べた者がその症状に見舞われている事がわかった。
そして西の土地に居る魔王の能力は「造りかえる」と言う物らしく、
それで考えると一件の事に辻褄が合う。
しかし魔王は何だってこんな事を……。
いや、そんな事はどうでも良い。
目的なぞこの際知る必要は一切無い。
隠れてコソコソこんな事をする魔王を見つけ出し、潰す。
それだけだ。
「あーんもう疲れてきたんだけどぉ? 本当にこれで見つかる訳ぇ?」
「喋る暇があるなら口より手を動かせ!
金じゃ時間は手に入らねぇんだよ一分一秒を大金と思いやがれ!」
「やーんこわぁ~い」
俺達は今、食材倉庫で黙々と検査を行っていた。
ここのどこかに魔王が小細工した食材がある。
それを見つける為に……。
「勇者様ってこんなに熱心な男だったっけぇ~?
お城の印象だと凄くめんどくさがりってイメージだったんだけどぉ」
「そんな事無いですよエリエットさん。
ハルヒトさんは決断するまでに時間かかっちゃったりしますけど、
行動力は凄いんです」
今回の旅はエリエットも同伴した。
と言うのも体調が万全じゃないエリスを俺一人では守り切れないからだ。
魔法で痛みなどを止めていると言っても万が一がある。
だから出来れば城に残って欲しかったんだが拒否された。
……エリスも頑固だからなぁ。
「あ……これ」
検査をする中、エリエットが声を上げる。
顔を向けてば彼女が手に持った緑色の食材がみるみる崩れ去った。
「聖霊あてたら香辛料のサーワビが崩れ落ちたわ……。
これよ! これに魔王の魔力が籠ってる!」
「……よっしゃあ! ビンゴ!」
食材に原因があるとはわかっていたが割り出しに難航していた。
そこで俺は魔王の力に唯一対抗出来る聖霊の力を怪しい食材に当て、
割り出しが出来ないかと考えたのだ。
そしてその方法は上手く行き、見事割り出しに成功した。
「サーワビと言ったら南の土地で有名な特産品ね~。
収穫から出荷までを川を利用してるし、これが採れるのは川の上流」
「ってぇ事は……」
「サーワビが採れる川の源泉近くに魔王が隠れてる可能性が高いわねぇ」
○ ○ ● ● ○ ● ● ○ ○
エリエットの言葉で俺達ははサーワビ畑のある川の上流を目指した。
いくらか半信半疑であったが……それはすぐに結果として現れた。
魔王の居城近くでしか湧かない筈のインプ達が行く手を阻み、
彼女の予測が当たっていた事を証明する。
「おっるぁあああ邪魔だ邪魔だ邪魔だどけやザコ共がぁああああああ!!」
「ちょっと、エリス。勇者様随分キャラ変わっちゃってるけど大丈夫なのぉ?」
「あはは……感情的になるとああなってしまうと言いますか。
多分、大丈夫です」
「なら良いけどぉ。
しっかしあんた随分愛されてるわね~。
男好きの変な勇者って思ってたけど……ここまで来ると羨ましいわぁ」
「え、え~っと喜んで良いのか何と言えば良いのか……えへへ」
2人は飛行魔法を使って俺の後を飛んで付いてくる。
魔法による移動の為、エリスの負担はほぼ無い。
が、僅かでもエリスに負担があるのは変わり無い。
早く魔王の野郎をぶっ倒さねば。
「勇者様ぁ~魔王の魔力反応よー気を付けてぇー!」
エリエットの警告と同時に周囲の空気が一気に変わり、俺は剣を構える。
その瞬間、暴風を纏った一閃が俺を襲う。
「プロテクトウォール!!」
「くっ!?」
それは辺りの土を抉り、クレーターを作り上げる。
咄嗟に後方を確認するとエリエットが防御魔法を展開している。
良かった。
2人とも無事だ。
……しかしさっきより動き辛くなったな。
デケぇ穴が開いたせいで水が余計湧き出して足場が最悪な事に。
「んふっ☆ 誰かと思ったらこの魔力は勇者と聖霊の女じゃなぁ~いん☆」
頭上よりふざけた声が響き渡る。
盾にした剣を降ろせば筋肉ムキムキの色白マッチョが空より姿を現わす。
水面に足を付ける水鳥の様に降り立つと変なポージングしながら近寄ってくる。
「おいてめぇが魔王か」
「いえーすあいドゥッ☆
まさ~かこんな早く気付かれるなんて思っていなかったわ~ん♪
もしかしてぇ~アナタ、東の魔王を倒した勇者ぁん?」
「しらねぇよ。
それよりこの一件てめぇの仕業だろ。元に戻しやがれ!」
「んっん~?
