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出発の際

「うふふふふふ。デートだね?」

「魔界に行く前に……もう一回愛美姉ちゃんに確認……道中に、イレーヌとエスクラには攻撃しないでね?」

「……?誰?」


 小首を傾げる姉ちゃん。本気で覚えていないようだ。


「魔界の旅の時に一緒に行くメイドと……幼馴染。」

「あぁ、あの泥棒と妙ちきりん。……ケンちゃんが何もしなければ大丈夫。そう、何もしなければ、何もなければ、ね……」


 一瞬目から光を失せさせて姉ちゃんはそう言って笑う。僕は乾いた笑いしか返せなかった。


 魔界行きを宣言したあの時、家族全員が止めに入った姉ちゃんだが、彼女はこの世界に来て変な技を取得していた。


 召喚獣情報を見ると、【ヤンデレ姉の嗜み(エルシスタスク)】。


 効果は7つ道具の所持。


 1つ、ロープ・紐

 2つ、薬、毒

 3つ、包丁

 4つ、手錠・その他拘束具

 5つ、盗聴器

 6つ、GPS

 7つ、黒魔術



 連想できる物に良いイメージがない。だが、それを駆使する姉ちゃんは王国でも名のある精霊騎士の父、才色兼備の母、王宮に勤める精霊魔術師の姉、高等戦闘メイドのイレーヌ、そしてその弟子のエスクラの全員を歯牙にもかけず叩きのめした。


 そして、それらを半ば脅しのように使うことで僕との魔界行きの権利を取得したのだ。


 そんなケントに付いて来てくれる忠誠度、もしくは愛情とも言えるものが高いのがイレーヌとエスクラだった。

 彼女たちは危険(主に愛美)を省みずにケントに付いて来てくれる。それにより戦闘が起きそうになったがケントが愛美の盗聴器に愛の言葉を囁いて録音させることでその場は落ち着き、ここまで来た。


「それじゃ、不思議の国の大冒険。いよいよ始まるのね……」

「……あぁ、うん。それでいいよ……」


 わくわくしている愛美。それを見て別の意味でドキドキしているケント。旅はまだ始まってもいない。


「まずは、王国から出るんだけど……道案内を……」


 愛美の方に気を遣いつつイレーヌの方に目をやるとイレーヌは頷いてすぐに先頭を歩き、その後ろをケントと愛美が歩く。また、更にその後ろをエスクラが歩くことで基本構成は決まった。


 そして、町から出る少し前になって愛美はケントの服を引く。


「ねぇねぇ。」

「ん?」


 その手は何故かロープが握られていた。


「目の前の、女のおしりに目が行ってなかった……?」

「い!?」


 突然の言葉に固まるケント。そして一行も止まった。


「な、何を?坊ちゃんが、その、私に……」

「メグ姉!」

「大丈夫。分かってるから……誑かした目の前の女が悪いのよね?」


 包丁も現れる。そして愛美は笑顔で告げるのだ。


「今日の晩御飯……決まったね……?」

「たっ、食べないよ!?」

「そっか、じゃあ捨てよっか。」

「ダメ!」


 ケントに強く言われると愛美はしゅんとして顔を俯かせる。そんな表情も非常に可愛らしいのだが、告げられる言葉は恐ろしい。


「……じゃあ、ケンちゃんの目玉抉るしかないの……?」

「何で!?メグ姉僕のこと嫌いなの!?」

「大好き♡」

「じゃあ何で目玉抉るのさ!?」

「ずっと私だけを見てほしいから……」


 いつの間にか矛先がこちらに向いていることに気付いたケントは慌てて言い繕う。


「ぼ、僕もメグ姉を見たいからさ、眼は抉らないで?それと、イレーヌを見てたのはメグ姉と比較するためで……」

「どう?」


 ケントは正直心苦しかったがイレーヌに視線で詫びると言った。


「メグ姉のおしりは、凄く、その……」


 何でこんな変態宣言を公共の場で行っているのだろうか。ケントは急にそんなことに思い当たって口を濁す。


「えっちぃ?」

「うん……」

「……じゃあ初めてはお外かぁ……」


 思考の飛躍に慌てて止めるケント。それに対して愛美は手に白い丸薬が幾つも入っている瓶を持って差し出してくる。


「はい、精力剤。」

「弁当みたいに渡されても困るよ!?」


 まだ町すら出ていないのにこれだけ疲れて旅の間はどうなるのだろうかと思いつつケントたちは町を出て行った。




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