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ヤンデレ

 ……これからも頑張ってくださいと言われたのでちょっとだけ。

 愛美とエリコが仲良く喧嘩しながら魔王の命令に対して不服申し立てをしつつ行動で示している魔物を討伐するために旅をしていると不意に愛美が止まった。


 そして、手に持っていたぼろ雑巾、もといエリコを取り落してびっくりしながら一点を見る。その視線に気付いた青年はこちらを見て軽く手を挙げた。


「お師匠様!? どうしてここに……」

「何となく。」


 愛美がお師匠様と呼ぶ存在にケントは心当たりがあった。彼女は時折闇の衣をケントに渡しては姿を消す。

 前世では男嫌いだった愛美の師匠なのだから女だろうとケントは勝手に推測していたが、どうやら違うようだ。


 何だか、心が、もやもやする。


(……つまり、メグ姉は僕にあんなに好きだと言っているのに、定期的に別の男の所に行っていたということかな……?)


 ケントはその男を観察する。


 顔は、自分で言うのも何だが美形に属している自分の方が勝っているだろう。


 スタイル。ローブで分かり辛いが、どうやら鍛えられている様子。しかしケントだって負けてはいないはずだ。転生してからという物の、鍛えているし旅の間にも鍛えているのだ。


 財力、ケントの家は王家でも名のある貴族。負けず劣らずだろう。


(……姉ちゃんは、何で、そんな男と楽しそうにしてるのかな……?)


 ケントの心中に知らず知らずの内に何かが芽生えてきているようだ。それを青年は見て邪悪な、およそ人が浮かべられるような笑顔ではない笑みを浮かべて愛美の頭を撫でる。


「えっ? ど、どうしたんですか?」

「ん~? いや、ちょっと面白そうなのがね……」

「ケンちゃんの目の前で、困ります……」


 何故、フリホドカナイ……?


「あ、あの腐れビッチお義姉さん……やっぱり、ケン君には相応しく、ないみたいだね……?」


 ぼろ雑巾状態から復活したエリコがそう言ってケントの肩を抱く。だがケントの方はそれどころではなかった。


「あ、ケンちゃん……この方はね……」

「ナニヲ、シテルノカナ……?」


 自分でもびっくりするような声が出てきた。


 この場を上手く利用して愛美をコントロールしよう、イレーヌ達を守ろうなどという感情は生まれない。


 ただただ、心を焼き尽くすのは独占欲。


「ケンちゃん?」

「ナゼ、ワラッテル……?」


 困惑する姉の横で男が笑っている。


 あぁ、気に入らない。


「尻軽お義姉さん。ケンちゃんを傷つけましたね?」

「そんなわけないじゃない。大体、この方はハーレムを持って……」

「殴るぞ?」

「ごめんなさい。」


 何故、そんなに楽しそうに、俺の知らない男と、会話を?


「メグ姉……もっと、警戒した方が、いいよ……? メグ姉は、美人なんだからさ。相手は、ハーレムなんて作る、下衆だよ……?」

「げ、下衆……ケンちゃん。すぐに謝って!」


 何で、そんな男に、心を、砕く……? あなたは、僕に、あなたのことだけを考えるように言っていたはずだ……!


「ハッハッハ。いいねぇ。嫉妬の味。面白くて美味しいわ。クハハ。でも訂正はきちんと入れる。俺はハーレムを作ってねぇ。」

「メグ姉。行こう。」


 変なことを言う男からメグ姉を抱き寄せる。そしてあの男に触れられた艶やかな髪を上書きするかのように何度も撫でる。

 メグ姉は照れて不明瞭な言葉を言うだけだ。これを見て僕は勝ちを確信して相手を見て……


「僕の旦那様を侮辱したから殺す。」


 気を失った。





「……あれ……? 何か、微妙に記憶が……」

「攻めてくる、ケンちゃんもよかった……はわわ……」

「……雌豚尻軽ビッチ義姉さん。キモいです。」

「勇者パーティに男がいても嫉妬もされない程度の雑魚はそこで寝ていたらどうですか?」


 あぁ、また喧嘩してる……止めないとね。


 何で僕の周りにはこんな病んでる人しかいないんだろう……




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