やぁ~よ。これは人間達の勢力をジワジワ奪う為の策☆
男がだぁ~すきなワテクシによるイケナイ魔法☆
そぉして~男のハ・ジ・メ・テをワテクシが奪っちゃう為の素敵なワ・ナ♪
わっかるぅ?」
魔王がそう言った瞬間、俺の中のストッパーが音を立ててブチ壊れる。
この……
「このクソ野郎がぁああああああああああああっ」
「まぁったくせっかちさんね☆
そーんなアナタはワテクシが直接、オンナノコにしたげる~ん♪」
「抜・剣・解・闢!
アマノ……ハバ斬りィイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
「えっ!? ちょ!?
アナタ何でワテクシの改竄魔法が効かな――――――」
愛剣の力を全解放し、狼狽えるマッチョ野郎へ向けて思い切り剣を振る。
剣は眩いほどの光を放ち、下級のインプ達は光の前に全て消滅する。
……しかし聖霊の力でしか倒せない魔王に対しては決定打とならない。
「熱っ! 熱いからそれねっ!
力が効かないってアナタなんなの一体!?
てか男のハジメテ奪ったくらいで何でそこまでおこなの!?」
一撃を受けて水溜りの中をバチャバチャとマッチョ魔王は転げ回る。
男の?
ハジメテを?
奪ったくらいだぁ?
「おいクソ魔王。よぉーく聞けよ。
魔王のせいでヤローが妊娠してる。
単語だけ聞きゃ大爆笑な内容だ。
だがな実際は自分の好きな相手や大事な奴、
身内が苦しめられているっつー許し難い話なんだよ!」
そして俺は剣を振り被ると渾身を込めて魔王の脳天へ打ち下ろす。
「あいだい!? ちょ、フツー喋りながら攻撃してくるぅ!?」
「うっせぇわボケ! こちとらな、こちとらなぁ……
本来なら段階を踏まえて成される結果を奪われてアッタマきてんだよ!!」
「……う~ん?
さぁ~っきからワテクシ気になってたんだけど~、
そこの水色のかわいらしー子はもしかしてぇ……オ・ト・コ?」
「そうだよ!! テメェのせいでその……出来ちゃってんだよクソがぁ!!」
水溜りの中で座り込んだまま魔王の奴は俺とエリスを見やり暫く唸る。
「ああ。アナタってばワテクシと同じくゲイなのね♪
ゲイな勇者様、略してゲイ者様かしらん?」
「一緒にすんなボケ!」
「あいだい!? だからぁ急に殴るのは理不尽よぉん!」
「……勇者様って印象と違ってすごくバイオレンスねぇ~」
「あ、あはは……」
「でもさぁちょっとマッテぇん?
ワテクシに奪われたって怒ってるけど、アナタたちなぁんにもシてないの?」
その一言に俺はピタリと動きが止まってしまう。
「記憶が確かならぁ~ん、アナタとその子知り合って5ヶ月近くだよねぇ?
ながーく2人旅とか一緒にいてぇ、アナタ手も出してないのかしらぁ~ん。
流石にそれぇ~は奥手過ぎと言うかぁ……ヘタレ?」
「う、うるせ! 何でお前が俺達が知り合ってからの期間知ってんだよ!?」
「そりゃぁ~敵情を知るのも大切な事ですしぃ~。
で、で、で?
