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アマザクラ  作者: 兎藤うと
一章 始期編
36/43

4-8 『廊下でヤバいヤツ』

アクセスありがとうございます。



 逃亡を図った玲奈は窮地に立たされている。

 佑真からは上手く逃げられた。気休めだとしても今はそれでいい。

 しかし、玲奈は新たな危険が向こうからやってきた。

 夕暮れが差しかかった廊下。玲奈と対面するように危険が立っていた。

 麦わら帽子をかぶり、虫篭をぶら下げ、虫網を持って棒立ちしている男子生徒がいた。

 ふざけた格好をしている紫のメッシュが入った黒髪が特徴的あり、佑真と並ぶ危険な人物、セットだとさらに危険極まりない男子生徒、鷹山透であった。

 接触した瞬間、玲奈は面食らった。

 のほほんとした表情で目を合った途端、


「ん? 待ってました!」


 脱兎の如く虫網を構えて突っ走る。

 瞬間、玲奈は嫌な反射的に踵を返し、元来た方向へ走った。


「待てェェェェェェェェ! 玉取ったらああああァァァァァァァァッ!

「く、来るなああああぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァッ!」

「アハハッ! 待てぇ~僕からは逃げられないぞぅ~!」


 満面の笑みで玲奈を追う透。小細工なしの真っ向勝負で捕獲だ。

 逃亡する玲奈を見る透は、読みどおり佑真は上手くやったことを察して上機嫌である。そのおかげで透の足取りはわたあめのように軽く、あっという間に玲奈に追いつく。


「エヘヘ……丸J、僕からは逃げられないぞぅ」


 謎の気持ち悪さを出しながら透は網を構える。


「コノヤロ!」


 透が振りかぶった瞬間を見逃さずに玲奈は屈んだ。


「わぁー! ダイナミック顔面プレスッ!」


 勢いを殺しきれなかった透は屈んだ玲奈を飛び越えて、意味不明な叫び声とともに顔面から床に落下した。当然、顔面を強打した。床に接触している顔面がブレーキの役割を果たし、勢いを殺して反動で海老ぞりになりながらも停止する。

 そして、透は動かなくなってしまった。

 偶然にも上手くいってしまった作戦により撃沈した透。そのあっけなさは滑稽なほどで思わず玲奈は鼻で笑い、


「うわっ、ダセ」


 と言ってしまった。

 これがダメだった。


「ンだとこのアマァッ!」


 ガバッ、とスタントマンの如く俊敏に起き上がった透は再び玲奈をつけ狙う。


「ヒッ、来るなああああァァァァァァァァァァァァッ!」


 玲奈は次に透と遭遇した方向に逃げた。


「ヘッヘッヘッ、次は逃げられねぇぞぅ!」


 少し感情的になっている透は懐から膨らませた水風船を取り出して、


「喰らえっ! 佑真特製水風船ローション爆弾ン!」


 叫んで全力投球する。

 が、狙いは外れ、玲奈の足元に着弾する。

 悪い状況は続くもので、水風船は割れずにバウンドしてどこかにいってしまう。

 けど透は進撃する。火事場の馬鹿力ともいえるような全力疾走で距離を一気に詰めた。


「来んなよ、このエセ陽キャッ!」

「誰がエロガキヘタレチキンじゃぁッ!」

「んなこと言ってねぇだろ!」

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! とったらぁ!」


 間合いに入った透は虫網を振りかぶり、


「つーかーまーえーたぁぁぁぁぁぁッ!」


 全力で虫網を下げる。

 勝敗は決したと思った。

 しかし、そこで透は足を滑らせた。


「あっ」


 透は玲奈しか見ておらず、足元にあった物に気づかなかった。

 水風船を。それが、割れずに廊下に落ちていたということに。

 見事に踏んずけて滑らせ、体制を崩し、頭に振り下ろしたはずの網は位置がズレたことで網の柄の部分が玲奈の背中に刺さった。


「ぐえっ!」


 瞬間、玲奈は踏まれたカエルのような声を上げて倒れてしまう。

 当たりどころが悪かったせいか、そのまま気絶してしまっていた。


「あ、あはは……あちゃ~」


 すぐさま脈を図る。透の指にはしっかりと脈打つ鼓動が伝わってきた。


「ふぅ……よかった。殺っちゃったかと思った……」


 額の汗を拭うふりをする透は、早々に玲奈の手足を縛り上げる。途中スカートがめくれかけていたが、透はなぜか世界のすべてに絶望するような顔をしながら担ぎ上げ、情報部部室に向けて足を進める。そして、携帯を取り出してある人に電話をかける。


「あっ、イキのよさそうな上物を捕まえましたので指定した時間に来てください。――はい。はい。それじゃ、待ってますねぇ」


 電話を終えた透はウキウキしながら情報部に向かった。



読んでくださりありがとうございます。

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