勇者ちゃんはまーだ何もしてないトコにワテクシに奪われておこって―――」
「ああそうだよチューすらまだだよ恥ずかしくて手を握るのが精いっぱいだよ
文句あっかクソがぁあああ!
膝枕だってな、回復って名目で恥ずかしいの隠してんだよ!
舐めたのすらじゃれてるノリだったから出来たけど、めちゃ勇気いったんだぞ!
うんな進展が無い中でエリスが妊娠とかよ!?
それが魔王の仕業とか許せるか、許容出来るか、我慢出来るか?
うんなん許せるわけねぇだろが!!」
「あ、あのハルヒトさん……そ、その落ち着いて……」
「人が大事に大事にしてるエリスを汚されたんだぞ、穢されたんだぞ!!
俺のエリスの初めてがかっさらわれたんだぞ!?
これはよもや寝取られ、N・T・Rっ!!
そんな事実を前に落ち着け? 冷静になれ?
出来るか訳ないだろコンチキショウがっ!!
弁護士来いや裁判所来いや末代まで毟り取ってやるぁああああああああ!!」
溜まりに溜まった全ての感情を俺は全て吐き出す。
感情的になりすぎて気付けば過呼吸の中で息をしていた。
「……アナタ、その子の事をそんなにラァ~ブだったのねぇ」
ふと我に返ればエリスが俺の右手を両手で強く握って真っ赤になっていた。
そして脇に立っているエリエットまですげー赤面して、顔を逸らしている。
マッチョ魔王に至っては跪いたまま顔を両手で覆ってフルフルと身震いしてる。
……うん?
俺、何を口走った。
「それに比べてワテクシなんて男なら誰でもイイだなんて考えで……っ!
けど今のアナタを見て気が付いたわぁん! ワテクシが間違ってたっ!
その他大勢の男タチからハジメテを奪った所でそれはただの自己満足っ!
……サーワビにかけた魔法と男タチにかかった魔法、全て解くわぁ~ん」
感涙に顔を濡らしながら魔王を腕を広げ、何かを呟く。
それはまるで神に許しを請う敬虔な信徒の姿を思わせる。
異様な光景の中、エリスが小さく声を漏らす。
エリスはお腹を押さえ、確認する様に何度かさすり、
「お腹と体にあった違和感が全部消えました……」
「ほ、本当か?」
駆け寄ってエリスに触れると熱を持ってた体はいつもの体温に。
良かった……元に戻ったのか。
「ハ、ハルヒトさん……その、ちょっと今は」
喜びにいつもより身を寄せていると赤らんだ顔で拒否される。
あ、あれ……?
その仕草で俺は変に意識してエリスを見つめてしまう。
すると濡れた服がエリスの華奢なラインをやらしく強調している事に気付く。
ああそっか。
魔王の一撃で川が吹き飛んだ影響で水浸しになってしまったのか。
とりあえず……
スカートが張り付いて足が特にすんげーエロイよエリスさん。
「見過ぎよ」
「あいて!」
そんな楽しい観察もエリエットによる注意で終了となる。
「んふっ~☆ 良いわん良いわぁ~ん。
問題無く解除出来たみたいねぇ~ん☆」
「どうして魔法を解除したんだ……。
お前は人間を苦しめる為にやってたんだろ?」
「これはワテクシの八つ当たりみたいなものだったしねぇ……」
「どう言う事だ」
「実はぁ人間に化けて港町に行った時に出来たカレシが浮気してねぇん?
それがいつの間にか色々とエスカレートしちゃっただけなのぉん。
でもアナタを見てわかったわぁん☆
ワテクシがぁ浮気されたのはぁ~……
相手を満たすだけの愛が足りなかったのよんっ!」
魔王はそう告白を語り出す。
おいおい。
めっさとばっちりなんですが。
つーか人間に化けて街にくんなよお前仮にも魔王だろ?
……しかし問題を解決してしまった手前、どうしたら良いか迷う。
魔王だから倒さなきゃいかんのだが、倒し辛くなった。
こいつ、ホモな迷惑かけた以外に倒す理由が見付からんのだ。
前のアホ魔王みたいにエリスの太もも舐めてくれればサックリ終わるが……
けど俺のエリスをまた穢されるのは我慢ならんし、困った。
「あ、あれハルヒトさん……」
そんな事に迷う俺に声がかかる。
何事かとエリスが指を向ける魔王を見やれば―――
「お前、体透けてね?」
「あらぁ~ん? ちょ、これって聖霊の力!?」
ムキムキ魔王様は水溜りの中でバチャバチャ慌てて回る。
すると余計に体が透け、白く発光し始める。
エリエットが何かしているのか?
いやしかし契約していない聖女の力は引き出せないと聞いてる。
となるとエリスの力……?
そして水浸しのエリスを眺めているとスカート越しに雫が伝う足へ目が行く。
「あ、太ももの雫に聖霊の力が籠って水溜りの中に伝わったのか?」
何と言う間接攻撃か。
「ああ、あぁ~あんっ!
まさかこんなよくわからない消え方するなんて……っ!
で、でもぉ~男の娘の太もも水でイっちゃうなら本望……か……もっ♪」
そして筋肉魔王は色白の顔を恍惚に染めながら消滅した。
○ ○ ● ● ○ ● ● ○ ○
「いやーお陰で助かったのじゃー。
これ以上お腹が張ったらどうしようかと不安だったんじゃよーワシ」
「安心しろ。
アンタのピザレベルはそんな簡単に変わんねーよ」
「まじでー?」
俺の言葉に国王は腹をペチペチと叩いて上機嫌。
一件が無事に終わり、国王を始め男達の体は元に戻った。
が、
俺は何ともスッキリとせず、自室でゆっくりするも気分が晴れない。
「あーら折角ホモ魔王倒したって言うのに元気ないわねぇゲイ者様」
「おいコラ誰がゲイ者様だ。
俺は可愛い女の子にしか興味ねぇし、エリスだから好きなんだよ!」
「はいは~いどうもご馳走様ぁ。
そこまで言うならお姫様の前でムッスリはやめなさいな~?」
そう返されてエリエットの視線を辿れば隣に座るエリスに顔が行く。
「あ……ごめん」
「い、いえ」
うん。
一件以降、俺とエリスは微妙な距離感が出来てしまった。
口では表現し辛いのだが、前みたいに甘えるのも考えてしまう様になった。
何とも言い難いわだかまりが自分の中で消えてくれないのだ。
うーむ。
「今回の一件、大変でしたね」
「……そうだな。エリスも色々嫌な思いしたよな」
「いえ、ハルヒトさんも、大変でしたよね」
そう言ってエリスは自分の軽くお腹をさする。
「でも少しだけ、あんな魔法を受けて良かったな……とか思いました」
その言葉で俺が困惑するのを理解しつつ、苦笑交じりにエリスは続ける。
「ハルヒトさんの前でこんな事を言ったらいけないんでしょうけど、
僅かな時間だけど、間違ってるけど、自分が本当の女になれた気がして……」
そう笑いかけるエリスの表情は幾許かの儚さを抱く。
この子の見た目と心がいくら少女と言っても体は男なのだ。
故にこの一件はエリスに取って、俺とは違った複雑な物を残したのだろう。
「ほーら勇者様ぁ?
そこは『俺がお前を女にしてやるゼ☆』くらいの事言いなさいよぉ~?」
「おま、エリエットお前なっ!?」
「いやーん勇者ったらエローい。ワシこわーい」
「黙れピザ国王ぶっ飛ばすぞっ!」
エリエットと国王に冷やかされて俺は感情的に声を上げる。
そんなやり取りを前にエリスはクスクスと笑い、それは天使の様で。
「じゃあハルヒトさんが女の子にしてくれるの、ずっと待ってますから」
エリスは無垢な笑みと共に小悪魔な言葉を俺へ向ける。
……俺だけに癒しをくれる天使なこの子は悲しいが男の娘。
性別なんて無くなりゃ良いのによ、ほんと。
気付けばそんな言葉が解けたわだかまりの中で浮かんでいた。
男の娘×妊娠と言うパワーワードを考えてたら続きが(小声